2019年10月に10%に引き上げられた消費税。軽減税率の対象である食料品などは8%で据え置きですが、買い物に行くと「消費税を含むといくら?」と考えてしまいますよね。実は消費税については「総額表示」といって、消費税を含んだ支払金額が消費者にわかりやすく表示される義務があります。本記事では、消費税の総額表示の義務の対象と、その特例について解説します。
「総額表示」とは、商品の販売やサービスの提供を行う際に、値札やチラシなどにおいて、消費税額(地方消費税額を含みます)を含めた価格を表示することをいいます。
例えば、1000円の商品については、消費税10%を含むと1100円です。この場合は、以下のような表示が「総額表示」となります。
ポイントとしては、どのパターンにおいても、消費税を含んだ支払総額さえ表示されていれば良いというところです。
「消費税額等」や「税抜価格」が表示してもしなくてもかまいません。
また、例えば税抜き価格が101円といった商品ですと、10%の消費税としても10.1円と1円以下の端数が生じます。このような時は端数を四捨五入、切捨て又は切上げのどちらの方法で表示しても良いことになっています。
総額表示の義務については、消費者に対して行われる価格表示の全てです。
例えば、あらかじめ取引価格を表示している商品本体による表示(商品に添付又は貼付される値札等) 、店頭における表示、チラシ広告、新聞・テレビ・WEBサイトによる広告など、どのような表示媒体により行われるものであるかを問わず、総額表示が義務付けられます。
店頭には税抜き価格のみ示されており、会計時に口頭でつたえるような提示は該当しません。
ここまで読まれてきて「あれ?でもお店によってはまだ税抜価格のみ表示のところもあるけれど……?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
消費税の総額表示にかかる事務の負担というのは相当なものがあり、特に品数の多いスーパーやドラッグストアなどいくら義務といっても早急に対応が難しいケースもあります。そこで、法律によって特例措置が設けられているのです。
「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(消費税転嫁対策特別措置法・平成25年10月1日施行)第10条により、
総額表示義務の特例として、令和3年3月31日までの間「現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置」を講じていれば税込価格を表示することを要しないこととされています。
出典: 国税庁WEBサイト:タックスアンサーNo.6902 「総額表示」の義務付け
特例の期間についても、消費者が混乱しないよう税抜き価格であることを明確に示す必要があります。
値札、チラシ、看板、ポスター、商品カタログ、インターネットのWEBページ等において、商品等の価格を税抜価格のみで表示する場合、例えば次のような表示が誤認防止措置に該当します。
税抜き価格であることを個々に表示するのではなく、店内の目につきやすい場所に「当店の価格は全て税抜価格となっています。」といった掲示をおこなったりすることでも消費者の誤認を防ぐことができます。
これは、チラシ、商品カタログ、インターネットのWEBページなどでも同様です。
旧税率に基づく税込価格の表示が残ってしまっている場合もこの特例の適用です。経過措置として店内に旧税率のものと新税率のものが混在してしまうことが考えられます。
この場合は、店内の消費者が商品等を選択する際に「これは旧税率の商品」とわかるようにしておく必要があります。
例えば、「旧税率(8%)に基づく税込価格を表示している商品については、レジにてあらためて新税率(10%)に基づき精算させていただきます。」といったことを目に付きやすい場所に掲示するなどして、値札が旧税率であることがわかるようにしておきましょう。
参考:財務省WEBサイト:消費税転嫁対策特別措置法のガイドライン(総額表示義務の特例)について
当コラム内では、消費税についての記事を他にも多数公開しています。併せてぜひご一読ください。
・海外取引と消費税の関係は?
・消費税はどうやって納めるの?
・消費税の納付時期と支払方法について
・消費税の申告期限が延長される見込みについて
・どうする?消費税の端数処理【切り捨て・切り上げ・四捨五入】
・消費税のリバースチャージ方式について