消費税の計算では、1円未満の端数が生じることがよくあります。企業や店舗では、1円未満の端数を切り捨てる処理を行うことが多いですが、実は小数点以下の端数処理には法的ルールがないことをご存知でしたか?本記事では、消費税の端数処理について詳しく解説します。
財務省では、「税抜価格」に上乗せする消費税相当額に1円未満の端数が生じる場合がありますが、その端数をどのように処理 (切捨て、切上げ、四捨五入など)して「税込価格」を設定するかは、それぞれの事業者のご判断によることとなります。と消費税については結論付けています。
これは、国税庁のタックスアンサーにおいても同様になっており、「総額表示に伴い税込価格の設定を行う場合において、1円未満の端数が生じるときには、その端数を四捨五入、切捨て又は切上げのいずれの方法により処理しても差し支えありません。」の記載があります。
出典:国税庁 タックスアンサーNo.6902 「総額表示」の義務付け
商品やサービスを消費者に販売する際にその消費税の端数をどう処理するかは企業側に委ねられていて法的な定めはないのです。
それよりも大事なのは「総額表示」。「総額表示」というのは消費者に商品やサービスの提供を行う事業者が、その商品やサービスの価格を、商品本体による表示(商品に添付又は貼付される値札等)、店頭における表示、チラシ広告、新聞・テレビによる広告などなどにおいて表示する際に、消費税額を含めた価格で表示することです。
総額表示を行うことで、消費者は税込総額でいくら支払えばよいかを確認したうえでお金を払うことができます。そのため、総額表示は、消費者に対していわゆる小売段階の価格表示をする時には義務付けられています。
事業間の取引においても、消費税の端数処理については法律で定められていません。
ただし取引先同士で端数処理の方法が異なる場合、最終的に計算が合わないといったトラブルに発展する可能性があります。 請求書発行前に事業所間で消費税の取扱いについてはお互いに取り決めた上で取引を行うことをおすすめします。
納税地の消費税額の端数については、 以下のように定められています。
(1) 課税期間ごとの課税仕入れに係る消費税額は、原則として、その課税期間中の課税仕入れに係る支払対価の額の合計額に108分の6.3(注)を乗じて計算した金額となり、この金額に1円未満の端数があるときはその端数を切り捨てます。また、売上対価の返還等に係る消費税額及び貸倒れに係る消費税額に1円未満の端数があるときも同様に、その端数を切り捨てます。
(注) 令和元年10月1日以降に課税資産の譲渡等を行った場合には、1によって算出した課税標準額に7.8%(軽減税率の適用対象となる課税資産の譲渡等については6.24%)の税率を乗じて算出します。
(2) 課税標準額に対する消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額などを控除した税額に100円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。
(3) 還付金に相当する消費税額に1円未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、還付金に相当する消費税額が1円未満であるときは、1円とします。
出典:[国税庁 タックスアンサー No.6371 端数計算]
つまり、以下の場合で1円未満の端数があるときはその端数を切り捨てます。
・仕入れにかかる消費税
・売上対価の返還等に係る消費税額及び貸倒れに係る消費税額
次に、課税標準額から仕入れの消費税額を控除した金額に、100円未満の端数がある場合切り捨てします。
例えば、課税標準額の消費税額が10万円、仕入れの消費税額をそこから引いた32,563円といった数字になった場合は、32500円が納付すべき税額になります。
さらに、消費税の還付がある場合に1円未満の金額がある場合はそれも切り捨てます。例えば消費税の還付金額が1234.5円なら、1234円となります。
そして、還付金額が0.234円というように、1円未満になる場合は1円を還付します。
2019年10月1日から消費税について複数の税率が導入されました。 当初の4年間は、従来の「請求書保存方式」を維持しつつも、これからの区分経理に対応するための措置として「区分記載請求書等保存方式」が適用される予定です。
区分記載請求書は、軽減税率の対象品目とそうでないものをそれぞれ計算し、適用税率ごとの取引総額にそれぞれの消費税額を計算する必要があります。つまり消費税の計算は税率ごとにまとめて行い、個々の商品ごとに消費税を計算し1円未満の端数処理を行うことはできません 。
出典:政府広報オンライン
2023年10月1日からは「適格請求書等保存方式」いわゆるインボイスが適用される予定です。
適格請求書発行ができるのは、消費税を納める課税事業者のみとなっており 、免税事業者は消費税そのものを請求することができなくなります。
これまで消費税の納税したことがなかった免税事業者についても、課税事業者に登録をしない限りは消費税を含む請求書を発行できなくなるのです。
特に免税事業者の取引先が課税事業者の場合は、消費税を含む請求書が発行できないとなると、課税事業者の仕入税額控除の対象外になってしまいますので、互いに大きな混乱が生じることが予想されます。
課税事業者でなくても控除できる経過措置が、当面の間取られる予定ですが、事業の状況や取引先とのやり取りも含め、免税事業者は、適格請求書を発行できる事業者になる準備をする必要があります。
消費税で端数が出てしまう時端数の処理を間違えてしまうと納税額が変わってしまいますので注意したいところです。端数のない数字を請求書に記載するのが原則ですので、 取引先とはどのように端数を処理するかをあらかじめ決めた上で請求書発行を行うようにしましょう。
また価格表示だけでなく、納税の際の消費税の取扱いについても、端数として切り捨てる単位が価格設定とは異なる場合があるので気をつけてください 。
当コラム内では、消費税についての記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。
<関連記事>