事務職の求人で多く見られる「社会保険事務」ですが、一体どのような仕事なのでしょうか?本記事では、社会保険事務に興味を持った方、人事労務関連のお仕事に興味のある方に向けて、社会保険事務の仕事内容についてじっくり解説します。
求人情報を見ていると「社会保険完備」もしくは「社保完備」という記述を見かけることが多いのではないでしょうか。
社会保険とは、厚生年金と健康保険(40歳以上は介護保険も)を合わせたものですが、一般的にはさらに同時に行われる手続きでもある雇用保険と労災保険をプラスしたものを指すことがほとんどとなっています。
参考コラム:福利厚生と社会保険の関係について解説します
社会保険(社保)は、会社に課せられた法定福利厚生であり、以下の条件を満たす事業所に加入義務がある制度です。
(1)株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)
常時、従業員を使用する国、地方公共団体又は法人の事業所
(2)常時5人以上の従業員を使用する事業所(個人事業主含む)
飲食店、接客業、理・美容業、旅館業等 サービス業、法律・会計事務所等は除く
参考:加入必須!社会保険の強制適用事業所とは
この条件にあてはまる職場であれば、社会保険事務が必要となるわけです。社会保険事務はとても多くの場所で必要とされている仕事であることがわかると思います。
社会保険事務が必要な会社では、社内部門でまかなう場合と、業務をアウトソーシングしている場合と2つのパターンがあります。
社会保険は、人事労務系のお仕事なので、一般的には以下の部署で行われることが多いです。
社会保険事務が行われる主な部署
・人事部
・総務部
・経理部
経理部が入るのは、社会保険料(厚生年金や健康保険にまつわる)を給与から控除する必要があるため、給与計算業務を経理部で行っている場合は、社会保険業務も一緒に行う場合があるからです。
また、社会保険事務をアウトソーシングしている会社もあるので、その場合は、以下のようなところで仕事をを行うことになります。
社会保険事務の外注先
・社会保険労務士事務所
・労務管理アウトソーシング会社
社会保険事務をアウトソーシングする場合は、社会保険事務だけではなく、人事・労務関連の業務をまとめてアウトソーシングしていることが多いのが特徴です。
社会保険事務で行う仕事は、主に以下の内容です。
新たに会社に入社・退職した人については、社会保険事務所やハローワークにて社会保険の手続きを行う必要があります。
加入・資格喪失の手続先
・厚生年金→年金事務所
・健康保険→社会保険事務所・健康保険組合
・雇用保険/労災保険→ハローワーク
社会保険は、組織や雇用形態によって被保険者になる人とそうでない人がいますのでご注意ください。
また、就労している本人だけでなく、配偶者やお子様などの被扶養者についても手続きが必要となります。例えば結婚・離婚、就職して扶養から外れたりした場合などです。
具体的な社会保険の被保険者になる対象については、以下の記事をご覧ください。
参考:【労務担当必携】社会保険手続きまとめ
社会保険は、それぞれの給与によって保険料が変わってきます。
しかし、毎月その額を計算するのは大変です。そこで社会保険料については、毎年9月に、4月から6月の報酬月額を基に標準報酬月額を求め、その額を1年間控除するという仕組みが取られています。
このため、年に1度、以下の届出を7月に行う必要があるのです。
・社会保険算定基礎届の手続き(社会保険事務所)
・労働保険年度更新の手続き(ハローワーク)
社会保険の適用を行うためには、社員の給与や家族構成について把握する必要があります。そのため、社員のデータを管理しなくてはなりません。個人情報なので慎重な取り扱いが必要です。
産休・育休の期間中は社会保険料が免除になりますので、社会保険事務所・ハローワークへの届出が必要です。産休・育休の手続きについては以下の記事も参考にしてみてください。
参考コラム:育休と産休の各手続きや手当の違いを詳しく説明
従業員が、通勤や業務中にケガなどをした場合の労災手続きも、社会保険事務の仕事です。
労災手続きについての書類や流れについては以下の記事をご参照ください。
参考コラム:労災保険の手続に必要な書類、治療を受ける際の流れや注意点も!
保険証や年金手帳などは、基本的には紛失しないように大事に保管する必要がありますが、紛失した場合の再発行手続きを行う必要があります。
また、2020年4月より、特定の法人の事業所が社会保険・労働保険に関する一部の手続を⾏う場合には、必ず電子申請で⾏うことが義務化されます。
当面はいわゆる大企業が対象ですが、新しい業務として把握しておくとよいでしょう。
参考コラム:社会保険・労働保険の電子申請が義務化!担当者必見
会社が変わっても、社会保険は基本的にはどこでも共通の制度なので、社会保険事務は一度経験しておくと、転職時にも強い職種でもあります。
一般事業会社ですと、業務が細分化されるような大企業であれば専門的に担当になることもあるかもしれませんが、中小企業や社会労務士事務所、アウトソーシング会社の場合は、社会保険事務だけでなく、人事労務関連全般の業務を行うことになるでしょう。
なるべく若いうちに、より広い知識と経験を積むことが、この分野のエキスパートになる秘訣です。