就職転職の際に確認する求人票には「福利厚生」の欄がありますが、 ここに「社会保険完備」と書いてあることがよくあります。しかしいわゆる「福利厚生」というと、住宅手当や人間ドック無料といった、給与+αといったものを想像する方も多いのではないでしょうか。本記事では、求人票を見る際に役立つ、福利厚生の種類について詳しく解説します。
福利厚生とは、企業が給与や賞与といった報酬以外で従業員に与える制度やサービスの全般を指します。給与や賞与そして福利厚生を合わせて「待遇」と呼ぶことも多いです。
福利厚生は大きく法定福利厚生と法定外福利厚生の2種類に分けることができます。
法定福利厚生とは、法律で決まっている福利厚生です。
実は社会保険(厚生年金・健康保険・40歳以上の介護保険)と、労働保険(労災保険・雇用保険)はここに該当します。
そのほか、私たちが一般的に思い浮かべる住宅手当や交通費といった法定外福利厚生に該当します。法定外の福利厚生については自社で提供を行っているものと外部サービスに委託しているものの2種類があります。以下、表にまとめてみました。
「福利厚生」といっても様々な種類があります。よく「福利厚生」で話題となるのは、「法定外福利厚生」。会社によって特色があるものも多く、転職する際の魅力とも言える部分です。
社会保険は条件を満たす事業所は強制適用ということもあり、会社によって差がないと思われがちですが実はそうではありません。
例えば、健康保険、介護保険、厚生年金保険は労使折半、労災保険は全額事業主負担というのが一般的ですが、自社の健康保険組合を持つ大企業では、協会けんぽと比べ保険料負担を少なくしているところが多いことと、さらに、保険料について5割負担のところをそれ以上の割合にしているところもあります。
社会保険料は毎月の給与と賞与にかかることなので、額面給与が同じでもその差額は非常に大きなメリットです。
また、健康保険組合によっては、組合員の健康づくりのために、ニコチンガムや万歩計の支給など、様々な施策を打ち出している場合があります。結果的に病気にならなければ、健保組合からの持ち出しが減るためです。
法定福利厚生については、健康保険組合以外の差が付けづらいですが、実はこの健保組合があるかどうかというのが毎月の給与にかかわる非常に重要なポイントです。
転職の際には健保組合があるかどうかというのは、待遇を求める人にとっては重要なポイントなので、よく見ておきましょう。
社会保険は 完備されているのが当たり前のように思われているかもしれませんが、実はそうではありません。
例えば、法人ではない個人事業主が開いている会計事務所などでは、社会保険の強制適用の条件を満たしていないので社会保険未加入の場合もあります。
弁護士事務所などは、比較的大手であっても、弁護士全員が個人事業主であることもめずらしくありません。
社会保険の強制適用の事業所は、以下の通りですが、飲食店、接客業、理・美容業、旅館業等 サービス業、法律・会計事務所等は法人化していない場合は社会保険未加入でも良いとされているからです。
株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む) | 常時、従業員を使用する国、地方公共団体又は法人の事業所 |
常時5人以上の従業員を使用する事業所(個人事業主含む) | 飲食店、接客業、理・美容業、旅館業等 サービス業、法律・会計事務所等は除く(※) 具体的には、 a製造業b土木建築業c鉱業d電気ガス事業e運送業f清掃業g物品販売業h金融保険業i保管賃貸業j媒介周旋業k集金案内広告業l教育研究調査業m医療保健業n通信報道業など |
※2020年3月現在。この基準については現在見直し協議中のため、今後変更される可能性があります
なお、雇用保険と労災保険をあわせた「労働保険」については、個人事業主が雇用する場合であっても、1週間に20時間以上働いてもらう予定で、1か月以上雇用する場合には、加入対象となるので、手続きが必要です。
フリーランスという働き方も魅力的に思えるかもしれませんが、個人事業主になってみると社会保険をはじめとした福利厚生のありがたみがよくわかるようになります。
年金や健康保険は、まだ国民年金や国民健康保険があるのですが、雇用されている側でない限り、労働保険がないからです。 つまり廃業しても失業手当もありません。
もし、現在の待遇に不満がある場合は、独立してフリーランスになるのはいつでもできますので、まずは待遇が良い場所への転職を考えてみる方が近道だといえるのではないでしょうか。
当コラム内では、福利厚生についての記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。
・福利厚生費と具体的な事例
・会計事務所の福利厚生は?チェックするべきポイントを解説