労災の休業給付の最初の3日間は待機期間として、労災保険は不支給となります。労災が出るのは休業して4日目からなのです。
この3日間について有給休暇で処理することは可能なのでしょうか?本記事では、労災による休業の最初の3日間の有給について、ケースごとに解説いたします。
労災の休業給付の最初の3日間は待機期間として、労災保険は不支給となります。労災が出るのは休業して4日目からなのです。
この3日間については、使用者が労働基準法上の休業補償(療養中平均賃金の60%)を行わなければなりません。
ただし、労働基準法上76条により、「業務上の傷病の療養のため、労働することができないために賃金を受けていないこと」が要件と定められています。しかし、休業補償が60%という事は、労働者側にとっては通常働いていた時にもらえる給与よりも少なくなってしまいます。
有給休暇の日数に余裕があるのであれば、満額もらえる有給休暇で対応したいと考えてしまいますよね。
気を付けたいのが、通勤災害の場合です。同じく休業になったとしても、業務災害と異なり、最初の3日間の待機期間の事業主の休業補償はありません。
また、業務災害においては、労働基準法により休業した際には出勤したものとして取り扱うように定められていますが、通勤災害においては、場合によっては欠勤扱いとなることも。
欠勤扱いとなると、賞与における支給率や、翌年の有給休暇の付与日数にも関わってきてしまいます。こちらも短期間の休業で済むような場合は、有給休暇で対応したいと考えて当然ではないでしょうか。
労災対象で仕事を休む時、有給休暇と休業補償のどちらを使うべきなのでしょうか?
これは、実は労働者が選択することができるようになっています。
有給休暇の本来の目的は、労働者の心身のリフレッシュですが、有給を労働者がどのように利用するかは労働者の自由なので、本人が希望している場合は、企業がその請求を拒否することは基本的にはできません。
有給休暇取得の義務化がはじまったばかりですが、人によっては今までの有給休暇が溜まっていて消化の見込みがない人もいるでしょう。
労災の休業補償は、給付基礎日額の80%、最初の3日間は会社からその60%が支給されるというのが原則です。つまり、有給休暇で休んだ方が給与が満額支給になります。
この場合、企業においては休業補償を行う必要はありません。
有給休暇については以下の記事でも解説しています。併せてぜひご一読ください。
・有給休暇の根拠になる法律は?概要と取得義務化について解説
・有給休暇の付与タイミングと日数について
・「有給休暇取得の義務化」について知っておきたいこと
それでは、会社が休業補償ではなく有給休暇で処理したいと労働者側にお願いすることはできるのでしょうか?
答えはNOです。
労災であるにもかかわらず、会社が休業補償をせずに有給休暇の使用を要請することは、労働基準法第76条の休業補償義務の違反に該当する違法行為です。
もちろん、休業補償を行った場合と、有給休暇で処理した場合との違いを労働者から質問されたら、その内容をきちんと説明してください。
そのうえで、「休業補償か有給休暇を決めるのはあくまで労働者である」ということを担当者の方は念頭に置いておきましょう。
有給休暇以前に、例えば企業が倒産したなどの理由で、待機期間3 日間の休業補償を受けられる見込みがない場合についてはどうなのでしょうか?
企業が3日間の休業補償を行ってくれない場合は、一定の要件を満たすことで、「休業補償特別援護金」により、待機期間 3日分の補償を受けることができます。
直接、労働基準監督署へ申請書を提出してください。
出典: 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署リーフレット:請求(申請)のできる保険給付等
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