健康保険での病院受診は1~3割負担ですが、保険外診療のものについては10割負担になりますよね。労災については、本来であればそもそも自己負担はないのですが、もし労災指定病院以外にかかった場合、一時的に10割を負担しなくてはならないことも。本記事では、労災で10割負担することになるしくみと、返金についての手続きなどについて解説します。
業務中もしくは通勤途中に災害にあうことを「労働災害」といいます。労働災害によってケガをしたり病気になってしまったりした場合は、労災保険から給付が受けられるのです。
「病院にかかる時は健康保険」と考えがちですが、健康保険は労災とは関係ない疾病に対して保険がおりるものとなっています。窓口で1~3割の金額を払っていますが、残りの7~9割は健康保険が医療機関に支払っているのです。
そのため、労働災害によるケガや病気の場合、健康保険を使って医療機関で治療を受けた場合は、健康保険負担分がないので治療費の全額を一時的に自己負担することとなってしまいます。
出典:厚生労働省リーフレット:お仕事でのケガ等には、労災保険!
本来であれば、労災指定病院で受診するのがベストなのですが、そうも言ってられない場合もありますよね。特に通勤中のケガなどは、後から「もしかしてあれって労災?」と気が付くようなケースも良くあります。
業務中の事故や災害などであれば、明らかに労災だとわかりやすいのですが、通勤中の災害については、パターンによって解釈が分かれますので要注意です。
通勤災害については、以下の記事で解説しています。併せてぜひご一読ください。
<関連記事>
もし、労災にも関わらず健康保険で治療を受けてしまった場合は、手続きが必要になります。
受診した病院が、労災保険指定医療機関であれば、健康保険から労災保険への切り替えがその場で可能です。
労災保険指定医療機関であれば、窓口で支払った金額(1~3割の負担分)が返還されます。
労災保険の様式第5号または様式第16号の3の請求書を、受診した病院に提出してください。
労災が使える病院かどうかは、以下のページから検索できます。
・厚生労働省 労災保険指定医療機関検索
受診した病院が労災保険指定医療機関ではない場合は、その場で労災への切り替えはできません。しかし、健康保険の相当理由でないので、健康保険も使えません。
この時は、一時的に医療費の10割を自己負担した上で、労災保険を請求することになります。
労災の請求には医療機関からの審査報酬明細書(レセプト)のコピーが必要になります。
保険者にレセプトが届いたら、写しをもらえるように事前に依頼しておくと後の作業がスムーズです。
レセプトは2~3ヶ月ほど送付に時間がかかるため、納付書の送付はその後になります。
最初に病院の窓口で1~3割負担しているので、残りの7~9割について納付が必要です。
労災保険の様式第7号または第16号の5を記入の上、
・レセプトの写し
・返還額の領収書
・病院の窓口で支払った金額(一部負担金)の領収書
を添えて、労働基準監督署へ請求してください。
もし、いったん10割の治療費を負担することが困難な場合は、書類を2部用意するなど、ちょっと面倒ですが労働基準監督署に請求することもできます。
①労働基準監督署へ、いったん全額を自己負担せずに請求したい旨を申し出ます。
②労働基準監督署で保険者と調整を行い、保険者への返還額を確定します。
③保険者から返還通知書等が届きます。
④労働基準監督署に必要書類を提出して請求します。
参考
・労災保険の様式第7号
・労災保険の様式第16号の5
当コラム内では、労災についての記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。
<関連記事>