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労災の保険料は会社が全額負担、保険料の仕組みなど解説!

HUPRO 編集部
労災の保険料は会社が全額負担、保険料の仕組みなど解説!

業務中や通勤途中のケガには健康保険は使えないってご存知でしたか?仕事上のケガには「労災」と言われる「労働災害保険」が適用されます。 会社は一人でも従業員を雇用すれば労災保険に加入することが必須です。今回は、労災の保険料について解説します。

労災保険とは?

労災保険とは、業務中や通勤時、労働者が怪我などをして「労災」と認定された場合に、労働者に対して必要な給付を行う制度です。労災保険と雇用保険をあわせて「労働保険」と呼び、労働者の安全や安心に資することを目的とされています。

労災保険は、原則としてすべての労働者に適用されます。正社員やパートタイマーなどの雇用形態に問わず、原則として賃金を受けとる全ての労働者に適用されます。したがって、労災保険に未加入は違法です。

労災保険の保険料は、すべて会社側が負担します。労災の保険料を従業員に負担させるのは違法です。同じ労働保険に分類される雇用保険は、事業者と労働者双方が負担するものですので、この意味で労災保険とは異なります。
労災の仕組みと給付条件・種類については以下のコラムでも解説しています。併せてご覧ください。

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労災の仕組みと給付条件・種類について解説します

労災の保険料が決まる仕組み

労災保険料は、次の計算式で導かれます。

「①全従業員に支払う年度内における賃金総額」×「②労災保険率」=「労災保険料」

つまり、労災保険料を知るには、①②を正確に理解する必要があります。

①全従業員に支払う年度内における賃金総額

労災保険料の算定の基礎となるのは、「企業が労災対象となる全従業員に対して1年間を通して支払う賃金の合計額」です。代表取締役などの一部例外を除き、原則としてすべての労働者に対する賃金が対象です。ただし、退職金や各種一時金などのイレギュラーな支出は含まれませんのでご注意ください。

②労災保険率

労災保険率については、以下のリンク先をご参照ください。事業の種類によって、詳細に労災保険率が定められています。

参照:労災保険料率表 平成30年4月1日施行|厚生労働省

労災保険率は、事業の種類ごとに異なります。というのも、それぞれの企業活動の内容に応じて、労災事案が生じる確率・リスクが全く異なるからです。労災の発生リスクが高い事業に対しては労災保険率を高く、労災発生リスクが低い事業に対しては労災保険率を低く設定します。

最も労災保険率が高く設定されているのは、金属鉱業、非金属鉱業(石灰石鉱業またはドロマイト鉱業を除く。)、石炭鉱業です。物理的な怪我のリスクはもちろん、呼吸器系の疾患リスクが高いことがその理由です。労災保険率は、88/1000です。

これに対して、労災保険率が低く設定されているのは、電気機械器具製造業、計量器・光学機械・時計等製造業、通信業、放送業などです。これらの業種については、業務自体が有する労災リスクが低いと判断されているからです。労災保険率は、2.5/1000です。

労災未加入のリスクについて

会社には、労災保険の加入義務が課されています。労災未加入は違法です。企業は、労働者を雇ってから10日以内に労働基準監督署において労災保険の加入手続きをしなければいけないとされてます。

ただ、労災保険料は企業側の全額負担です。そして、労災リスクの高い業種ほど、高額の労災保険料を納めなければいけません。労災の保険料は、前述の通り業種によって差があり、例えば、同じ20万円の給与でも、労災保険率が2.5/1000の職種だと労災保険料は500円ですが、労災保険率が88/1000の職種だと労災保険料は17,600円とその差はかなりのもの。です。このような高額な労災保険料負担を嫌って、労災リスクの高い企業ほど、労災未加入のケースが多く見られます。

では、労災未加入の企業において労災認定事案が発生した場合、どのような取り扱いとなるのでしょうか?

労災事案に巻き込まれる前に企業の労災未加入を労働者が知った場合

勤めている会社が労災に加入しているかは、管轄労働局等に問い合わせることで確認可能です。未加入が判明した場合には、すぐにご相談ください。

労災事案に巻き込まれてから企業の労災未加入を労働者が知った場合

労災事案に巻き込まれた場合、労災未加入だからと言って労働者が責任を負わされることはありません。病院の診断時に労災事案であることを伝え、管轄の労働基準監督署で手続きを行えば、相当額について給付を受けることができます。

労災未加入企業に対する規制強化

平成17年以降、厚生労働省は厚労省は労災未加入の事業主に対する費用徴収を強化しています。労災未加入の期間内に労災事案が生じた場合、労災保険の遡及徴収・追加徴収措置が採られます。この際請求されるのは、労災保険から給付を受けた金額のうち100%または40%などです。

労災未加入のリスクについて

出典:労災保険に未加入の事業主に対する費用徴収制度が強化されます|厚労省

労災事案に該当するのは、業務中の怪我だけに限られません。通勤時や営業先への移動中など、会社外でも労災事案は発生しうるものです。このように、労災事案はひろく発生する可能性があるものですので、事業主としては「未加入のリスク」はより大きなリスクと言えるでしょう。「知らなかった」では済まされないので、ご注意ください。

勤務中でなく、通勤時の労災「通勤災害」については以下のコラムでも取り上げていますので、ぜひ併せてご覧ください。

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労災の通勤災害について詳しく説明します

労働保険(労災保険+雇用保険)の申告と納付

上述のように、労災保険は雇用保険とあわせて「労働保険」と言われます。同じく労働保険として分類される労災保険・雇用保険ですが、労災保険は会社の全額負担なのに対し、雇用保険は事業主と労働者の双方負担です。

労働保険の保険料は、原則として、事業年度の冒頭において1年分の概算保険料を申告・納入します。毎月支払いではありません。源泉徴収とは異なるのでご注意ください。支払賃金総額によっては差額が生じることになるので、翌年度に調整の上、清算します。

雇用保険については、以下のコラムも参照ください

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押さえておきたい雇用保険の手続き

なお、もし、概算保険料額が40万円(労災保険か雇用保険のどちらか一方の保険関係のみ成立している場合は20万円)以上の場合、または労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合は、3回に分割して労働保険料を納付できます。

また、事業年度の途中で大幅に事業を拡大するような場合には、支払う賃料総額も大きく変動することになります。賃金の総額が2倍以上になり、かつ概算保険料の額が年度初めに申告したものより13万円以上増加する場合は、増加額を増加概算保険料として申告・納付します。

出典:労働保険料の申告・納付|厚生労働省

まとめ

・労災保険と雇用保険をあわせて労働保険と呼びます。
・一人でも従業員を雇用している事業所は、労災保険に強制的に加入しなければなりません。
・労災保険は会社がその費用を全額負担、雇用保険は、事業主と労働者双方で負担します。
・労災未加入は、会社にとってリスクが大きい。
・労災保険の保険料は雇用保険料とあわせて、年度の始めに概算の保険料を前年の差額と共に申告・納付します。

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