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株式会社と合同会社の違いとは?各項目ごとに比較しながら解説!

HUPRO 編集部
株式会社と合同会社の違いとは?各項目ごとに比較しながら解説!

現在、日本の会社の形態は4つありますが、9割以上が株式会社、その次が合同会社となっています。この2つの形態は、出資者の責任が有限であるという点が共通です。今回は、株式会社と合同会社を比較。メリットとデメリットを紹介しながら、その違いを解説していきます。

日本の会社形態は4つ 株式会社が9割超

出典:国税庁 標本調査結果 会社標本調査結果 平成30年度分

日本の組織別法人数は、株式会社がダントツで、255万社以上、全体の93.3%を占めています。その次が3.6%の割合を占める「合同会社」です。現在10万社に届こうという状況で設立数を伸ばしています。
(有限会社は2006年の会社法改正で設立ができなくなりましたが、すでに存在しているものは「その他」として存続しています)

関連記事:有限会社が設立できないって本当!?有限会社はもう存在しない?

株式会社と持分会社

現在の会社法では、会社の形態は、株式会社と持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)の2種類に大きく分けられます。

株式会社は、経営は株主ではなく専門家である取締役が行うのが一般的です(株主=経営者の場合もありますが)。持分会社は、社員(出資者)自らが経営に当たることが定められている点が大きく異なります。

「合同会社」「合名会社」「合資会社」の違い

持分会社は、社員(出資者)自らが経営に当たる点が株式会社とは異なります。では、持分会社である 「合同会社」と「合名会社」「合資会社」は何がどう違うのでしょうか。名前も似ていますし紛らわしいですよね。

大きく違うのは、有限責任社員と無限責任社員についてです。
この場合の「社員」は「出資者」をさします。その会社で働く「従業員」の意味ではありません
「有限責任社員」は、その名の通り出資者が負う責任が有限であることをさします。

例えば経営破綻について、経営者がその全て負うかというとそうではありません。損失が生じても、その金額は自分が出資した額を超えることはなく、個人の財産などは保全されます。

対して「無限責任社員」は、会社が倒産したときなどに、出資者が債権者に対して負債総額の全額を支払う責任を負うのです。会社で負債を支払いきれない場合、その負担は個人財産にも及びます。

持分会社は、有限責任社員と無限責任社員の構成で、以下のように分類されます。

・合同会社は、有限責任社員のみ
・合名会社は、無限責任社員のみ
・合資会社は、無限責任社員と有限責任社員

会社の負債を個人財産を使っても負担したくてはならないとなると、責任は重大です。
その代わり、会社の運営に対して大きな業務執行権を有し、経営に介入し、利益配分を自由にできたりするというメリットもあります。スピード経営といえば聞こえは良いですが、ともすれば独裁的になりがちです。

よって、大企業の場合、そのほとんどは株式会社となり、合名会社や合資会社は、大きな企業ではまず採用されません。企業体が大きくなればなるほど、個人でその負債は負いきれないからです。

その数も、合名会社は約3000社で、全体の0.1%、合資会社も約14000社で全体の0.5%ほどとなっています。構成比から見ると、ほんのわずかです。

株式会社と合同会社の違い

株式会社と合同会社の違い

株式会社と合同会社は、経営者の有限責任であることは同様です。その他には何が違い、それぞれどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

信頼性:株式会社の方が対外的な信頼度が高い

株式会社は「◯◯株式会社」「株式会社◯◯」、合同会社は「◯◯合同会社」「合同会社◯◯」という会社名になります。

日本企業はほぼ株式会社なので、私たちは株式会社という表記になれています。
「合同会社」はまだまだ知名度が低いのが現状です。

また、役員の肩書きについても、株式会社の場合は「代表取締役」や「取締役」といった名称を用いることができますが、合同会社の場合は「代表役員」となります。
こちらもまだまだ知名度が低い名称ではないでしょうか。

外資系などであれば「そういうものかも?」と思われても、国内企業の場合は、個人事業主の屋号のように見られてしまうのです。特に、一般の方が取引対象の場合は「株式会社」の方が信頼度が高いというメリットがあります。

事業のために金融機関から融資を受けることが必要だったり、信頼性を重視しなくてはならない場合は、株式会社で設立する方が無難でしょう。
逆に、個人で副業から起業したり、特に企業としての規模や信頼性に重きを置かない企業の場合は合同会社でも問題ありません。

業務内容:株式会社の方が業務の幅が広い

業務を行う上で許認可が必要な業務があります。
例えば、第一種金融商品取引業、投資運用業、資金移動業、仮想通貨交換業などです。
これらの業種は株式会社であることが要件のひとつとなっています。
業種や事業内容によって、許認可の申請先は異なりますが、合同会社でこれらの事業を行うことはできませんので、注意が必要です。

会社設立:合同会社の方が安くて簡単

会社の設立においては、合同会社の方が安くて簡単にできます。

株式会社の設立において、登録免許税として支払う金額は15万円。
対して、合同会社は6万円です。
トータルでは、株式会社では25万円程度、合同会社では10万円程度の金額を見ておかなければなりません。

他にも、会社設立には、実印を作ったり、印鑑証明を取ったり、株式会社の場合は公証人に定款を認証してもらったり必要となる役員等の選任手続きがあったりと、他にも様々な費用と手間がかかります。

「とにかく安く、簡単に設立したい」という場合、合同会社にメリットがあります。

関連記事:会社を設立するとどんな税金を支払うことになるのか?

資本金の金額:株式会社・合同会社ともに1円

株式会社設立には、かつては資本金が1000万円必要でしたが、現在は1円。
合同会社も1円ですので、この部分はどちらでも変わりありません。

出資金の払込:合同会社は不要

株式会社を設立する場合は、原則として、発起人名義の銀行口座にその出資金を払い込まなくてはなりません。登記には、出資金の払込みがあったことを証する書面として、その銀行口座の通帳のコピーを提出する必要があります。
これは、日本の銀行口座がない場合は、対応が難しいということです。

合同会社を設立する場合は、銀行口座への払い込みは不要となります。出資金の払込みについては、社員が発行する領収書などを提出することで対応ができます。
つまり、日本に銀行口座を持っていない外国法人が社員となる場合でも、簡単に出資できるという点が特徴です。

出資金と資本金:合同会社は計上規制がない

株式会社では、出資した財産の額の1/2以上を資本金に計上しならないというルールがあります。
登録免許税は、資本金の額によって変わりますので、出資金が大きくなるとそれだけ資本金も増え、さらに税金も増えるということになります。また、資本金に計上されなかった額は、資本準備金として備える必要があるのです。

合同会社においては、出資額に対する資本金への計上の規制がありません。出資された財産の額をまったく資本金に計上しない(資本金の増加額を0円とする)ことも可能です。
また、資本金に計上されなかった額は、資本準備金ではなく、資本剰余金に計上されます。

関連記事:資本金金額で税金が変わる?仕組みを解説

現物出資:合同会社は検査役の調査規制がない

株式会社においては、金銭以外の財産を出資(現物出資)する場合は、裁判所が選任する検査役の調査を受けなくてはなりません、
検査役の選任と調査には、相当の時間と費用がかかります。

合同会社においては、現物出資をした場合でも、検査役の調査は不要です。

関連記事:現物出資とは?メリット・デメリットと手続き方法を解説

資金調達:株式会社の方が選択肢が多い

株式会社は、株式を発行すること、転換社債型新株予約権付社債(CB)など、様々な資金調達の方法があります。成長して条件を満たせば株式市場への上場にともなって巨額の資金を得るということも可能です。

対して、合同会社は株式を発行できませんので、株式のような資金調達はできません。融資などの資金調達は可能ですが、その際の信頼度合いは株式会社より下回ります。自らの資本金など調達できる金額の中で事業を行う、あるいは新たに出資してくれる人を経営メンバーである社員として迎えなくてはなりません。資金調達が困難であることが合同会社のデメリットの一つです。

このため、合同会社から株式会社に改組し、上場するパターンもあります。有名なのはソフトバンクです。
ソフトバンクグループインターナショナル合同会社→ソフトバンクグループジャパン株式会社として ソフトバンクグループ株式会社傘下の中間持株会社に転換。ソフトバンク株式会社(2代目法人)を東京証券取引所1部に上場

組織運営:合同会社の方がより柔軟に対処できるが……

株式会社は、最低でも、株主総会と取締役1名を置く必要があります。組織に複数の経営者がいる場合には「取締役会」を設置する取締役設置会社としなければならなかったり、監査役を必要としたり、株主総会を招集してから賛成多数を得ないと役員の信任や解任ができなかったりと、とにかく縛りが多いです。

合同会社には、株主総会も取締役会ありません。社員の賛成で意思決定できますし、役員の任期も定めがありません。会社の根本ルールである「定款」に職務内容を定めることによって、自由に組織運営を行うことが可能です。定款で組織のあり方を決める方法は「定款自治」とも言われます。社員(出資者)全員が賛成すればOKなのです。

ただしこれは、社員同士がみな同じ方向を向いて意思決定を行っている場合に限ります。合同会社は、出資者は、出資額にかかわらず対等の議決権を持つという特徴があります。
例えば、1000万円出資している社員と、1億円出資している社員も等しく1票なのです。
つまり、意見の対立が起こってしまうと「全員賛成」ではなくなり、かえって硬直化してしまうこともあります。

大会社規制:合同会社は大会社の規制がない

株式会社においては、資本金の額が5億円以上又は負債の額が200億円以上である会社は大会社と見なされます。
大会社に該当する場合には、監査役及び会計監査人を設置しなくてはなりません。また、企業を運営する上での内部統制システムの整備も必要です。

合同会社においては、大会社規制の適用はありませんので、規模が大きい場合であっても規制をうけることはありません。

このため、日本企業でも、大会社が株式会社から合同会社へ改組するパターンが出てきています。
・株式会社西友→合同会社 西友(ウォルマートの完全子会社から)
・株式会社DMM.com→合同会社DMM.com

利益配分:合同会社の方が会社の状況に合わせた配分が可能だが……

株式会社の場合、利益の配分は株主の出資比率によります。
合同会社の場合は、出資者の出資金額と関係なく利益を配分することが可能です。
そのため、例えば「出資金額は少なくても、利益をあげた商品開発に貢献した社員」に配分したりといった、会社の状況に合わせた配分ができます。

ただし、そのためには出資者の合意形成が必要です。組織運営の項でも述べましたが、出資比率にかかわらず平等な議決権があり、利益の配分も自由に決められるというのは、一見自由ですが「全員が満足する」という妥協点を常に探る必要があります。

人間関係がうまくいっているときは、これほどスムーズで柔軟性のある組織もないのですが、もし崩れた場合は収集できなくなるリスクもあるのです。

決算公告:合同会社は決算公告の義務がない

株式会社は、毎年の決算ごとにその内容を公表することが義務づけられています。実はこの決算公告の義務は、企業の規模に関係ありません。中小企業なら免除ということはないのです。
そして、決算公告の義務を怠ったとき、または、不正の公告をしたときには「100万円以下の過料に処す」という罰則が会社法976条第2号にて定められています。

これに比べ、合同会社には決算公告の義務はありません。
「楽で良い」と思われるかもしれませんが、閉鎖的なイメージを持たれ信用に関わることがあります。取引先を拡大したい場合や、融資を受けたいときに足を引っ張ることがあるかもしれません。

外資系企業に多い「合同会社」

私たちがよく知る企業も、実は合同会社であることがあります。中でも、目立つのは外資系の日本社ではないでしょうか。

・アマゾンジャパン合同会社
・Apple Japan合同会社
・グーグル合同会社
・ユニバーサルミュージック合同会社
・日本ケロッグ合同会社
・シスコシステムズ合同会社
・P&Gプレステージ合同会社
・エクソンモービル・​ジャパン合同会社

例えばこれらの企業はあえて合同会社の方式を選んでいます。いわゆるGAFAであるグーグル、Apple、Amazonはもともと株式会社であった状態を、あえて合同会社に改組しました。

これらの企業がなぜあえて合同会社を選んでいるかというと、一番大きな要因は「税金」です。米国子会社が合同会社によって税務上のメリットが得られることがポイントとなっています。また、すでに十分なブランド力があるため、株式会社にこだわらなくても良いという点も上げられるでしょう。

関連記事:合同会社のメリットとは?株式会社や個人事業主と比較

この記事を書いたライター

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