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資本金金額で税金が変わる?仕組みを解説

公認会計士 大国光大
資本金金額で税金が変わる?仕組みを解説

会社を設立する時や、増資をする時は「少しでも多くの資金が会社にあったほうが信用もあるし運転資金も困らないから良いですか?」と質問される時があります。半分合っていますが、半分は間違っています。資本金の金額によって税金が変わるということについて今回は解説します。

資本金1,000万円の壁

まず、大前提として資本金はいくらにしても良いとされています。昔は株式会社を作るのには最低1,000万円が必要とされていましたが、今はそのような規制はありません。よって、極端な話1円でも株式会社は設立が可能です。しかし、1円で設立すると設立費用すら支払えないことになり、結局役員から会社に貸付をしなければならないためオススメはしません。
迷ったらまず資本金は1,000万円以下にしておきましょう。
なぜ1,000万円以下かというと、次のようなメリットがあるからです。

①消費税の免税期間がある

消費税は、お客さんから預かった部分から自分が外部に支払った部分を差し引いて国に納めなければなりません。基本的に利益が出ている法人では支払の方が多くなる為、決算時に意外と重荷となることが多いです。
しかし、資本金1,000万円以下の法人については設立後原則2年間消費税が免税となり、預かった分を全て自分のものにすることができます。原則としたのは、1年目の上半期に売上1,000万円以上で給与等の支払が1,000万円以上であった時に2年目は消費税の納付義務が発生する場合があるからです。ただし、大きな設備投資をする予定の法人である場合は原則的な課税方法を選択したほうが有利な場合があるので注意が必要です。

②住民税の金額が有利となる。

法人の利益に課税されるのは、法人税だけではなく住民税と事業税もあります。法人税は赤字である場合は基本的にかかりませんが、住民税等は均等割という所得に関係なく課税されることになります。
例えば東京23区に主たる事務所がある法人の場合は資本金等が1,000万円以下の場合は均等割額が70,000円となりますが、1,000万円超~1億円以下となると180,000円と2倍以上に変わります(従業員数が50人以下の場合)
よって、赤字であっても資本金が1,000万円を超えた場合は、年間110,000円も多く住民税を支払わなければならなくなります。

資本金が1億円を超えると大幅に税金が変わる

資本金が1,000万円を超えると税額負担も増えるという話をしましたが、1億円を超えるとさらに税額負担が上がります。詳しくはこちらのコラム(資本金は1億円以下の方が良い?税制上のメリットは?)で紹介しますが、1億円以下の会社のメリットについて、項目を列挙すると次の通りです。

・法人税率の軽減措置
・交際費800万円まで損金算入可能
・少額償却資産の損金算入(30万円未満の固定資産)
・欠損金の繰戻還付、控除額優遇¥
・特別償却や税額控除

これ以外にも、大きく異なるのが外形標準課税の適用です。

外形標準課税とは

資本金が1億円を超えると、外形標準課税制度の適用法人となります。外形標準課税とは、簡単に言えば通常法人税等は所得に応じて課税され、赤字法人は住民税等の均等割のみ支払うことになりますが、所得以外の要素にも課税される制度を言います。

付加価値割

まず、外形標準課税法人は付加価値割というものが課されます。付加価値割というのは、単年度損益と収益配分額に対して課税されます。
単年度損益というのは繰越欠損金控除前の所得金額を言います。繰越欠損金が存在する場合はその分法人税等が減額されることとなりますが、外形標準課税対象法人はその期が黒字であった場合はその分課税額が増えることとなります。
また、収益配分額というのは報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料からなります。報酬給与額は、人件費+企業年金等の掛金が対象となり、純支払利子は支払利子-受取利子、純支払賃借料は支払賃借料-受取賃借料を言います。
付加価値割は企業が獲得した利益を従業員、利子、賃借料にどれだけ配分したかによって増減する税金と言えます。

資本割

資本割は資本金等の額に対して課税される税金です。資本金等とは原則として資本金と資本準備金の合計額を言います。
資本割は資本金等の額に0.525%を乗じた金額となります。よって、資本金額が大きくなればなるほど資本割額が大きくなります。

所得割

これ以外にも外形標準課税の適用がない法人と同様に所得に対して税金がかかります。法人の所在地により異なりますが、外形標準課税不適用法人の超過税率は7%程度となりますが、外形標準課税法人の所得割額は1%未満となります。(超過税率適用の場合)つまり、所得に対する税額の割合が外形標準課税の方が低い為一見外形標準課税の方が有利にも見えますが、先にお話した税額が入ってくるため、結果として外形標準課税適用法人の方が税額は大きくなることがほとんどです。

まとめ

資本金の額によって税金が変わるため、1,000万円、1億円の壁は常に意識をしておきましょう。外形標準課税制度は税額が上がるだけではなく、計算もややこしくなり間違えがちですので、特に資本金の額にこだわりがないのであればできる限り低めに設定することが重要です。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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