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経理マンVS税理士事務所職員どっちが税理士試験受かりやすい?

税理士 井上幹康
経理マンVS税理士事務所職員どっちが税理士試験受かりやすい?

税理士試験受験生のうち社会人受験生の属性は大きく➀事業会社の経理職、➁税理士事務所(法人)職員、③それ以外の3つに分けられますが、➀➁の数が多いと思います。今回は、➀事業会社の経理職と➁税理士事務所(法人)職員のどちらが税理士試験に受かりやすいか私自身の実体験も踏まえて解説していきます。

事業会社の経理職で勉強するメリット・デメリット

まずは、事業会社の経理職で働きながら税理士試験の勉強をするメリット・デメリットについて書いてこうと思いますが、私自身は上場企業の経理マンとして約3年間仕事をしながら税理士試験の勉強をしていた経験がありますので、基本的にはその経験を踏まえて以下書いていこうと思います。

メリット

コンスタントに毎日一定の勉強時間が確保しやすい

ある程度成熟した上場企業の経理部となれば、各種経理業務が平準化されており、四半期決算や期末決算といった繁忙期を除けば、基本的に長時間残業は少なくほぼ決められた時間に帰ることが可能でしょう。特に最近は「働き方改革」の名のもとに、夜一定の時間になると社内の電気が強制的に落ちて帰宅を促すような措置をとっている企業も多いです。
 
後で税理士事務所の話を書きますが、税理士事務所ではいくら自分の仕事スピードが速くてもクライアントに依頼した資料が届かないし、連絡しても電話も通じず(音信不通)、自分の仕事が終わらず帰れないなんてことがありますが、基本的に社内の人間を相手に仕事をする経理職の場合にはこうしたことは少ないでしょう。
よって、平日毎日18時、19時以降はフリーな時間が確保しやすいのでここを税理士試験の勉強時間に投入できるというわけです。

大企業の経理業務と税理士試験簿財の勉強がリンクしやすい

上場企業や会社法監査を受けているような大企業では、会計基準を適用して財務諸表を作成しなければなりません。税理士試験の入門科目である簿財はまさにこの会計基準が試験範囲になっていますので、大企業でも経理業務が税理士試験簿財の勉強に生き、逆に簿財の勉強が仕事に生きるというように相互にリンクしやすく相乗効果が期待できると思います。

税理士事務所でも記帳代行のような会計にかかわる仕事があるじゃないかと思われる方もいるかと思いますが、税理士事務所のクライアントの大多数が個人事業主や非上場の中小企業であり、会計基準を適用して財務諸表は作らずもっぱら法人税法の規定に準拠して財務諸表を作っています(いわゆる税務会計)。なので、税理士事務所での記帳代行は簿財の勉強とはなかなか結び付かず、記帳代行の仕事と簿財の勉強の相乗効果はあまり期待できないでしょう。

デメリット

経理業務と税理士試験税法科目の勉強がリンクしにくい

先に、メリットのほうで大企業の経理業務と簿財の勉強がリンクしやすいという点を解説し
ましたが、その一方で経理業務と税理士試験税法科目の勉強はなかなかリンクしにくいです。

特に相続税法や所得税法の勉強の知識は経理業務ではほとんど関係がないですし(源泉所得税は多少関係ありますが)、法人税法や消費税法の勉強は日々の経理業務で生きる部分もありますが、やはり税務申告書を作る経験が圧倒的に少ないので勉強で得た知識がフルに経理業務にはいかせません。

ただし、上場企業では顧問税理士に税務申告書の作成は依頼せず、自社の経理部で税務申告書を作成しているところもあり、そこで税務申告書の作成担当者に抜擢されればある程度税法科目(法人税法、消費税法等)の試験勉強の内容が仕事にも生かせる余地はあると思います。

税理士試験の勉強をしていることを社内でオープンにしにくい場合も多い

例えば、税理士事務所の職員が税理士試験の勉強をしているということを事務所内部の人やクライアントが知っても特にそれが原因で仕事がやりづらくなったりすることはないでしょうが、事業会社の経理マンの方が税理士試験の勉強をしているということを社内でオープンにした場合はどうでしょうか?
 
もちろん応援してくれる方もいると思いますが、中には「いずれ税理士事務所(法人)に転職するだろうなぁ」とか、あまりそれをよく思わない人も出てくるでしょう。

こうしたこともあって、税理士試験の勉強をしていることを社内でオープンにしにくい場合も多いと思います。こうした場合、お昼休みや休憩時間の時に社内で税理士試験の勉強を堂々とすることができないのでややデメリットといえるでしょう。

税理士事務所の職員で税理士試験の勉強をすることのメリット・デメリット

次に、税理士事務所の職員として仕事をしながら税理士試験の勉強をすることのメリット・デメリットについて書いていこうと思いますが、私自身は規模の大きな税理士法人に勤務しながら税理士試験の勉強をしていましたので、基本的にはその経験を踏まえて以下書いていこうと思います。

メリット

税理士事務所の仕事と税理士試験税法科目の勉強がリンクしやすい

上記でも既に述べた通り、事業会社の経理業務と税理士試験税法科目の勉強はなかなかリンクしにくいですが、税理士事務所での仕事と税法科目は非常にリンクしやすいといえるでしょう。

もちろん、税理士事務所に勤務していても記帳代行業務な簡単なExcel集計作業しかやっていない場合等は除きますが、税理士事務所での仕事には税理士試験税法科目の勉強がダイレクトに生きるので大きな相乗効果が期待できると思います。

デメリット

コンスタントに毎日一定の勉強時間が確保しにくい

 
これも上記で述べていますが、税理士事務所ではいくら自分の仕事スピードが速くてもクライアントに依頼した資料が届かないし、連絡しても電話も通じず(音信不通)、自分の仕事が終わらず帰れないなんてことがよくあります。

税理士業はある意味でサービス業的な要素があるのでクライアントの都合に左右されるのは仕方ないのですが、その分どうしてもコンスタントに毎日一定の勉強時間が確保しにくいです。

まとめ

最後に、事業会社の経理職と税理士事務所の仕事について税理士試験の勉強との関係性(メリット・デメリット)を簡単にまとめると以下の通りです。

私自身ははじめ上場企業の経理マン時代に税理士試験の会計2科目(簿財)と法人税法に合格し、その後大手税理士法人に転職して税法2科目(消費税法、事業税)に合格しました。

上場企業の経理業務が会計2科目と相性がいいからはじめは上場企業の経理で働きながら簿財を合格し、残る税法科目は税理士法人の仕事との相性がいいから、簿財+税法1科目受かったくらいで税理士法人に転職しようなんて緻密な戦略は当時練っていませんでしたが、今振り返ると結果論ではありますが、経理マンの時に簿財を勉強し、税理士事務所勤務の時に税法科目を勉強するというが仕事と試験勉強の相乗効果が最適な組み合わせだったのだと思います。

税理士試験受験生を見ていると就職先や転職先として大手の税理士事務所(法人)しか見ていない方が多い印象ですが、上記の通り、上場企業の経理職も税理士試験の勉強をするにあたって多くのメリットがありますので、視野を広げて就職先や転職先の候補に入れてもいいのではないかと思います。

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この記事を書いたライター

大学在学中に気象予報士試験に独学一発合格。社会人として働きながら4年で税理士試験官報合格。開業税理士として税務に従事しながら不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験や不動産鑑定士試験受験生向けの相談サービスや会計学ゼミも開催。
カテゴリ:資格試験

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