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社会人が気をつけたい税理士試験税法科目の勉強法

税理士 井上幹康
社会人が気をつけたい税理士試験税法科目の勉強法

税理士試験の受験生には受験専念の方もいれば、働きながら勉強されている社会人の方も多くいます。私自身も働きながら4回の受験で税理士試験5科目に合格しました。今回は、そんな私自身の実体験も踏まえて社会人が税法科目の勉強をはじめるにあたりはじめに注意すべき事項や勉強法について解説していきます。

大学院免除を活用するかどうかの意思決定

まず、税理士になる方法としては、税理士試験5科目に合格する方法以外に大学院免除を活用する方法があります。

大学院免除を活用すると、税法2科目が免除になりますので、あとは会計2科目(簿記論・財務諸表論)と税法1科目に合格すればよいことになります。

社会人受験生は税理士試験5科目に合格するか、大学院免除を活用するかどちらかの選択をする必要がありますが、いずれにしても税法1科目は受験して合格する必要があります

独学か専門学校かの意思決定

税法科目の勉強にあたり、独学でやるのか専門学校を活用するのかを選択する必要がありますが、大多数の受験生は専門学校を活用しています。私自身も会計2科目は独学でしたが、税法3科目は全て専門学校を活用しました。

私が思う税法科目で専門学校を活用する大きなメリットとしては

専門学校のカリキュラムをしっかり消化することで自然と勉強スケジュール管理ができること
最新の税制改正のキャッチアップ情報が得られること

が挙げられます。

①専門学校のカリキュラムをしっかり消化することで自然と勉強スケジュール管理ができること

社会人受験生の場合特に勉強時間が限られるため勉強スケジュール管理は必須ですが、専門学校を活用すれば、毎回の授業で習った論点を次回の授業までに確実に復習するというサイクルを回すことで、自然と勉強スケジュール管理ができてきます。

②最新の税制改正のキャッチアップ情報が得られること

税法科目は毎年税制改正が行われるため、最新の税制改正情報へのキャッチアップが必須となってきますが、これも専門学校を活用していればキャッチアップ情報の提供を受けられます。

以上のような観点から、社会人受験生は税法科目の勉強にあたり専門学校を活用することをお勧めします

科目選択及び1年で何科目やるかの意思決定

税理士試験5科目合格を目標とする方は税法3科目を、大学院免除を活用する方は税法1科目を選択する必要があります。

税法3科目の科目選択にあたっての留意点は以下の通りです。

法人税法と所得税法は、いずれか1科目は必ず選択しなければならない。
消費税法と酒税法は、いずれか1科目の選択に限られる。
住民税と事業税は、いずれか1科目の選択に限られる。

各税法科目について、学習分量の多さで分類すると以下のようになります。

②最新の税制改正のキャッチアップ情報が得られること

ここで、1点注意なのが、「学習分量が少ない科目=合格しやすい科目」という等式は成立しないということです。学習分量が少ない科目は合格圏内にいる受験生のレベルが非常に高く、理論暗記も学習分量の多い科目に比べより高い精度が求められたりします。

私自身は税理士試験の勉強を始めた頃上場企業の経理マンでしたので、仕事にも生かせる科目選択を意識して法人税法、消費税法、事業税の3科目を選択しました。税理士事務所にお勤めの方で、法人のお客様以外に個人のお客様も多く担当されている方などは、所得税法や相続税法などの科目選択をすることで仕事にも生かせて相乗効果が狙えると思います。

そして、科目選択と同じくらい重要なのが、1年で何科目勉強するかを決めることです。私自身の経験からいうと、仕事をしながらだと1年で税法科目2つが限界なのではないかと思います。もちろん税法科目の受験経験者や直前期(5月以降)は仕事を辞めて受験に専念するという方などであれば1年で税法科目3つも可能かと思われます。

1日の勉強時間はどれくらい必要か

社会人受験生は仕事の都合、勉強に割ける時間がある程度限られます。私自身は、平日は1日あたり約3時間~4時間程度勉強していました。おそらくこれ以上の勉強時間の捻出は厳しいと思います。土日はというと、1日あたり約5時間~6時間勉強していました。土日の勉強時間はもっと確保できるのでは?と疑問を持たれる方もいるかもしれませんが、私は土日で専念学校の授業を受講していたため、授業の時間以外で時間を捻出するとなると約5時間~6時間が限界でした。

また、一口に勉強時間といっても1時間以上まとまって時間を確保できる場合もあれば、数十分単位のスキマ時間もあります。私自身は、通勤電車の移動中や会社の昼休みといったスキマ時間で平日1日あたり約1時間程度は確保していました。スキマ時間では計算問題を解くことが困難なので、主に理論暗記に充てていました。そして、1時間以上まとまって時間を確保できる時に計算問題を解くようにしていました。

勉強場所・スペースの確保

社会人受験生の場合、勉強場所の確保も重要なテーマとなってきます。私自身は、勉強場所と勉強する内容の組み合わせで以下のような候補を常に持っていました。

勉強場所・スペースの確保

勉強場所については、できるだけ自宅と勤務先の会社の近くに複数の候補を持っておくと勉強場所を探す時間のタイムロスを防ぐことができるのでお勧めです。あわせて、どの勉強場所でどんな勉強をするかもあらかじめ決めておくとよいでしょう。

税法科目の理論の勉強法

税法科目の理論の勉強法

税法科目の理論の勉強ツールとしては、TAC生であれば理論マスター、大原生であれば理論サブノートといった条文を税理士試験の理論対策用にカスタマイズした暗記集を使っていると思います。

これら暗記集を活用した理論の勉強法としては、①読む、②書く、③聴く、④打つの4つが考えられます。若干補足すると、③は、自分で暗記集を音読して録音したものを聴く方法やTAC理論マスター音声CDを聴く方法で、耳から覚える方法をいいます。④は、PC、タブレット、スマホなどの端末でタイピングすることで覚える方法をいいます。

また、上記の理論勉強法は、インプット系の勉強(①読む、③聴く)とアウトプット系の勉強(②書く、④打つ)に大別されます。試験対策としては、インプットとアウトプットの両方が必要になりますが、私自身は、インプット系の勉強(①読む、③聴く)とアウトプット系の勉強(②書く)を実践していました。④打つ方法については、井ノ上陽一先生のブログ記事が大変参考になります。
参考:井ノ上陽一先生のブログ記事

社会人受験生の方で理論が苦手という方の多くは、アウトプット系の勉強が不足しています。試験では答案用紙に書くことが求められますが、どうしても書く作業は手間で面倒くさいとい感覚で避けている方が多いのではないかと思いますが、書く作業なしに理論はできるようにならないのでくれぐれもアウトプット系の勉強を怠らないように注意しましょう。

税法科目の計算の勉強法

税法科目の計算の勉強法としては、シンプルに電卓を使って問題を解くしかないのですが、問題の素材としては、①専門学校の問題集、②答練、③過去問に大きく分類されます。

私自身は、どの税法科目もそうですが、毎回授業で習った論点の計算問題は①の問題集を使い次回の授業までに必ず3回程度は繰り返し解いていました。また、②答練や③過去問は計算部分だけやるにしても1時間は確保する必要があるので、時間が確保しやすい土日などに行っていました。

その他の工夫としては、計算問題で間違えた箇所を切り抜いて間違えノートに張り付けてスキマ時間などに確認していました。間違えノートを作るかどうかは受験生次第ですが、もし作る場合はノート作りにあまり時間をかけすぎないように注意しましょう。私は計算問題を繰り返し解くため必ず問題や解答用紙をコピーしていたので、間違えた箇所の問題を切り抜き、そのままノートに張り付けるだけの作業でノート作りに時間をかけませんでした。

また、税法科目の理論と計算は可能な限りリンクさせて勉強すると効果的です。例えば、私自身は、理論の暗記集の余白に計算テキストの計算パターンの部分をコピーして貼り付けたりすることで常に理論と計算を一体化して勉強するように心がけていました。

おわりに

社会人受験生が税法科目の勉強をはじめる際には、是非上記のような事項を事前にしっかり検討されることをお勧めします。税理士試験は科目合格制という受験制度のためどうしても受験期間が長期化しますので、はじめの検討が非常に重要になってきます。この記事を読まれた受験生にとって何か1つでも得るものがあれば幸いです。

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この記事を書いたライター

大学在学中に気象予報士試験に独学一発合格。社会人として働きながら4年で税理士試験官報合格。開業税理士として税務に従事しながら不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験や不動産鑑定士試験受験生向けの相談サービスや会計学ゼミも開催。
カテゴリ:コラム・学び

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