4月22日より、2024年(令和6年)の第74回税理士試験の申込受付が開始されました。難関国家資格として名高い税理士資格の日程について、気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、2024年の税理士試験や合格発表の日程はもちろん、昨年から変更された受験資格や合格後のキャリアまで解説します。
まずは税理士試験の概要について解説します。
税理士試験は年に1度、毎年8月上旬~中旬のうち3日間で行われます。
2024年度税理士試験の試験日程は以下の通りです。
今回の試験は、例年より受験申込受付期間が前倒しとなっています。昨年までに受験経験がある方は、注意が必要です!
8/6 9:00~11:00 | 簿記論 |
8/6 12:30~14:30 | 財務諸表論 |
8/6 15:30~17:30 | 消費税法または酒税法 |
8/7 9:00~11:00 | 法人税法 |
8/7 12:00~14:00 | 相続税法 |
8/7 15:00~17:00 | 所得税法 |
8/8 9:00~11:00 | 国税徴収法 |
8/8 12:00~14:00 | 固定資産税 |
8/8 15:00~17:00 | 住民税または事業税 |
2024年度の税理士試験は、以下の12都道府県で受験できます。
1.北海道 2.宮城県 3.埼玉県 4.東京都 5.石川県 6.愛知県 7.大阪府 8.広島県 9.香川県 10.福岡県 11.熊本県 12.沖縄県
昨年度の試験と同じ都道府県で行われる予定で、2022年に受験地とされていた神奈川県、群馬県、京都府は、引き続き対象外でした。
なお会場は現在未定です。
税理士試験の受験料は、科目の受験数によって変動し、下表のようになっています。
1科目 | 4,000円 |
2科目 | 5,500円 |
3科目 | 7,000円 |
4科目 | 8,500円 |
5科目 | 10,000円 |
以前の受験料は3,500円~7,500円でしたが、2018年(第68回)に値上げされています。
5年かけて1科目ずつ受験する場合だと、4,000円×5回で20,000円になります。一方、1回の受験で5科目受験すると10,000円です。
現実的には1回の受験で5科目同時に受験することは少なく、1科目ごと、あるいは2~3科目受験が多いので、12,500~20,000円かかると考えておきましょう。
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試験の合格基準点は、各科目とも60パーセントと国税庁のWebサイトで発表されています。ただし、大手予備校の出す合格ボーダーラインは70パーセントを超えるものや、反対に60パーセントを下回る科目もあり、あくまでも参考値のようです。
出典:税理士試験受験資格の概要|国税庁HP
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税理士試験には、受験のための条件があります。ただし、昨年度の第73回税理士試験から受験資格が大幅に緩和され、簿記論および財務諸表論については制限が無くなりどなたでも受験が可能となりました。
その他の科目の受験資格は以下の通りです。
なお、ご紹介する【学識による受験資格】、【資格による受験資格】、【職歴による受験資格】のいずれかを満たせば受験可能であり、受験の年齢制限はありません。
学識による受験資格についても、先述した受験資格の緩和のタイミングで、「法律学に属する科目」の部分が「社会科学に属する科目」に変更されました。この変更により、社会学や政治学、ビジネス学、教育学、心理学、統計学など、理系学部の学生も履修の機会がある多くの科目が、必須科目の中に含まれることになりました。
これらの資格の難易度は高く、一朝一夕の勉強では取得できません。しかし、税理士試験の勉強範囲に含まれる内容も多いことから、勉強の第一歩として合格することにより、受験資格を得る方もいらっしゃいます。
ただ、受験資格の緩和により、簿記の資格と学習内容の重複範囲が最も広い簿記論の受験資格が必要無くなったため、敢えてこの手段を選ぶという方は減っていると見られます。
複式簿記による仕訳、決算、財務諸表作成など経理事務に従事した経験でも受験資格が得られます。もし転職している場合も通算して2年以上の経験があれば、受験が可能です。
類似の学歴・職歴を持つ場合は、あらかじめ国税審議会の個別認定を受けることにより、受験資格が認められる場合があります。いずれにおいても、税理士試験は受験資格においてはかなり寛容な試験といえるでしょう。
税理士試験は必修科目・選択必須科目・選択科目の3つから成り立っています。
必須科目である「簿記論」と「財務諸表論」を除き、決められた選択肢の中から受験科目を選べる科目選択制のしくみを採用しています。
選択必修科目は「所得税法」と「法人税法」の2つとなり、どちらか一方で合格することが税理士試験を突破するための最低条件となります。
残る選択科目に関しては、「酒税法または消費税法」、「固定資産税」、「相続税法」、「国税徴収法」、「事業税または住民税」のうち2科目に合格しなければなりません。
上記に挙げた11科目のうち最低5科目に合格することが、税理士試験合格の条件です。
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過去5年間の税理士試験の1科目以上の合格者数・合格率は以下の通りです。
2023年 | 6,525人/21.9% |
2022年 | 5,006人/16.7% |
2021年 | 4,554人/18.8% |
2020年 | 5,402人/20.3% |
2019年 | 5,388人/18.1% |
特筆すべきは昨年の合格率の高さです。受験資格緩和のタイミングだったにも関わらず、合格者や合格率が下がらなかったばかりか、直近5年間の中では最高水準の数値となりました。受験資格のなかった方々についても、勉強や努力をすれば合格可能と証明できたと言っていいでしょう。
ただし、ルールを変更した初年度は試験問題の難易度などが調整されるケースもありますので、今年度以降の試験については前回ほどの合格率にはならない可能性もあります。
税理士試験は5科目同時受験も可能ですが、難易度から考えると毎年1~2科目ずつチャレンジするというのが手堅い攻略方法です。
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税理士試験には、「学位取得による科目免除」、「特定資格取得による免除」、「国税従事による科目免除」の大きく分けて3つの免除制度があります。
学位取得による科目免除とは、
「大学院に進学して、一定単位取得かつ修士論文が認められると、税法科目であれば残り2科目、会計学科目であれば残り1科目にも合格したものとみなされて、試験が免除される」という制度です。
特定資格取得による免除とは、
「弁護士もしくは公認会計士の資格を持っている人は税理士試験を受けなくても税理士資格が認められる」制度です。
国税従事による科目免除とは、
「一定期間国税従事者として働いた場合に一部科目が免除になる」制度です。具体的には、「10年又は15年以上税務署に勤務した国税従事者は、税法に属する科目が免除」、「23年又は28年以上税務署に勤務し、指定研修を修了した国税従事者は、会計学に属する科目が免除」と定められています。
現在、新規税理士登録者のうち、試験合格者の割合は3割ほどで、試験合格者の人数が免除者を大きく下回っている現状です。そのため、5科目合格の税理士は希少人材と言えます。
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それでは、税理士試験の勉強をどのように進めるのかについて、具体的に解説していきましょう。
これから税理士試験の勉強を始めようという方は、まず独学か予備校に通うかの選択に迷うと思います。
税理士試験合格者に聞くと
「会計学の必須科目の『簿記論』と『財務諸表論』は独学でも合格できるかもしれない」と言う声が多いです。この2科目は多くの税理士受験生がはじめに受験する科目。
ここでスムーズに合格できるかどうかによって、その後の税法の勉強に進むか、あるいは「科目合格者」として就職・転職活動を目指すか道がわかれます。
ただし、その後の所得税法・法人税法のいずれかの選択を含む税法の科目については、「参考書も数が限られてきたり、税法改正などの最新の情報を得るのが難しかったりするため、予備校に通うべきだ」という声が大多数です。
税理士試験は年に1度。しかし1年フルに使っても1科目の勉強が難しいと言われるほど範囲が膨大な試験です。
もちろん、5科目1度に受験も可能ですが、欲張ってしまって全ての勉強が中途半端になってしまい、1科目も取れないという事態は避けたいものです。
つまり、1年間に何科目の合格を目指すのかという判断も非常に重要になります。
勉強に確保できる時間をしっかりと計算して周りの受験経験者にアドバイスを求めるなどしながら慎重に決めましょう。
税理士試験合格に必要な総勉強時間は3,000時間が目安と言われています。働きながら勉強した場合で4~5年、税理士試験の勉強だけに専念した場合で2~3年かかると言われています。
税理士試験の各科目の勉強時間の目安は以下の通りです。
簿記論 | 450時間 |
財務諸表論 | 450時間 |
所得税法 | 600時間 |
法人税法 | 600時間 |
相続税法 | 450時間 |
消費税法 | 300時間 |
酒税法 | 150時間 |
国税徴収法 | 150時間 |
住民税 | 200時間 |
事業税 | 200時間 |
固定資産税 | 250時間 |
仮に効率よく勉強や合格ができ、勉強時間が1500時間だとしても、1500/365日=4.1時間/日の時間が必要です。働きながらの受験の場合、容易に確保できる時間ではありません。合格までにはかなりの時間を要する覚悟をしておくのが賢明でしょう。
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税理士受験勉強をしながら、社会人として働く方も多くいらっしゃいます。そのような方は、働く職場がどのような環境かによって、試験の合否が大きく左右されます。
一般事業会社よりも会計事務所の方が、税理士試験の受験生に対して理解があるケースが多いです。会計事務所の所長は自分も税理士資格を取得しているので、税理士試験の大変さをよく知っています。そのため、税理士の受験生は会計事務所で働くケースが多くなります。
ただし、労働環境は各事務所によってまちまちなので、会計事務所に転職する際は、
過度な残業時間が無いかや、税理士試験前の試験休暇は取得可能かなど、事務所が受験生を応援する体制があるのかしっかりと確認しましょう。具体的な求人につきましては、以下よりご確認ください。
税理士試験科目合格者におすすめの求人はこちら:科目合格者おすすめ求人の注目求人!
税理士試験に合格した後は、様々なキャリアが考えられます。
具体的には、会計事務所、コンサルティングファーム、事業会社にて企業内税理士として働く、そして実務経験を経たのち独立・開業するなどです。
ただし、税理士になるには税理士試験合格に加え、所定の実務経験を2年間積む必要があります。ですので、試験合格前に実務経験をしていない場合は、会計事務所に就職・転職するケースが一般的といえます。
税理士試験合格後のキャリアについては、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
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また、税理士試験に合格された方のキャリアインタビューもご紹介します。
・専業主婦から開業税理士に。美人ママさん税理士脇田先生〜私の税理士年表〜
・気象予報士から始まった士業への道
税理士試験勉強中なら資格取得応援環境のある職場へ、税理士試験合格後であれば希望のキャリアを実現できる職場へ、転職を検討される方が多いです。
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