難関資格として名高い税理士試験。本記事では税理士試験の受験資格や試験日程などの概要を解説します。具体的な勉強方法や税理士としてのキャリアについてもあわせて紹介します。税理士受験生は必見の内容です!
まずは税理士試験の概要について解説します。
税理士試験は年に1度、毎年7月上旬から8月中旬のうち3日間で行われます。
2022年度税理士試験の試験日程は以下の通りです。
・受験申込受付開始 2021年5月10日
・受験申込受付締切 2021年5月20日
・試験実施 2021年8月2日~令和3年8月4日
・合格発表 2021年11月30日
2021年8月2日(火)
・簿記論 9:00~11:00
・財務諸表論 12:30~14:30
・消費税法又は酒税法 15:30~17:30
2021年8月3日(水)
・法人税法 9:00~11:00
・相続税法 12:00~14:00
・所得税法 15:00~17:00
2021年8月4日(木)
・国税徴収法 9:00~11:00
・固定資産税 12:00~14:00
・住民税又は事業税 15:00~17:00
2022年度税理士試験の試験会場は、15都道府県、20か所です。
以下のいずれかの都市で受験ができます。
1.北海道 2.宮城県 3.埼玉県 4.群馬県 5.東京都 6.神奈川県 7.石川県 8.愛知県 9.大阪府 10.京都府 11.広島県 12.香川県* 13.福岡県 14.熊本県 15.沖縄県
北海道 | TKP札幌駅カンファレンスセンター |
北海道 | TKPガーデンシティPREMIUM札幌大通 |
宮城県 | サンフェスタ |
埼玉県 | 獨協大学 |
群馬県 | ビエント高崎 |
東京都 | 大正大学 |
東京都 | 東京流通センター |
東京都 | 早稲田大学(早稲田キャンパス) |
東京都 | 武蔵大学(江口田キャンパス) |
神奈川県 | パシフィコ横浜(ノース) |
石川県 | 石川県地場産業振興センター |
愛知県 | 名古屋市中小企業振興会館(吹上ホール) |
大阪府 | 大阪国税局 |
京都府 | 国立京都国際会館 |
京都府 | みやこめっせ(京都市勧業館) |
広島県 | 広島市中小企業会館 |
広島県 | 広島サンプラザ |
香川県 | サンメッセ香川 |
福岡県 | 西日本総合展示場 |
熊本県 | グランメッセ熊本 |
沖縄県 | 沖縄産業支援センター |
税理士試験の受験料は、**1科目で4,000円、2科目で5,500円、3科目で7,000円、4科目で8,500円、5科目で10,000円となっています。
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以前の受験料は3,500円~7,500円でしたが、2018年(第68回)に値上げされています。
5年かけて1科目ずつ受験する場合だと、4,000円×5回で20,000円になります。一方、1回の受験で5科目受験すると10,000円です。
現実的には1回の受験で5科目同時に受験することは少なく、1科目ごと、あるいは2~3科目受験が多いので、10,000~20,000円かかると考えておきましょう。
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試験の合格基準点は、各科目とも60パーセントと国税庁のWebサイトで発表されています。ただし、大手予備校の出す合格ボーダーラインは70パーセントを超えるものや、反対に60%を下回る科目もあり、あくまでも参考値のようです。
また税理士試験の合否は相対評価で決まるという噂もあり、明確な合格基準は謎となっています。
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税理士試験には、受験のための条件があります。以下の要件が、税理士試験の受験資格です。
【学識による受験資格】における、「法律学又は経済学」については、学部・専攻や専門科目である必要はなく、一般教養科目も該当します。
資格はいずれかを満たせば受験可能です。例えば、【学識による受験資格】を満たさない場合は【資格による受験資格】もしくは【職歴による受験資格】を見たせば受験できます。一番多いパターンは簿記検定に合格することです。
受験資格があったとしても、試験勉強にもなることから「日商簿記検定1級」を勉強する人とは多いです。
さらに、【職歴による受験資格】として、複式簿記による仕訳、決算、財務諸表作成など経理事務に従事した経験でも受験資格が得られます。
転職している場合も通算して2年以上あれば受験が可能です。類似の学歴・職歴を持つ場合は、あらかじめ国税審議会の個別認定を受けることにより、受験資格が認められる場合があります。いずれにおいても、税理士試験は受験資格においてはかなり寛容といえる試験です。
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日本では大学入学は18歳以上、専修学校入学及び就職は15歳以上からしかできないと定められています。さらに法律学や経済学の単位を修得して、大学は3年次以上、専修学校は専門課程を修了しなくてはいけません。そのため学識による受験資格の場合は最短で20歳~となります。
司法試験・日商簿記1級・全経簿記上級・公認会計士試験の短答式試験のいずれも年齢制限がありません。つまりこれらの資格さえ取得していれば税理士試験も何歳からでも受験が可能です。
ちなみにこれまで、司法試験は15歳、日商簿記1級は15歳、公認会計士最年少は16歳という資格取得の最年少記録があります。つまり、この方たちは大学や専修学校入学・所定単位の修得前に受験資格を得ることができるのです。
###職歴による受験資格の場合
職歴による受験資格の場合は2年以上の職務経験が必要となります。理論上は中卒でも就労可能ですが、企業の会計業務や銀行などの金融機関での資金運用、税理士や公認会計士などの士業事務所での業務を行うのは、最低でも高卒からが一般的ではないでしょうか。
そう考えると、税理士試験を早く受験するためには「資格による受験資格」、難易度を考えると日商簿記1級もしくは全経簿記上級が一番近道といえるでしょう。
仮に15歳で資格試験を突破し、翌年16歳で税理士試験に5科目合格したとしましょう。しかし、すぐには税理士になれません。
というのも、未成年者は税理士登録できないからです。税理士法で定められています。もしくは、婚姻している場合は未成年でも成年と見なされます。現在は民法で女性16歳・男性18歳で結婚できると定められていますので、2021年2月現在、理論上の最年少税理士は16歳女性です。
しかし、2022年4月1日より、成人年齢は20歳→18歳になり、婚姻可能年齢は男女ともに18歳となるため、18歳登録が最年少となります。
税理士試験は、
・会計学に属する科目(簿記論・財務諸表論)
・税法に属する科目(所得税法・法人税法/相続税法・消費税法又は酒税法・国税徴収法・住民税又は事業税・固定資産税)
の合計11科目にて構成されています。
このうち
・会計学に属する科目2科目(つまり簿記論と財務諸表論は選択必須)
・税法に属する科目のうち受験者の選択する3科目(所得税法又は法人税法のいずれか1科目は必ず選択)
の計5科目について合格することが必要です。
ただし、選択方法には決まりがあります。
税法の必須選択科目の「法人税法」と「所得税法」については、どちらかの合格が必要です。両方選択することもできます。
しかし、この2科目は他の税法科目に比べると膨大な量の勉強が必要です。いずれか1科目を選択して残りの2科目を相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税から選択する方がスムーズに合格を目指すことができます。
税理士試験の科目選択の組み合わせについては、ただ闇雲に合格率が高いものを選ぶのではなく、自分が専門性を身につけていきたい科目を選ぶようにしましょう。
例えば、「法人税法」や「相続税法」は会計事務所への就職の際に需要が高い分野です。科目選択の際には「税理士になった後のキャリア」を考えることも大事なポイントです。
《関連記事》科目選択についての詳しい内容は以下の記事をご覧ください
過去5年間の税理士試験の受験者数・合格者数・合格率は以下の通りです。
2021年 | 27,299人/4,554人/18.8% |
2020年 | 26,673人/5,402人/20.3% |
2019年 | 29,779人/5,388人/18.1% |
2018年 | 30,850人/4,716人/15.3% |
2017年 | 32,974人/6,634人/20.1% |
合格率は、年度によってばらつきがありますが、15~20%となっています。
税理士試験は5科目同時受験も可能ですが、勉強量から考えると、毎年1~2科目ずつチャレンジするというのが手堅い攻略方法です。
《関連記事》難易度や合格率の詳細は以下の記事をご覧ください
税理士試験には、
「学位取得による科目免除」「特定資格取得による免除」「国税従事による科目免除」の大きく3つの免除制度があります。
学位取得による科目免除とは、
「大学院に進学して、一定単位取得かつ修士論文が認められると、税法科目であれば残り2科目、会計学科目であれば残り1科目にも合格したものとみなされて、試験が免除される」という制度です。
特定資格取得による免除とは、「弁護士もしくは公認会計士の資格を持っている人は税理士試験を受けなくても税理士資格が認められる」制度です。
国税従事による科目免除とは、「一定期間国税従事者として働いた場合に一部科目が免除になる」制度です。具体的には、「10年又は15年以上税務署に勤務した国税従事者は、税法に属する科目が免除」、「23年又は28年以上税務署に勤務し、指定研修を修了した国税従事者は、会計学に属する科目が免除」と定められています。
税理士試験を5科目全て受験して合格するという人の割合はどんどん下がっています。
現在、新規税理士登録者のうち、試験合格者の割合は3割ほどで、試験合格者の人数が免除者を大きく下回っている現状です。そのため、5科目合格の税理士は希少人材と言えます。
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それでは、税理士試験の勉強をどのように進めるのかについて、具体的に解説していきましょう。
これから税理士試験の勉強を始めようという方は、まず、独学か予備校に通うのかの選択に迷うと思います。
税理士試験合格者に聞くと
「会計学の必須科目の『簿記論』と『財務諸表論』は独学でも合格できるかもしれない」と言う声が多いです。この2科目は税理士試験のはじめに受験する科目。
ここでスムーズに合格できるかどうかによって、その後の税法の勉強に進むか、あるいは「科目合格者」として就職・転職活動を目指すか道がわかれます。
ただし、その後の所得税法・法人税法のいずれかの選択を含む税法の科目については、「参考書も数が限られてきたり、税法改正などの最新の情報を得るのが難しかったりする。予備校に通うべきだ」という声が大多数です。
税理士試験は年に1度。しかし1年フルに使っても1科目の勉強が難しいと言われるほどはっ日が膨大な試験です。
もちろん、5科目1度に受験も可能ですが、欲張ってしまって全ての勉強が中途半端になってしまい、1科目も取れないという事態は避けたいものです。
つまり、1年間に何科目の合格を目指すのかという判断も非常に重要になります。
勉強に確保できる時間をしっかりと計算して周りの受験経験者にアドバイスを求めるなどしながら慎重に決めましょう。
税理士試験合格に必要な総勉強時間は3,000時間です。働きながら勉強した場合で4~5年、税理士試験の勉強だけに専念した場合で2~3年かかると言われています。
税理士試験の各科目の勉強時間の目安は以下の通りです。
簿記論 | 450時間 |
財務諸表論 | 450時間 |
所得税法 | 600時間 |
法人税法 | 600時間 |
相続税法 | 450時間 |
消費税法 | 300時間 |
酒税法 | 150時間 |
国税徴収法 | 150時間 |
住民税 | 200時間 |
事業税 | 200時間 |
固定資産税 | 250時間 |
しかし、実際に合格した人に聞くと、この時間の倍ぐらいは見ておいたほうが良いとのことです。つまり、各科目300~1200時間。科目ごとにばらつきがあるとしても1500~6000時間、もしかするとそれ以上という膨大な時間を試験勉強に費やさなくてはなりません。
仮に1500時間としても、1500/365日=4.1時間/日の時間が必要です。働きながらの受験の場合、容易に確保できる時間ではありません。合格までにはかなりの時間を要する覚悟をしておくのが賢明でしょう。
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税理士試験の勉強方法については、実際に合格された方の声をもとに、他コラムでも各科目ごとに紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
税理士試験の前哨戦として、もしくは税理士試験と同じくらい役立つ資格を紹介します。
税理士試験を目指す人の中には、まず簿記検定を受験してからという方がとても多いです。ここで「簿記検定」というのは、社会人向けの「日商簿記検定」を差します。
いきなり税理士試験を目指すのはハードルが高いです。そのため、自分が会計作業に対して適性があるのかを判断するために簿記検定を受験するという方もいます。
また、簿記2級、1級で学ぶ内容は、税理士試験の簿記論と財務諸表論と一部重複している部分が多く、簿記検定のために学んだ内容を税理士試験でも活かせるというメリットも見逃せません。
簿記2級の勉強でおおよそ税理士試験の簿記論の半分ぐらいが学習できるといわれています。しかし、簿記検定と税理士試験では出題形態は大きく違うので、そこは注意してください。
公認会計士試験に合格すると、税理士の資格を得ることができます。しかし、税理士試験の合格していても公認会計士の試験の一部免除にしかなりません。
また、税理士試験と公認会計士試験との一番の違いは、やはり「科目合格制」です。税理士試験で一度合格した科目は死ぬまで有効で一科目ずつ取得することがでkる。対して公認会計士試験は基本的に全ての科目を一発クリアすることで合格を勝ち取れます。
そのため、税理士試験は働きながら勉強する人が多いですが、公認会計士試験は、特に学生のうちに2~3年の間試験勉強に専念して、公認会計士試験に挑みます。税理士と公認会計士。税務と監査は全然違う仕事です。希望だけでなく、個々の適性も含めて考える必要があります。
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税理士受験生は社会人の方が多いです。そのため、普段働く環境がどのような職場かによって試験の合否に大きく関わってきます。
一般事業会社よりも会計事務所の方が、税理士試験の受験生に対して理解があるケースが多いです。会計事務所の所長は自分も税理士試験を合格しているので、試験の大変さをよく知っています。そのため、税理士の受験生は会計事務所で働くケースが多くなります。
会計事務所は少人数で経営していることがほとんどなので、所長の方針によって就労環境が全然違います。ブラックもあれば超ホワイトもあるのです。
そのため、会計事務所に転職する際は、
・過度な残業時間が無いか
・税理士試験前の試験休暇は取得可能か
など、事務所が受験生を応援する体制があるのかしっかりと確認しましょう。
なお、科目合格者の場合、会計事務所への転職の際には即戦力とみなされ、非常に評価対象になります。しっかりとアピールしておきましょう。税理士試験合格前に会計事務所で働いても、税理士資格に必須の実務経験とみなすことができます。
税理士受験生は時短勤務でも良いので、会計事務所で働くことをおすすめします。科目合格の段階で、会計事務所など受験勉強に理解を示してくれる職場へ転職し、税理士登録に必要な実務経験を積みながら受験にチャレンジする方も多くいるのです。
税理士試験科目合格者におすすめの求人はこちら:科目合格者おすすめ求人の注目求人!
税理士試験に合格した後は、様々なキャリアが考えられます。
会計事務所、コンサルティングファーム、事業会社にて企業内税理士として働く、そして実務経験を経たのち独立するなどです。
これからの時代の税理士は、単なる税務申告や記帳代行などの単純作業では需要が減っていく反面、税理士の専門性を活かした、より専門的な税務や財務などのコンサルティング業務など、より高度な仕事が期待されています。
税理士試験に合格したからといって、勉強を止めるのではなく、試験合格後も貪欲に学んでさらなる専門性を身につけていくことが大事です。
税理士試験に合格された方のキャリアインタビューをご紹介します。
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また、HUPRO MAGAZINEでは税理士試験に関する記事を他にも多数掲載しています。本項と併せてぜひご覧ください。
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