大学院生のときに気象予報士と日商簿記1級に合格し、その後事業会社での経理財務職を経て、税理士法人トーマツに在籍し、税理士試験に合格。現在は、独立して自身の税理士事務所を開業し、不動産鑑定士の試験に合格するなど活躍の場を広げている井上幹康先生にHUPRO編集部がお話を聞いてきました。
―税理士として活躍しながら実は気象予報士の資格を持っていると伺ったのですが、どういう経緯で気象予報士の資格を取ることになったのですか?
実は最初に取得した士業の資格は気象予報士です。大学時代の前半は漠然と過ごしてしまい、大学3年生から始めた就活を通して、何か自分に強みをつけたいと思いました。当時理系の大学に通っていたので、いくつかあった候補の中から気象予報士を目指し、猛勉強の末資格を取得しました。
―なるほど、税理士とは全く関係ない資格でのスタートだったのですね。でも、なぜ気象予報士の資格を取ろうと思ったのですか?
不純な動機かもしれませんが、当時大学院生で、気象予報士ってなんかキャッチーだし就活の面接などでネタになるかなと思い、目指すことにしました。無事資格が取れて、確かに就活の場でも面白い話のネタ・学生時代に努力したエピソードにはなり、企業の面接官の方々にも名前を覚えてもらったりできたのですが、実際に気象予報士の知識をそのまま仕事で活かすとなるとかなり選択肢が限られてしまい、当時は直接活かせる機会は少なかったですね。結局、就活では気象予報関連の会社ではなく一般企業のSE職で内定をもらいました。
―SEとして内定決まっている中で税理士を目指したのですか?
今までのお話だと気象予報士試験やとSEの話で、税理士資格は全く関係ないと思うのですが、大学院2年の初め頃に内定をもらって卒業まで1年近くあった頃、たまたま知人が公認会計士試験の勉強をしていたのをきっかけに、社会人として決算書を読むだとか、何かしらで役に立つだろうなという軽い気持ちで簿記の勉強を始めました。そこで、簿記の勉強にのめり込み、半年間独学で勉強し日商簿記1級を取得し、これをきっかけに税理士を目指すことになりました。
―でも、内定先はSEのお仕事ですよね?
はい、内定をもらった企業ではSE職として働くことになっていたのですが、簿記の魅力に取り憑かれており、そのとき既に将来税理士として独立開業したい目標をもっていたので、「今実は税理士を目指していること」、「SEの部門ではなく経理財務の部署に配属して欲しいこと」などをその会社の人事担当者の方に伝えたところ、人事担当者の方、経理部長、社長のおかげで希望通り経理財務部に配属してもらえました。本来であれば、内定をいただいたSE職以外はあり得ないはずのところ、会社関係者の方々のおかげで税理士になるという目標に向けて大きく方向転換することができました。
―ちなみに簿記1級の次に、公認会計士試験ではなく、税理士試験を選んだのはなぜですか?
やはり社会人で働きながらの資格試験の勉強になるので、科目合格制度がある税理士試験の方が受けやすいと思い、また、税理士の方が独立開業している割合も大きく、税理士を目指すことにしました。
新卒で入った会社で上場企業経理マンとして経理財務をやりながら、税理士試験の勉強をして在職中に税理士試験3科目(簿記論、財務諸表論、法人税法)に合格しました。そして、将来税理士として独立開業するためにはより深い税務の実務経験を積む必要があると感じ、入社3年目で転職を決め、税理士法人トーマツ(現:デロイトトーマツ税理士法人)に入社しました。
―トーマツを選んだのはどのような経緯ですか?
当時、大手の税理士法人を中心にいくつか事務所を見ていたのですが、税理士法人トーマツが群馬の高崎に事務所を立ち上げるという話を聞きました。私がたまたま群馬県出身で地元だったというのもあり地域に馴染みを感じ、新規で事務所を立ち上げるというのは大変だろうけど、そこでしか経験できないものが得られると思い、また、将来自分が独立する際にも必ず役に立つと考え、税理士法人トーマツの高崎事務所に転職することにしました。
そして、トーマツに入ってから税理士試験の残り2科目(消費税法、事業税)に合格し、試験自体は合計4回目で、無事、税理士試験5科目全て合格することができました。税理士法人トーマツでの実務経験、先輩・上司からの教えが今の私の税理士としての柱になっています。
―会社勤めしながの受験勉強で普段意識していたことなどありますか?
勉強は必ず毎日するようにしていました。1日勉強しない日を作ると次の日も今日も勉強しなくても大丈夫だろうとなり、ズルズルいってしまうことがないように、風邪を引いた日も、仕事で帰宅が0時を過ぎた日も、どんな日でも1時間でいいから必ず勉強をするようにしていました。
―当時、予備校などは通っていましたか?
日商簿記1級と簿記論、財務諸表論は独学で勉強して合格しました。当時、働き出して間もなく、金銭的に厳しかったのと、税理士試験の最初の科目を独学で勉強して合格できれば自分にある程度適性があるという判断もできると思い、独学で頑張っていました。
―税理士試験で一番大変だったことはどんなことですか?
当然、色々ありますが、社会人として人生のライフイベントが重なる中で、税理士試験の勉強を何年も続けないといけないというのは大変だと思いました。
実は税理士試験3科目に合格したタイミングで今の妻と知り合い交際を始めたのですが、交際を始めた年の税理士試験(受験回数3回目のとき)では1科目も合格できませんでした。この時ばかりは恋愛と仕事と勉強の両立は難しいなと思いましたね。このままでダメだと思い、彼女と別れようとも思ったのですが、それは単に自分の実力不足という不合格の原因を単に彼女との恋愛が不合格の原因とすり替えているだけであり、「逃げている」に他ならないと思いました。そこで、覚悟を決めて、不合格の直後に結婚しようとプロポーズし、その代わり、翌年はデートなどの時間を減らして仕事と勉強に専念させてほしいと彼女に頼み、何とか翌年の試験で官報合格することができました。
中には子育てをしながらだったり、家庭と両立しながら税理士試験合格を目指す方も多いと思うので、そこは受験勉強だけに専念できる学生とは違った難しさがあると思いますね。もちろん。受験専念の方も精神的に相当なプレッシャーを抱えながら毎日勉強されていると思いますので専念だから楽ということは決してないでしょうが。
そして、トーマツ在籍中に税理士試験に官報合格し、税理士としての登録を果たしましたが、在籍6年目に、常々考えていた税理士として独立を決意し、トーマツを退職して自分の税理士事務所を開業しました。
―士業の強みはどんなことが挙げられますか?
資格取得によって独占業務を行うことができ、またその資格試験が難関になればなるほど、独占業務についての強みや価値があると感じます。あとは、資格を取得することで仕事の幅が広がると思いますね。
税理士で言うと、自分で独立するもできるし、企業内税理士として一般企業に勤めたり、もしくは専門のコンサルティングファームなどでも働くことができます。子育て中のママさんでも自宅で働くことができますし、自分含め周りの税理士の方たちを見ていても選択肢は様々あると思いますね。
―今後のビジョンを教えてください。
今後は税理士として活動の場を増やしていきたいですが、相続案件にて不動産を扱うことも多く、そこで今年に入り不動産鑑定士の資格を取りました。不動産(特に土地)は全く同じものが2つとないので、非常に個別性が強く、一部AIが台頭してきている業界で人間にしかできない仕事ではないかと考えたのも不動産鑑定士の資格を取ったひとつのきっかけでしたね。
まだ不動産鑑定士試験合格者という立ち位置で、今後実務修習等を通過し、最終的には不動産鑑定士の登録をするところを当面は目指して頑張っていこうと思います。不動産鑑定士登録後は、税務のフィールド(特に相続案件を扱う場面など)で幅広く活かしていきたいと思っていますし、不動産鑑定評価業務もやっていきたいと思っています。
また、自分自身の税理士試験や不動産鑑定士試験の受験経験を生かし、受験生と接点を持つ活動として、現在行なっている会計学ゼミ、受験生向けの記事執筆、受験相談を受けたり勉強のアドバイスをさせて頂く仕事なども今後継続していきたいと考えています。
―本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。
本日お話を聞かせていただいた井上幹康先生が開業する
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