税理士・公認会計士の仕事やキャリアに関する記事を掲載する HUPRO MAGAZINE で、専業主婦から税理士資格を取得し、現在開業税理士としてご活躍中の脇田弥輝先生に税理士の働き方の実態について執筆いただく連載企画を実施しております。
みなさま、初めまして!税理士の脇田弥輝(わきたみき)です。
一人で自宅で税理士事務所を開業しています。通常の税理士のお仕事のほか、大学院の非常勤講師や各種会計系の雑誌やサイトで執筆やセミナーなどもしています。…と自己紹介するたび、「私、すごい人みたい!?」(自分で言う)となんだか不思議な気持ちになります。
私はもともと、キャリア志向のない専業主婦だったので。
私は24歳で結婚し、新入社員として入社したシステム系の会社も退職して、専業主婦をしていました。社宅に住み、子どもが生まれ、このまま専業主婦として生きていくと思っていました。
でも、長男が1歳4か月を過ぎた頃、夜8時から朝まで寝るようになって、それまで夜中に何度も起こされていた環境から解放され、時間がいっぱいできました。夜8時から0時くらいまでの4時間、外に遊びに行くわけにもいかないし、TVもそんなに見る方じゃないし…、なんか暇だなぁ、資格の勉強とかしてみようかなってふと思ったのが税理士を目指すきっかけでした。
もちろん最初から税理士だなんて思ってなくて、もっと簡単に取れそうな資格に手を付けたりもしたのですが、特別楽しいとも思えず、のめり込むこともありませんでした。そんな時、「税理士は科目合格制で、育児や仕事と両立しながら取れるらしいよ」と聞いて、「いやいやいや…でも税理士って難しいでしょ。無理でしょ」と思いつつ、大手予備校のパンフレットを取り寄せて読んだところ、すごーーーく挑戦したい気持ちになりました。
そのパンフレットに載ってる人たちは、皆さん2、3年で合格していて(実は2、3年で受かる人なんてほんの一握りだということは知る由もなく)、それまで知っていた資格は数ヶ月で取れそうなものだったので「2、3年か~長いなぁ。でもそれだけ長く勉強したら税理士になれるのか、やってみたいな」と思いました。
2、3年したら子供も3、4歳。働き始めるのにいいかも。と、資格の大変さも仕事の大変さも育児との両立の苦労も、つまりは何も分からないままに、通信制で勉強して、税理士を目指すことにしました。
大金をはたいて税理士講座を申し込んだときは、「どうしよ~、本当に税理士になれるのかな?」とドキドキもしましたが、それ以上に「頑張ったら税理士になれるんだ」というワクワクの方がものすごく大きかったです。
最初は簿記論から始めました。もともと理系で数字は得意だったので、簿記はパズルのようで面白く、「簿記を考えた人、天才!!」と思いましたね。子どもが寝たらすぐに勉強。「育児以外にやるべきこと」があるのが嬉しくて楽しくて、早く子供を寝かせたくて、たくさん子供を遊ばせて昼寝させたり、夜も真っ暗にして自分もいったん一緒に寝て、ケータイのアラームで起きて勉強したり。
なんで独身の時に、いや、子供が生まれる前に「税理士になろう」と考えなかったのかなぁ、その時なら今より時間あったのに…と思ったこと何回もありましたが、時間の大切さは失ってみて初めて気づくのですね(ちょっと違う)。制限があるからこそ、時間をやりくりして工夫して勉強しました。
基本は通信でしたが、直前期だけは週末に教室に通うことにしました。家族も、本気な私を見て、応援してくれて、授業がない日も自習室に行かせてくれたり、GWには息子たち(途中で次男も出産)を遊びに連れてってくれたりしました。
途中で大学院免除のことを知り、「社会人入試?…私、社会人じゃないけど受けれるのかな?」というくらい無知でしたが、ダメ元で受験したら合格することができて、結局、簿記論・財務諸表論・消費税法・大学院2年、合わせて6年半くらいかけて、やっと税理士の資格を手に入れました。27歳の時に税理士になると決めた1児の母は、34歳2児の母となっていました。
受験生時代はほとんど仕事はしていませんでした。2人の子どもが小さかったのが主な理由です。知り合いの事務所で少しお手伝いさせていただいた期間はあったけれど、ほぼ実務経験なしのまま資格取得をしました。
でも税理士登録するためには、2年の実務経験が必要です。まずは個人事務所でパートで週3日(1日5時間)働き始めました。領収書の整理も、仕訳の入力も楽しかったです。いやもう、スカート履いてヒール履いて、一人で電車乗るだけでテンション上がりました。
いつもジーパン・スニーカーで子連れだったので。事務所のみんなでランチに行くのも楽しかったなぁー。その事務所には2年ほどいましたが、少し家から遠かったのと、小さな子供がいることを十分に理解していただいたことに甘えて、月次の入力がほとんどで、申告書の作成をしてみても途中で時間が来たら帰らせてもらったり…、今思えば「言われたことをやる」だけで、自分で掘り下げて考えたりが足りなかったなと思います。
そして、次男が幼稚園年長になるタイミングで、「家族の協力もあるし、もっと本気で働いてみたい」と、もう少し家から近い税理士法人の正社員に転職をしました。その税理士法人には3年半いて、その間に、申告書作成、税務相談、融資、事業計画、節税対策…などの税理士業務を一通り学ばせてもらいました。
女性が多く、子連れでも働きやすい環境でしたが、それでも繁忙期はそれなりに残業をし(義母に子供をお願いして)少しずつ、税理士としての力をつけていくことができました。途中、パート時代の時間と合わせて「実務経験2年」を満たした時に、税理士登録をしました。税理士となって、ずっとそこで働こうと思っていたのですが、様々なご縁やタイミングがあって、2016年5月、自宅を事務所として「脇田弥輝税理士事務所」を開業しました。
開業!とはいっても最初は顧客ゼロ。パソコンや名刺やハンコなども開業してから少しずつ揃えていき、家の作り付けの机の辺りを「事務所スペース」として改造したり、暇なので友達とランチを楽しんだり(笑)、忙しい先輩税理士のお手伝いをしたりと、開業した初年度はあまり仕事はありませんでした。
でも少しずつご紹介で顧問先が増えたし、出版(青色申告の本)をきっかけに、確定申告時期にはセミナーや執筆、取材のご依頼を頂くようになりました。初年度は課税所得0円でしたが(笑)、2年目にして正社員の頃より稼ぐ事ができ、3年目の今年はもっと増える予定です。
開業の良さは、なんといっても「時間の融通が効く」ことです。私の場合、自宅開業なので、よくも悪くも、土日も夜も必要であれば仕事をします。でも平日の昼に、ジムやネイルサロンに行ったり、支部活動のテニスや野球の試合に参加したりすることもあります。
それから、お客様に対しては、勤務時代以上に「自分のお客様」という気持ちが強く、こんな小さな税理士事務所の私にご依頼をいただいてるので、真摯に対応して、お客様とともに事業を成長させたいと常に強く思っています。と共に、セミナーや執筆などの活動も積極的にやっていきたいと考えています。
「税理士になる」ことが目標だった私は、今ではさらに別の目標があり、そうやって人はどこまでも満足しないのだと思いますが、まだまだ成長したいという42歳もなかなかいいのではないか、と思ったりしています。(また自分で言う。笑)
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