士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

独学で挑む税理士試験のメリットデメリット

税理士 井上幹康
独学で挑む税理士試験のメリットデメリット

税理士試験の勉強スタイルとして、多くの受験生が専門学校を活用していると思いますが、独学を検討している方もいると思います。私自身も税理士試験5科目のうち簿記論と財務諸表論は独学で合格しています。今回は、そんな私自身の実体験も踏まえて独学で挑む税理士試験のメリットデメリットについて解説していきます。

独学で挑む税理士試験のメリット

専門学校よりも学費が安い

まず、独学の最大のメリットは、専門学校を活用する場合に比べて学費が安く済むということが挙げられます。

専門学校を活用する場合の学費のイメージについて、TACや大原といった専門学校の初学者向けのコースの学費相場はおおむね以下の通りです(詳細は各専門学校HPをご確認ください)。

これに比べ、独学でやる場合、勉強する教材を調達するコストは上記の専門学校の学費の半分以下で済むと思います。実際に私自身、簿記論と財務諸表論を独学でやるにあたり各種様々な教材を調達しましたが、10万円もかかっていません。

様々な事情で金銭的に専門学校の学費を捻出できない方からすると学費が安く済む独学は魅力的だと思います。

自力で考え、調べ、解決する力がつく

独学のメリットというと、上記の専門学校に比べて学費が安く済むという点だけであとはデメリットの方が多い感覚をお持ちの方が多いと思いますが、それは違います。

独学の場合、わからない問題に直面した時にすぐに質問できる講師がいないため自力で考え、調べて解決していかないといけません。実際に私自身も簿記論と財務諸表論の独学の際にわからない問題に直面した際は、以下のような手段を駆使して自力で解決していました。

・企業会計基準委員会(ASBJ)のWebサイトをあたる
・書店をめぐり市販の専門書等をあたる
・図書館で古書をあたる
・大手監査法人の会計基準の解説記事(Web)をあたる
・合格者や専門学校講師のブログなどをあたる 等

このような自力で考え、調べ、解決する作業は一見すると時間の無駄で遠回りな作業であり独学のデメリットにも思える反面、実はこうした訓練が将来税理士となり実務をするうえで生きてきます

また、税理士試験対策の市販のテキストや問題集も私が受験生であった当時に比べて今は種類も豊富ですので、その点は独学にとって追い風になると思います。さらに、会計2科目(簿記論・財務諸表論)に関しては日商簿記検定や公認会計士試験の市販のテキスト・問題集も参考になるので独学にもあまり困らないと思います。

独学で挑む税理士試験のデメリット

スケジュール管理が難しい

独学のデメリットのうち大きなものの1つに、勉強のスケジュール管理が難しいという点が挙げられます。

専門学校を活用している場合、専門学校のカリキュラムをしっかり消化することで自然と勉強スケジュール管理がなされています。具体的に言えば、毎回の授業で習った論点を次回の授業までに確実に復習するというサイクルを回すことで、自然と勉強スケジュール管理ができるわけであり、自分で凝ったスケジュールを作る必要はほとんどありません。

私自身は、このデメリットを克服する方法として、毎月定期的に発売されている会計人コース(中央経済社)を購読して今月号の論点を次月までに復習するというサイクルで勉強してスケジュール管理を試みていました。

モチベーションの維持が難しい

もう1点、独学のデメリットのうち大きなものとして、自身のモチベーションの維持が難しいという点が挙げられます。

専門学校に通学されている場合、勉強のスランプに陥った時はすぐに講師に相談することができます。また、教室で自分と同じ目標を持った受験生に囲まれることで自分も頑張ろうという気持ちにもなります。私自身、税法科目は専門学校に通学していましたが、自分よりも一回り年上の方が一生懸命勉強している姿を見るだけで自分も頑張らないといけないなといい刺激をもらっていました。

このデメリットを克服する方法は人それぞれでしょうが、私自身はモチベーションが下がってきた時は「なぜ自分は税理士になりたいのか?」を自身に問い直したり、「こんな状態の自分ではお客様に頼ってもらえない。お客様はビジネスに人生をかけている。自分も税理士に人生賭けろよ!!」というふうに自分自身を鼓舞したりしていました。

改正情報へのキャッチアップが難しい

独学のデメリットとして、会計基準や税制の改正情報へのキャッチアップが難しいという点が挙げられます。

会計基準の改正は毎年行われるわけではないですが、税法科目は毎年税制改正が行われるため、最新の税制改正情報へのキャッチアップが必須となってきます。これも専門学校を活用していればキャッチアップ情報の提供を受けられますが、独学だと自力で改正情報にキャッチアップしていかないといけません。

会計基準の改正情報は企業会計基準委員会(ASBJ)のホームページで、税制改正の情報は財務省ホームページでそれぞれ確認できますが、見慣れていないと相当の時間を費やすことになります。

ただし、上記にも記載のとおり、会計基準の改正は税制改正に比べて頻度が少ないので、会計2科目(簿記論・財務諸表論)であれば、自力での改正情報のキャッチアップは可能であると思いますし、私自身もやっていました。

自分のレベル(順位)の把握が難しい

専門学校を活用している方は定期的に答練を受けて自分のレベル(順位)の確認を行うことができますが、独学ではこれができません。

このデメリットを克服する方法としては、例えば、直前期(5月以降)に専門学校が行う模試パック(答練パック)等の講座だけでも受験したり、又は、6~7月に専門学校が行う全国模試だけでも受験したりする等が考えられます。実際に私自身も簿記論・財務諸表論の独学時には専門学校の全国模試は受験していました。

おわりに

あくまでも私見ですが、以上のような独学のメリットデメリットを勘案すると、やはり会計2科目(簿記論・財務諸表論)は独学でも受かる方は受かるが、税法科目は実務経験がある方等でないと難しいと思います。

ただし、中には5科目全て独学で合格されている方もいますし、逆に専門学校を活用しても受からない方はいますので勉強スタイルに絶対はありません

結局は本人次第ですが、上記のような独学のメリットデメリット、ご自身の性格やライフスタイル等をよく勘案して独学でやるのか専門学校を活用するのか意思決定されると良いと思います。この記事を読まれた受験生にとって何か1つでも得るものがあれば幸いです。

関連記事:税理士試験の概要について詳しく解説!受験資格や科目合格制など受験生必見

この記事を書いたライター

大学在学中に気象予報士試験に独学一発合格。社会人として働きながら4年で税理士試験官報合格。開業税理士として税務に従事しながら不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験や不動産鑑定士試験受験生向けの相談サービスや会計学ゼミも開催。
カテゴリ:転職・業界動向

おすすめの記事