業務上または通勤時の災害による負傷、疾病、障害、死亡等に対して保証される「労災保険」(労災)。1日だけの通院・1日だけの休日でも労災は適用可能なのでしょうか?本記事では、労災の仕組みと、ケースごとの支給要件について解説します。
例えば、通勤中に転んで打撲、1回病院にかかって検査したけれど、骨に異常もないのでそのまま様子を見ましょうとなったり、あるいは、仕事を休むほどではないので、週に1日通院で経過観察を行いましょうとなったり、といったようなケースはどうなるのでしょうか。
通院費も労災の療養 (補償) 給付のうちのひとつですので、以下の要件を満たしている場合、支給されます。
①業務上の事由又は通勤による負傷や疾病による療養のため
②労働することができないため
③賃金をうけていない
という要件を満たしている場合であれば、通院日1日だけの支給もできます。
さらに、以下の要件を満たす場合は通院に要した費用の交通費も支給されます。直接、労働基準監督署に請求書を提出してください。時効は2年間です。
① 労働者の居住地又は勤務地から、原則として片道2㎞以上の通院であること
② 同一市町村内の適切な医療機関へ通院した場合であること(同一市町村内に適切な医療
機関がない場合等にも支給が認められることがあります。)
出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署リーフレット:請求(申請)のできる保険給付等
通院で労災補償を受ける場合、労災指定病院以外にかかると、健康保険が使えないので一時的に10割負担になります。
詳しくは以下の記事をご確認ください。
・労災で指定外の病院にかかると10割負担!
通院については、1日だけの通院だとしても療養給付の対象となることがわかりました。それでは、1日だけ休んだ休業の場合はどうなるのでしょうか?
以下、いくつかのパターンに分けてみてみましょう。
労災保険としての休業補償は休業第4日目からになります。休業初日から3日までは「待機期間」といい、支給の対象外となります。
この期間については、災害の種類によって取り扱いが異なるので注意が必要です。
もし、この休業が業務災害の場合は、労働基準法に基づいて「事業主」に休業補償を行う義務があります。つまり会社に対して請求することができるのです。
通勤災害の場合は、待機期間について事業主には休業補償の義務がありません。
有給休暇か欠勤のいずれかの扱いとして処理をすることになるでしょう。
通勤災害については以下の記事でも解説しています。併せてぜひご一読ください。
・労災の通勤災害について詳しく説明します
業務災害の場合についても、1日だけなら有給休暇を使いたいと本人が希望すれば、労災の休業補償でなく有給休暇への振り替えも可能です。詳しくは以下の記事をご確認ください。
稀ではありますが、例えば、退職日当日などに災害にあってしまったようなケースです。
退職日までが待機期間となってしまうような場合も該当します。
この場合、待機期間を過ぎても休業が必要とみなされるようであれば、退職後であっても、通常の労災の給付対象となります。
労災保険法第12条の5に「保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない」と規定されているためです。
また、その傷病により労働ができないという休業補償給付の支給事由を満たす限り、休業補償給付は支給されます。
したがって、業務災害の場合は待機期間に該当しますので、元雇用主は退職後にもかかる3日分の休業補償を行う必要があります。補償額は平均賃金の60%以上です。
「1日だけ」といっても、通院なのか、休業なのか、また、休業の場合も通勤災害なのか、業務災害なのかによって対応が異なることがお分かりいただけたでしょうか。労災事故については、重大な災害に目がいきがちですが、実は身近なところでも起こっているものです。
労災の時効はその内容にもよりますが、2年もしくは5年となっています。
「これは労災なのかどうか?」「あの時のケガはよく考えると労災だったかも」と悩むようなことがあれば、手続等も含め、専門家である社会保険労務士に気軽に相談してみましょう。