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公認会計士の最新の転職動向は?売り手市場は続くか?

HUPRO 編集部
公認会計士の最新の転職動向は?売り手市場は続くか?

公認会計士の転職市場は、2010年頃は公認会計士試験合格者が増加したために供給過剰で買い手市場でした。しかし数年ほど前から需給バランスが落ち着きはじめ、現在はやや売り手優位の傾向が続いています。
公認会計士の転職先は監査法人や税理士法人のほか、コンサルティングファームや金融機関、さらに事業会社などさまざまです。これからの公認会計士には、監査能力だけでなく、コンサルティング能力などが求められます。若手の公認会計士はキャリア計画を立て、それに基づいて実践的なスキルを身に着けていくことが重要です。
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公認会計士の転職動向その1:概況

まずは公認会計士の転職動向の概要を、供給要因と需要要因の両サイドからみてみましょう。

供給は横ばい~微増傾向

公認会計士試験は、合格者の増加を目的として2006年に制度が大きく変わりました。その結果、2007年に合格者数が4041人(合格率19.3%)と大幅に増加し、さらに2010年には受験者数が25,648人にまで膨らみました。

しかし、これは明らかに公認会計士の供給過剰状態を招いてしまい、就職率は急激に悪化しました。この状況を受けて公認会計士試験の合格者数は低下していき、近年では受験者数は1万人、合格者数は1000人強(合格率は10%強)で、ほぼ横ばい~微増の状況が続いています。

需要は増加傾向

一般の有効求人倍率を見てみますと、2008年にリーマンショックの影響で大きな冷えこみがありました。しかし、景気の回復に伴って、2009年から2016年までは7年連続で上昇しています。

経済のグローバル化による企業の海外進出、会計に関する基準の導入や法制度や見直し、M&A案件やコンサルティングニーズの増加などがあり、公認会計士に対する需要は増加傾向にあります。

結論としては売り手市場

以上のような供給と需要の関係から判断しますと、供給を上回る需要があるため、公認会計士の転職市場は売り手優位の傾向にあるとみられます。

今後は、公認会計士を必要とする場面が増える一方で、公認会計士試験合格者が大幅に増える可能性は低いです。そのため、公認会計士の売り手市場は少なくとも当面は続いていく可能性が高いでしょう。

公認会計士の転職動向その2:転職先について

次に、公認会計士の代表的な転職先4つについて、それぞれ動向などをみていきましょう。

監査法人

JSOXの制度化や新会計基準の導入など大きな変化があり、さらに企業活動のグローバル化や組織形態の複雑化などを受け、監査法人は人手不足の傾向があります。公認会計士へのニーズは高い状態が続いています。

このような売り手市場の中、ビッグ4をはじめとする大手監査法人の求人数も増えています。新興市場の企業を顧客に持つことが多い中堅監査法人では、比較的若い人材を求める傾向があります。

会計事務所(税理士法人)

会計事務所の業務は会計ではなく税務が中心であり、顧客には大企業よりは中小・中堅企業が多めです。税務経験のある公認会計士はそれほど多くなく、また、あえて税理士でなくて公認会計士を採用しようという会計事務所もあまり多くはありません。

M&Aや企業再生などに伴う財務デューデリなどでは監査経験を生かせます。もともとの会計スキルに加えて税務を身につけ、将来独立しようと考えている場合には、会計事務所で税務経験を積むことが近道でしょう。しかし、独立前提の転職はかんたんには容認されない可能性が高いです。

コンサルティング

公認会計士は経理・財務・企業法務などの分野に精通しており、監査業務の中で監査対象の企業の経営・財務情報に触れる場面が多くなります。公認会計士に求められる業務では、監査業務よりもコンサルティング業の割合が次第に大きくなってきました。

コンサルティングファームのようなところもあれば、監査法人の中にFAS(Financial Advisory Service)専門の関連会社があるようなところもあります。また、金融系のシンクタンク等でも公認会計士の採用ニーズがあります。

M&Aや組織再編や企業再生のコンサルティング、制度会計系やIT・戦略系のコンサルティング、海外進出のコンサルティングなど、さまざまな場面で公認会計士のニーズがあります。財務デューデリジェンス業務は監査業務との共通点が多く、比較的転職しやすいでしょう。

事業会社

J-SOXの導入、IFRSへの対応、海外進出や海外連結対応などを契機に、一般の事業会社へ転職する公認会計士が増えてきました。

大手上場企業だけでなく、IPOを目指す成長企業(ベンチャー企業)でも採用意欲が旺盛になっています。経理・財務のマネジメントにあたるポジションや、CFO(Chief Financial Officer)の候補として期待されています。

組織内会計士では、経験が豊富でコンサルティングスキルが高く、高度なコミュニケーション能力も備えた公認会計士が転職しやすい傾向があります。

転職市場で市場価値の高い公認会計士とは

リーマンショックによる需要減や、公認会計士試験合格者増加による供給増はありましたが、現在の公認会計士の転職市場は売り手市場の状態が続いています。

ただし、単に公認会計士であるというだけでは転職するのが難しいところがあります。何らかの得意分野があるなどの強みを持ち、転職市場での市場価値を高めておく必要があるのです。

注目したいのがFASです。これは、財務に関する専門的な助言およびコンサルティングを行う業務で、専門分野の知識に加えて思考力や洞察力などが求められる分野です。アドバイザリー業務についてはこちらの記事、FASについてはこちらの記事を、それぞれご覧ください。

AI(人工知能)の進歩や普及などの背景もあり、このようなアドバイスやコンサルティング業務が、公認会計士の業務としてますます重みを増していくとみられています。

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まとめ

公認会計士の転職動向についてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。以下がこの記事のまとめになります。

・現在の公認会計士の転職は売り手市場である
・監査法人、会計事務所、コンサルティング、事業会社など、さまざまな転職先の選択肢がある
・これからの時代はFASなどのコンサルティング能力が重要になる

売り手市場であることに油断せず、中長期的なキャリアプランに基づいた実践的なスキルを身に着けていくことが重要です。

この記事を書いたライター

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