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公認会計士にとってのアドバイザリー業務とは?

HUPRO 編集部
公認会計士にとってのアドバイザリー業務とは?

はじめに

監査法人に勤務されている会計士の方々にとって、アドバイザリー業務をしている会社は転職先として有力な選択肢の一つと言えるのではないでしょうか。報酬水準も比較的高いため、監査業務を一通り経験し、次のステップとしてアドバイザリー業務に携わりたいという方々もいらっしゃるでしょう。
この記事では適宜、監査業務との比較をしつつ、アドバイザリー業務の業務内容や公認会計士としてアドバイザリー業務を経験するメリットなどについてを紹介していきたいと思います。

アドバイザリー業務とは?

(1)アドバイザリー業務について

アドバイザリー業務とは端的に言うと、企業や公共機関等の顧客に対して自身の専門知識やノウハウを活用して助言や指導等のサービスを提供する業務となります。アドバイザリー業務は法務、税務、経営、IT等々の様々な分野で、様々な会社がサービスを提供していますが、公認会計士の転職先としてはファイナンシャル・アドバイザリー・サービス(FAS)の分野に属している会社が想定されることが多いのではないでしょうか。FAS会社はM&A業務、事業再生、バリュエーション、不正調査等のサービスを提供しており、会計や財務面の専門的な知識が必要とされるサービスを提供しています。BIG4と提携している日本国内の大手監査法人はどの監査法人も系列のFAS会社を有しており、公認会計士に人気の転職先となっています。

(2)監査業務とアドバイザリー業務で求められる資質の違いについて

筆者の私見にはなりますが、アドバイザリー業務は自身の専門知識やノウハウを売り物として助言や指導等のサービスを提供するという性質から、監査業務と比較して深度のある専門知識や、顧客のニーズ・要望に応えるための対応能力が求められるように感じます。監査業務においては、実施される監査手続は監査基準に従って実施されるため、ある程度定型化されているという面があります。そのため、専門知識をフルに駆使して手続きを実施する場面や、顧客からのニーズ・要望に対する対応能力が問われる場面はそれほど多くはないように見受けられます。
一方で、アドバイザリー業務は顧客のニーズ・要望によって提供するサービス内容や必要となる手続きも変わってきます。単純に会計知識を持っていれば良いというわけではなく、顧客が属する産業の動向、規制等々に関する知識が問われる場面もあるでしょうし、顧客が抱えている潜在的な問題を発見するための能力、さらにはその問題を解決するための能力が求められる場面もあるかと思います。
ご自身の専門知識や監査法人内で培った経験をフルに活用してチャレンジングな仕事がしたいと思われている方々にとっては、FAS会社を転職先の選択肢として考えられるのも良いかと思います。

アドバイザリー業務の種類と特徴

FAS会社ではM&A業務、事業再生、バリュエーション、不正調査等々のサービスを提供しています。ここでは、その中でも公認会計士の方々が従事する可能性が高い代表的なアドバイザリー業務の種類と特徴について簡単にご紹介したいと思います。

(1) M&A業務

一般的にM&Aは戦略の策定、相手先の選定、デューデリジェンス・取引の実行、クロ
―ジングというプロセスから構成されていますが、FAS会社は上記のM&A業務の各プロセスにおいて顧客に以下のような支援や助言等のサービスを提供します。
(*他社を買収する場合を想定します。)

① 戦略の策定

M&Aを企業が自社の事業戦略や経営目標とどう結びつけるのかといった点が重要となります。この段階では、企業が事業戦略や経営目標に照らして実際にM&Aを実行するかどうかという意思決定をする際の助言等をします。

② 相手先の選定

この段階では買収先とする企業を選定しますが、買収先とする企業のスクリーニングの支援などをします。また、買収先企業との仲介もします。

③ デューデリジェンス・取引の実行

この段階では買収先企業の税務、法務、財務等の各種のデューデリジェンスが実施されます。また、デューデリジェンスで集められた情報をもとに条件交渉が行われます。デューデリジェンスを実施するのは弁護士事務所や会計事務所になりますが、予定通りに案件が進行しているかのマネジメントはFAS会社がします。また、買収先企業との条件交渉のサポートも行います。

④ クロージング

企業間で契約書が交わされ、株式の譲渡が行われます。クロージングの際には買収の条件を確認するための各種の書類の準備が必要ですし、譲渡価額の調整が行われることもあります。FAS会社は上記の書類の準備や、価額調整といった作業のサポートを行います。

(2)事業再生

事業再生で業績が不振に陥っている会社の事業計画や再生計画の策定の支援を行います。
加えて金融機関などの債権者との交渉もFAS会社がサポートします。
 また、企業が法的整理や私的整理を実施する場合も同様に財産評定、再生計画の策定、債権者交渉等の各段階でFAS会社が支援をします。

(3)バリュエーション業務

 バリュエーション業務は企業の株式や事業、金融商品、無形資産や有形資産といったものの価値を算定する業務になります。バリュエーション業務が提供される場面としては、M&Aにおいて企業の株式や事業の価値を算定する際や、企業が新たに株式や社債を発行する場合にその価格を決定する際などがあります。

公認会計士としてアドバイザリー業務を経験するメリット

公認会計士としてアドバイザリー業務を経験するメリットは以下のようなものが考えられるのではないでしょうか。

(1) 独立開業をしたい場合に役立つ

先述しましたが、アドバイザリー業務は自身の専門知識やノウハウに基づいて助言や指導等のサービスを提供するという性質から、深度のある専門知識や、顧客のニーズ・要望に応えるための対応能力が求められます。アドバイザリー業務を通じてこういった知識・能力を身につけると、監査業務しか経験していない場合と比較して、独立開業したい場合に自身が提供できる業務の幅が広がるといった面が期待できます。

(2) 成長機会が多い

FAS会社は成長意欲が高い人を求める傾向にあり、実際に成長意欲が高い方々が多く所属しています。関わる案件によっては監査業務と比較して業務量も多く、残業が長時間に及ぶこともありますが、周囲にプロ意識が高い方々が多い環境で、M&A業務や事業再生等のチャレンジングな業務に携われるので、自身が成長する機会が多くあります。

最後に

監査法人において3年~5年も勤めていると監査業務を一通り経験できるかと思います。加えて、監査チームの責任者や責任者に近い立場も経験していれば、顧客とのリレーションの築き方や、ニーズ・要望への対応方法も心得ているのではないでしょうか。監査業務を通して得た経験や知識を生かして、クライアントに対して価値あるサービスを提供したいという思いが強い方には、アドバイザリー業務はおすすめかと思います。

この記事を書いたライター

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