労務に転職したい方や労務の仕事でキャリアアップをしたい方にとって、資格の取得は業務の幅を広げキャリアアップの大きな武器となります。さらに、試験勉強の過程で身につけた実務や法律などの知識は実際の業務にも活かせます。今回は業界特化エージェントとして特におすすめの労務の資格・検定を資格を解説します。
前提として、労務とは企業のバックオフィスで従業員に必要なお金や書類、数字に関する事務手続きや管理をする仕事です。業務内容は企業によって異なりますが、主には給与計算や勤怠の管理、社会保険の手続きなどが挙げられます。
基本的に企業の労務部門で働く中で特別な資格は不要です。
ただ、労務の仕事の中には社会保険や雇用保険の手続きなど資格がないとできないものもあります。
上述の通り、労務の仕事をするうえで特に必須の資格はありませんが、資格を取得するメリットももちろんあります。
資格が必要ない業務についても、税金や労働関係の法律などの専門的な知識が求められます。ひとえに労務といっても業務は幅広いため、多岐にわたる知識やスキルが必要なのです。資格取得のための勉強の過程で広範な知識を学ぶことができれば、適切な業務遂行や効率化にもつなげることができるでしょう。
資格を取得し、業務に関する専門的な知識やスキルを積極的に身につける姿勢は、社内で高く評価されます。積極性や自発性が評価されることで、昇進や昇給も期待できるでしょう。また企業によっては、資格手当などで年収アップにつなげることもできます。
人事労務系に転職する際には、履歴書に取得した資格を書くことでアピールすることができます。自分の経験や強みを可視化することができ、また業務に役立つ能力の証明にもなるため、転職を有利に進めることができるでしょう。
また人事系の転職市場は経験者が有利なことが多いですが、未経験でもこうした資格を取得することで、ポテンシャルや熱意を見込まれて転職が成功する可能性もあります。
ここからは、労務の仕事を行う上でおすすめの資格・検定を紹介していきます。
資格 | 特徴 | 合格率 | 試験頻度 | 受験料 |
---|---|---|---|---|
社会保険労務士 | 労務関係で唯一の国家資格 独占業務あり |
6~7% | 毎年8月の第4日曜日 | 15,000円 |
衛生管理者 | 労働関係のスペシャリスト ニーズが高い |
第一種:46% 第二種:49.6% |
毎月1回 | 6,800円 |
メンタルヘルス・マネジメント検定 | 役職別にレベル分けされた検定 | Ⅲ種:71.9% Ⅱ種:56.5% Ⅰ種:20.5% |
Ⅰ種は年1回 Ⅱ・Ⅲ種は年2回 |
Ⅰ種:11,550円 Ⅱ種:7,480円 Ⅲ種:5,280円 |
産業カウンセラー | 労務担当者も多く取得する資格 | 学科試験:68.8% 実技試験:62.5% |
年2回 | 受講料352,000円 |
労務管理士 | 社労士取得のためのステップ 取得方法が様々 |
非公開 | 非公開 | 8,000~20,000円 |
ビジネスキャリア検定 | 事務系職種のほぼ全域を網羅 | 1級:13% 2級:41% 3級:54% |
年2回 | 1級,:12,100円 2級:8,800円 3級:7,920円 |
個人情報保護士 | ニーズが高い個人情報のスペシャリスト 取得ハードルが低い |
35% | 年4回 | 11,000円 |
年金アドバイザー2級 | 年金相談のスペシャリスト | 6~7% | 2・4級:年1回 3級:年2回 |
2級:8,250円 3級:5,500円 4級:4,950円 |
給与計算能力実務検定 | 直接業務と結びつく給与計算のプロ | 2級:60〜70% 1級:40〜50% |
2:年2回 1級:年1回 |
2級:8,000円 1級:10,000円 |
MOS | PCスキルの証明 約20時間で取得可能 |
スペシャリスト:約80% エキスパート:約60% |
年5回 | 1科目10,780円〜 |
社会保険労務士(社労士)は、労務関係で唯一の国家資格であり、労務・社会保険・人事のスペシャリストです。社会保険や年金、雇用保険などの書類の作成や労使間のトラブル相談など、社労士の独占業務は少なくなく、労務に関する幅広い業務を行うことができます。
社労士になるためには、試験に合格して登録する必要があります。
受験には実務経験や学歴などの制限があるうえに、合格率3~7%と難易度は非常に高いです。しかし、社労士事務所をはじめとして、有資格者限定の求人も多く存在し、資格を活かして独立することも可能なため、将来的に独立起業や転職を考える際にも有利になる資格です。
《参照記事》
衛生管理者は、労働安全衛生法を基にした国家資格であり、従業員の労働環境の管理や健康管理、また労働災害の防止などを主に行います。50人以上の従業員がいる事業者は衛生管理者を一人以上置くことが義務付けられているため、ニーズの高い資格であるといえるでしょう。
全ての業種に従事できる第一種と、電気やガスなど特定の業種に従事できる第二種に分かれています。学歴や実務経験など受験資格が設けられていますが、第一・二種どちらも合格率40~50%と比較的高いため、キャリアアップや年収アップのために取得するのもよいでしょう。
メンタルヘルス・マネジメント検定は、職場におけるメンタルヘルスケアの重要性を理解し、適切な対処方法や予防策を学んだことを認定する検定です。
資格には、一般社員向けのⅢ種から管理職向けのⅡ種、経営幹部や人事労務管理スタッフ向けのⅠ種の3つに分かれており、それぞれ試験が異なります。自分自身のメンタルヘルス対策を問うⅢ種から、管理職としてのメンタルヘルスの知識を問うⅡ種、また社内のメンタルヘルス対策を立案するための知識を問うⅢ種となっています。いずれも受験資格はありませんが、Ⅰ種は合格率約20%と難易度は高くなっております。
産業カウンセラーは、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する民間の資格であり、職場での悩みやメンタルヘルスのケア、またキャリア開発支援を主に行います。心理カウンセラー以外の人事労務担当者も多く取得している資格で、企業の産業カウンセラーとしての就職も目指すことができます。
講座の修了や関連分野での修士取得などの受験資格があり、試験は学科と実技に分かれています。合格率は約60%と比較的取得しやすいといえるでしょう。
労働基準法や労務管理に関する専門知識を証明する資格であり、従業員の勤務状況全般を管理する役割を主に担います。上述の国家資格である社会保険労務士と被る内容も多く、社会保険労務士を目指す際のステップアップとして活用する人も多いです。
20歳以上であればだれでも受験できます。取得方法も公開認定講座や通信講座、書類審査、Web資格認定講座と4つ用意されており、取得の難易度は比較的低いといえるでしょう。
《参照記事》
ビジネスに必要とされる知識を幅広く学べる検定です。その試験分野は8分野43の試験に及び、労務だけでなく、人事や人材開発などの分野も存在しています。事務系職種のほぼ全域を網羅しており、その中から労務管理など自分の職種を選択し受験します。
1級から3級までのランクに分けられており、1級は実務経験10年以上、2級は5年以上、3級は3年以上のスキルが目安です。受験資格はなく、誰でも受験することができます。
《参照記事》
個人情報保護士とは、個人情報保護に関する高い見識と専門知識を持っていることを証明する資格です。労務の仕事をするうえでは従業員の給料明細やマイナンバーカード番号など個人情報を取り扱うことが非常に多く、正しい知識を習得しているスペシャリストはニーズが高いといえます。
個人情報保護法の歴史や各種認定制度を問う試験に合格する必要があります。合格率は約37%と難易度はやや高めですが、試験は年4回あり、オンラインライブ方式の受験もできるため、取得に対するハードルは低いといえるでしょう。
年金アドバイザーは、年金相談に応じる際に必要な知識や能力を証明する資格です。2~4級までレベルが分かれていますが、労務の仕事をするにあたっては年金や公的保険について研修講師レベルの知識が身につく2級を目指すことをおすすめします。
受験資格はなく誰でも受けられる試験です。最難関の2級も合格率約20%と、他の労務関連の資格よりは難易度は高くないといえるでしょう。
給与計算能力実務検定とは、給与計算業務に関する知識と能力を測る検定試験です。労務の仕事をするうえでは直接実務に結び付くため、資格を取得することで客観的に自身のスキルを証明でき、人事労務業務のプロとしてプラス評価を得ることができるでしょう。
受験資格はなく誰でも受験することができます。レベルは1級と2級で分かれており、2級は基本的な給与計算ができ、明細を作ることができるレベルで、1級は給与計算に関するすべての業務に精通しているレベルです。1級でも合格率は40~50%と比較的取得しやすい資格であるといえるでしょう。
《参照記事》
MOSとは、マイクロソフトオフィスのWordやExcel、PowerPointなどのスキルを証明する資格です。労務の仕事ではPCスキルが必要不可欠であるため、こうしたPCスキルを証明する資格を取ることは自分の強みにつながるでしょう。
試験はソフトウェアごとに行われ、またWordとExcelなどの場合にはスペシャリストとエキスパートにレベルが分かれます。普段の業務でこれらのソフトを使用している方であれば、20時間程度の勉強で合格水準に達することができるといわれています。
ここまで、労務関連の資格をご紹介してきましたが、取得すべき資格を選ぶ際には自身のキャリアプランをもとに選ぶ必要があります。
労務系の職場に転職したいのであればその勤め先で求められるスキルをもとに選んだり、また現在の勤め先でキャリアアップを目指すのであれば今の業務に役に立つか、また年収アップにつながるかなどを考えて資格を選択することが重要です。
ここでは、労務に転職したい方におすすめの資格を3つご紹介します。自身の目指す方向性に合わせてご参考になさってください。
上述の通り、WordやExcelなどのソフトを特に多く使う労務の仕事においては、MOSの取得を通じて習熟度を高めておくと転職の面接でも即戦力として評価してもらえるでしょう。また、日常的にソフトを利用している人であれば20時間程度の勉強時間で取得することができるため、取得の難易度も低く、働きながら転職を準備する方におすすめです。
国家資格である社会保険労務士は難易度こそ高いものの、独占業務も多く幅広い労務の仕事で活躍することができます。資格取得者も少ないため、その希少性から転職を有利に進めることができるでしょう。また社会保険労務士は独立開業することもできるため、その活かし方も豊富であり将来性のある国家資格としておすすめです。
《参照記事》
ここでは、労務としてさらにキャリアアップしたい方におすすめの資格を3つご紹介します。自身の目指す方向性に合わせてご参考になさってください。
衛生管理者は国家資格でありながら合格率40~50%であり勉強時間も100時間ほどと、働きながらでも取得を目指しやすい資格です。専門知識を持つことで職場内での評価が高まり、キャリアアップにつなげることができるでしょう。また50人以上の従業員がいる事業者は衛生管理者1人以上置くことが義務付けられているなど事業者側の需要もあるため、資格手当などを得られる場合もあります。
近年、非常に多くの企業の関心を集めているメンタルヘルスに関する検定であるメンタルヘルス・マネジメント検定を取得することでもキャリアアップが望めるでしょう。業界を問わず心の健康が重要視される中、自身のメンタルヘルスだけでなく、チーム全体をマネジメントできるスキルは組織の生産性や定着率をも向上させ、人事評価においても高く評価されるでしょう。
労務として働きながらさらなるキャリアアップを目指すのであれば、労務管理士もおすすめです。労務管理に関する3年以上の実務経験がある場合には、書類審査による資格取得ができ、またそれを満たさなくても所定の講座を受講することで比較的容易に取得することができます。労務管理士についても、企業によっては資格手当が支給されることもあるでしょう。
労務への転職やキャリアアップを考えている場合には、上述の資格だけでなく実務の経験やスキルなども必要です。ここからは労務領域で評価されるスキルをご紹介します。
労務の仕事は、企業の従業員をマネジメントする重要な役割を担っています。そのため、従業員を分析する観察力やメンタルケア、また自主性を引き出すためのコーチングスキルも必要となります。一人ひとりの従業員と向き合い、適切なコミュニケーションをとる能力は労務担当者の必須のスキルといえるでしょう。
労務の仕事では、業務を正確に行うことが求められます。1円のミスも許されない給与計算や、期限が決まっている保険料の納付、年末調整などを行ううえで、日々の業務を正確かつ確実に行う能力が必要です。
労務の仕事を行う上では、従業員の給与額やマイナンバーカード番号などの個人情報を扱う機会が多いため、情報セキュリティの知識が求められます。
株式会社ヒュープロでは、労務管理部門に特化した転職エージェントサービス「ヒュープロ」を提供しております。
ここでは、ヒュープロで取り扱っている労務資格を活かせる一部の求人をご紹介します。
グループ各社の勤怠/給与や各種人事企画を担っています。
・規程作成·改定、導入支援
・グループ会社各社の規程の改定や新規程の導入支援
・制度構築協定書作成
・通法対応
・労務相談
各社からの労務相談対応(解決策の提案)
・事業会社との横断企画推進
安全衛生管理、助成金申請、障がい者雇用管理、従業員代表管理
・必須:人事·総務2〜3年以上/給与計算+社会保険手続き:2年以上
・歓迎:衛生管理者/給与計算検定2級
400〜550万円
労務に関わる業務全般、及びその他付帯する業務全般
(変更の範囲:会社の定める全ての業務への配置転換あり ※出向を含む)
・給与計算を含む労務業務全般
・必須:給与計算事務の経験(3年以上)
・歓迎:社会保険労務士/第二種衛生管理者/給与計算能力検定(2級以上)
400〜600万円
結論から申し上げますと、未経験で労務に転職することは可能です。ただ決して簡単ではないといえるでしょう。
上述の通り、労務に限らず人材開発や採用などといった人事の職種は、転職サイトの求人でも経験者であることが応募条件となっていることが多く、未経験者歓迎となっている求人は少ないというのが現実です。
しかしながら、若い世代であれば、「第二新卒」として採用されるケースもあります。また、人事の仕事は未経験だったとしても、今回ご紹介した労務関連の資格を取得したり、取得を考えていることを伝えることで、意欲の高さがアピールでき、ポテンシャル採用される可能性もあります。
さらに、未経験であっても採用担当者が納得できる志望動機を作成したり、労務で活かせる前職の経験を探し出すなど選考対策をしっかりすることで転職成功の可能性を高めることができるでしょう。
《参照記事》
今回の記事では労務に関連する資格を紹介しました。労務の仕事を行う上で資格は必ずしも必要ではありませんが、専門的で需要の高い資格であるため、労務への転職や現職でのキャリアアップを目指すのであれば必ず評価される資格であるといえます。自身のキャリアプランに合わせて取得する資格を選択することが重要です。
また、こうした労務の資格を活かして転職をする際にはぜひ士業・管理部門特化の転職エージェントであるヒュープロをご利用ください。
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