どの企業でもなくてはならない仕事で認知度が高く、転職や就職の市場においても人気の職種の一つである経理職。そんな経理職になるには、どのようなスキルや資格を持っておくべきなのでしょうか?また、学歴や卒業した学部は採用の可否にかかわるのでしょうか?本記事では、そんな経理を目指す方のギモンを解消します!
経理職を目指すにあたり、まずはそもそも経理とは何なのか、企業においてどんな役割を果たしているのかについて知っておきましょう。
経理の仕事は、簡単に言ってしまうと会社のお金全般の管理をすること。もう少し具体的に表すと、入出金を行いその記録を付けること、そして税金の計算をしたり決算書を作成したりすることです。
前者は、取引先にお金を支払う・仕訳を作成する・請求書を発行するなどがあげられます。後者は、納税する法人税額を算出する・貸借対照表を作成する・固定資産を管理するなどが該当します。
経理はどの企業でも必要な業務です。それは、経理が企業活動において非常に重要な役割を果たすからです。具体的にどのような役割を果たしているのか、三つの対象に分けて解説します。
経理は会社の意思決定をするために重要な役割を果たします。なぜなら、経理が把握している会社の利益状況や資産の情報が、今後の経営方針を決める重要な要素だからです。これらの情報が正確でないと現状にふさわしくない意思決定がされてしまう可能性があるので、経理が会社に与える影響や役割は大きいといえます。
経理職が作成する財務諸表などの会社の経営状況を示した書類は、会社の所有者である株主に対して企業活動の成果や状況を報告するために重要な役割を持っています。これは全ての企業に義務付けられているわけではありませんが、企業の経済活動を支える株主に対して、業務の妥当性や、株を買うのにふさわしい企業であるかを判断する情報を提供する必要があります。それらの情報は当然正確でなくてはなりませんので、それを作成する経理職がカギとなってくるのです。
上場企業などでは、投資家に対して経営成績を開示する義務があります。具体的には決算書類や有価証券報告書、税務申告書などを作成する仕事ですが、これも経理が担当します。これらのデータを参考にして、当該企業に対して投資するかの判断を行いますが、経理が適切な書類を作成しなければ、一般投資家たちは適切な投資判断を行うことができません。
つまり経理は、一般市場における投資家の投資判断の基礎となる情報を提供するという意味で、株式の市場原理を根底から支える存在と言うことができます。
ここまで経理について解説していきましたが、そんな経理の仕事を担当するためにはどうすればよいのでしょうか?ここでは新卒と中途の場合に分けて、それぞれ見ていきましょう。
新卒向けの求人で、経理職の募集のみをしている企業はかなり稀です。どちらかというと、総合職やオープンポジションという形で募集し、その中から適性や希望を踏まえていずれ配属していくという形が一般的でしょう。
これらを踏まえると、どうしても入社後すぐから経理としての経験を積んでいきたいという場合は、数少ない新卒向けの経理職募集の求人に応募するしかありません。ただしそうでない場合は、総合職などで入社し、その後経理に配属されるために適性をアピールしたり、経理希望であることを上司に伝えていくのがよいでしょう。
どちらの場合においても、活かせるスキルや資格を持っていると、よりスムーズに経理の仕事に就けるようになります。具体的にどのようなスキルや資格が有利になりやすいのかについては、後述します。
中途向けの求人の場合は、未経験者を経理職として採用する企業も一定数あります。ただし、同じ募集枠を未経験者のみで設定している企業はほぼありません。なので、これまで他の企業で経理の経験がある人と同じ枠を争わなければならないケースも十分にありますので、経験者よりは転職の難易度は高いといえます。
新卒の場合のように、わざわざ総合職で入社してからのキャリアチェンジを狙う必要はありませんが、スムーズに転職するには、やはり活かせるスキルや資格を持っておくことが重要になってきます。また、中途であればそれまで社会人としてどんな経験をしてきたかも、採用の可否を左右する要素になることがあります。
上記の通り、新卒でも中途でも経理になることを目指すにあたり、活かせる資格があることが重要な要素の一つです。では具体的にどんな資格が有利なるのか、紹介します。
経理に活かせる資格として最も一般的なのは日商簿記2級です。実際、経理に関わる多くの人が日商簿記2級を保有しています。
また、必須資格として日商簿記2級以上を設定している経理職の求人も多いです。そのような求人の場合は、活かせるというよりは最低限持っていなければならない資格と言った方が正しいでしょう。
簿記は税務や会計との親和性が高く、なかでも日商簿記2級の知識は、経理業務を行うにあたって必要十分なものとして認知されています。
そのため、会計系の資格を持っていないという方であれば、まずは日商簿記2級の取得から目指すのがオススメです。
FASS検定は経理の実務のスキルの程度を測る検定です。
日商簿記2級ほどの認知度はないものの、経理業務により直接的に活かせる知識が習得できるため、十分にアピール材料にはなる資格です。日商簿記2級のハードルが高いと感じる方については、このFASS検定を取得しておくとよいでしょう。
難易度は高くなってしまいますが、税理士資格を持っておくとかなり有利になります。経理担当として働き始めた最初のうちは、ややオーバースペックとなってしまう可能性もありますが、税務に関する専門的な業務においては大いに活かすことができるでしょう。
資格と併せて、以下の点については最低限のスキルがあるとよいでしょう。
基本的に、企業のお金を管理はPCを使って行うことになるので、PCを難なく扱える必要はあります。また、企業のお金や経営成績に関わる数字を扱う仕事なので、正確かつ責任の大きい仕事が出来る能力も重要になってきます。さらに、業務を円滑に行うために、社内の従業員とのコミュニケーションは欠かせませんので、その能力も重要になってきます。
ただし、これらは面接や筆記試験などで必ずしも問われるわけではなく、どちらかというと資格の有無の方が重要視される傾向にあります。
日本の採用市場は、どうしても学歴と無縁というわけにはいかないのが実情です。
では、それは経理職への転職でも同じなのでしょうか?
よく「学歴フィルター」と呼ばれる学歴によって合否が判断される風習については、二つのパターンに分けることができます。一つは最終学歴が大卒や大学院卒を通過させ、専門卒や高卒・中卒をお見送りとするなどの方法、もう一つが卒業大学の偏差値でそのボーダーを決める方法です。
経理職においては、後者の偏差値による合否判断はほとんどされません。一方で前者の最終学歴による判断については、一部で導入している企業もあります。基本的には大卒もしくは大学院卒であれば見送りとなることはありません。ただ、もしそうでないとしても、ほとんどの企業が学歴に関係なく応募できますので、大卒の学歴をつけるのに注力するよりは、資格やスキルを習得した方が良いでしょう。
「この学部にいた人しか募集していない」という企業があるわけではないため、経理職は学部に関わらずチャレンジできる職種であるといえます。ただし、下記のような学部に所属している、もしくは所属していた場合は、アピールポイントにできる可能性があります。
上記のような学部では、ファイナンスや会計に関わる授業を履修するため、経験が無くても知識を身に付けられていると判断されやすくなります。就職・転職活動で自己PRに活用する際は、具体的にどのようなことを学んだのかを伝えられると良いでしょう。
大学生から社会人経験が無い状態で就職、もしくは別の仕事からキャリアチェンジしての転職。どちらであったとしても、自分で応募する求人を探したり面接の日程調整をするのは骨が折れるものです。そこで活用すべきなのが人材エージェントです。希望の条件やご自身の経歴などを伝えることで効率的に求人を提供され、日程調整もエージェントが実施してくれます。内定を複数社もらった際に断りをいれてくれるなど、心理的負担のある対応もする必要がありません。そういったサービスを無料で受けられるエージェントが多いのも特徴です。
士業・管理部門の転職エージェント「ヒュープロ」では、一般企業の経理職などでの転職をお考えの皆様のキャリアをサポートさせていただいております。選考にあたって書類添削や面接対策の手厚さや、業界特化だからこそ持ち得ている企業情報や市場感の知識の深さには定評があります。
今回は経理で働くにはどうすればいいのかや、必要なスキル・資格について解説しました。最後に経理職について、その仕事内容や年間スケジュールおよび年収について、参考としてまとめます。
経理の仕事は大きく分けると、毎日行う日次業務、毎月行う月次業務、そして年に1回行う年次業務に分けられます。
それぞれには以下のような業務が該当します。
日次業務 | 入出金管理/仕訳/経費精算など |
月次業務 | 月次決算/在庫管理(棚卸し)/給与支払いなど |
年次業務 | 年次決算/年末調整/確定申告/監査対応など |
より具体的な経理の仕事内容につきましては、以下の記事をご覧ください。
上記のように、毎日行う日次業務、毎月1回行う月次業務、毎年1回行う年次業務がある経理職ですが、各月によって特定の業務を行わなければならないこともあります。日本で一般的な3月決算の場合、基本的に以下のような年間スケジュールとなります。
4月 | 軽自動車税、固定資産税・都市計画税第1期分の税金納付 |
5月 | ①法人税等、消費税等(課税事業者のみ)の確定申告と納付 ②自動車税の税金納付 ③株主総会の招集 |
6月 | 株主総会の開催 |
7月 | ①源泉所得税の納付(納期特例を受けている場合) ②固定資産税・都市計画税第2期分の税金納付 ③健康保険、厚生年金保険の定時決定 |
8月 | 消費税等の中間申告と納付(一部の企業のみ) |
11月 | 法人税等の中間申告と納付(一部の企業のみ) |
12月 | ①年末調整 ②固定資産税・都市計画税第3期分の税金納付 |
1月 | ①固定資産税の償却資産に関する申告 ②源泉所得税の納付(納期特例を受けている場合) ③法定調書の提出 ④給与支払報告書の提出 ⑤支払調書の作成 |
2月 | ①固定資産税・都市計画税第4期分の税金納付 ②消費税等の中間申告と納付(一定の企業のみ) |
3月 | ①棚卸 ②年次決算 |
1月~3月までは決算に関する業務が増えることから、経理職の繁忙期とされています。この時期は残業時間が増えたり、休日出勤が必要になるケースがありますので、認識しておきましょう。
経理職の平均年収は450万円程度です。日本全体の平均年収が約436万円であることと比較すると、経理担当者の平均年収は約14万円多い、つまり漠然とした表現にはなりますが、毎月1万円ずつ多い給料を得ていると言えます。
ただし、役職やスキルによって年収は大きく変わってきます。具体的にどんなスキルでどのくらいの年収がもらえるかについては、下記の記事をご参照ください。