これから就職活動を行う方は「何か資格を」と考える方も多いと思います。たくさんある資格の中で、抜群の知名度と有用性が高いのが「日商簿記検定2級」通称「簿記2級」です。本記事では、簿記2級の紹介と、就職への役立て方について解説します。
簿記の資格には実は次の3種類がありますが、一般的に「簿記2級」というと日商簿記検定2級を差します。
日商簿記検定 | 「日本商工会議所」が主催・大学生・社会人が対象。 |
全商簿記検定 | 「全国商業高等学校協会」が主催・商業高校生が主な対象。 |
全経簿記検定 | 「全国経理教育協会」が主催・経理専門学校生が対象。 |
日商簿記検定2級は、商工会議所のサイトによると、以下のような内容です。
経営管理に役立つ知識として、企業から最も求められる資格の一つ。
高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル。
出典:日本商工会議所:簿記2級
簿記は、どのような職種であれ勉強しておきたい必須スキルと言えます。特に経理職や会計事務所に進みたいという方には資格取得をしていることで就職活動にも有利に働きます。
簿記2級についてはこちらのコラムでも詳しく紹介していますので、あわせて是非ご覧ください。
簿記2級はかつてはそこまで勉強しなくても受かる資格と言われていましたが、ここ数年試験範囲見直しと内容改定がされすっかり難易度が上がってしまいました。
簿記2級の前に3級という資格がありますが、簿記2級を取得するにあたり、基礎ができているという前提の簿記3級合格者であっても、250~350時間が必要と言われています。全くの簿記初心者では350~500時間です。
・簿記3級合格者:4~6カ月(250~350時間)
・簿記初心者:6~8カ月(350~500時間)
250時間というと、毎日5時間勉強しても50日かかるわけで、実は簿記2級はかなり勉強しないと取れない資格なのです。
つまり社会人になって働きながら資格を取得するということはなかなか負担が大きいです。できれば、勉強時間を確保しやすい学生時代に簿記の勉強をしておくのがおすすめです。
簿記2級の勉強方法については以下の記事でも解説しています。併せてぜひご一読ください。<div class='js-insertedArticles' data-id='1641'></div>
簿記2級を取得して、就職に活かすには以下の方法があります。
簿記2級を勉強するにあたり「勉強してみたら楽しかった!」というような方は、経理職や会計事務所、銀行員やコンサルティングなど数字を扱う仕事に向いていると言えます。簿記を勉強することで、経理や会計の仕事が自分に向いていると発見することも多いです。
反対にいくらやっても簿記が分からないし面白いとも思えない。そんな方にはこれらの職種はおすすめできません。簿記の概念や基本的な内容は、社会人であれば等しく必要ですが、仕事とするとなると、毎日簿記の勉強をしているようなものです。自分が楽しいと思える職種を探す方が賢明かもしれません。
もちろん苦手だからといって、簿記を一切勉強しないというのはお勧めできないです。どんな仕事にもお金の管理は必須なため、簿記の基本的な概念を学ぶというのは、資格取得に関わらずやっておいた方が良いでしょう。
なお、簿記を学ぶことで企業の財務諸表を読むようことができるようになります。そうなると志望企業の財務健全性などを見極めることができるようになるため、有名企業だから、話題の会社だから、仕事が楽しそうだからなど、そういった表面的なことに騙されずに堅実な会社を選ぶことができるようになります。華やかな業界で勢いがあるように見え、露出の多い会社が、実は広告費を使いすぎて内情は火の車というのはよくある話です。
就活時にはさしたる資格がなく、資格欄に書くことがないという人は意外に多いです。そんなか「日商簿記検定2級」とあると、学生のうちから将来を見据えてきちんと勉強してきたということをアピールできます。
他にも TOEIC スコアなど企業が重視する資格はいくつかありますが、日商簿記検定2級は確実にその中の一つです。例えば簿記検定の勉強をどのようにしたかなどを志望動機や自己 PR の材料として使うこともできます。
面接において、資格取得をアピールすることは素晴らしいことです。学生であれば、バイトと大学生活と両立をして、空いている時間を有効活用して合格したことでしょう。学生時代の楽しい誘惑に負けず、将来の目標を見定めて取得に至ったはずです。
社会人では多忙な仕事生活の中でスキマ時間を見つけ、努力し続けた成果の賜物だと思います。このような努力を正しく面接官に解釈してもらえるため、伝え方は工夫しましょう!
資格の受験動機が「就職・転職に有利になると思った」、「知人に勧められた」、「仕事に活かしたかった」等様々な理由があると思います。面接では「就職・転職に有利になる」、「知人に勧められた」など受け身の理由を言うことは面接官へ良い印象を与えません。少ない面接時間で能力や人物像を把握するには無理があり、ネガティブな発言が選考に影響を与えてしまうかもしれません。
面接では、「コンサルティング営業の際に、クライアントへ財務諸表に与える影響まで伝えたところ、クライアントの反応が良く商談に繋がることがあった。この経験から会計に興味を持ち簿記2級の取得に至った。」など仕事の経験と絡めて話すと納得感があり、好印象です。簿記2級のような資格は簡単に合格できる試験ではありません。勉強のモチベーションを維持できたのは。「就職・転職で有利」という簡単な理由ではなかったと思います。
自分が本当に取得に至ったモチベーションの源泉を面接官に伝え、選考をさらに優位に進めていきましょう。
他にも TOEIC スコアなど企業が重視する資格はいくつかありますが、日商簿記検定2級は確実にその企業が評価する指標の一つです。例えば簿記検定の勉強をどのようにしたかなどを志望動機や自己 PR の材料として使うこともできます。
就職にもその後のキャリア実務にも役立つ資格である簿記2級。もしこれを読んでいる方がこれから就活ということであれば早いうちに勉強に取り掛かりたいところです。
簿記2級の資格を持っていると、就職先で有利に働く場面は多いです。一見関係なさそうな営業職であっても、数字に強くなり対象企業の財務分析にも生かすことができます。そして、特に会計事務所や事業会社の経理担当として入社する場合は、仕訳業務が日常で行われますので、簿記2級取得時に学んだ知識をそのまま生かすことができます。
他には銀行や商社、保険会社やコンサルティングファーム、証券会社等でも会社の経営や財務面で携わることが多いですので、簿記2級の知識が直に生きてくるでしょう。
またこれは少し細かい話になりますが、簿記2級は簿記3級では扱っていない連結会計や原価計算を扱います。連結会計が理解できると、子会社や関連会社を持つ企業の経理業務を行うことができ、原価計算ができるとメーカー企業の経理業務を行うことができます。
簿記1級まで取得している人は経理担当者でもかなり少なく、簿記2級があるだけで会社からは評価対象になりますので、任される仕事の幅も広がっていく可能性が高いでしょう。
実務未経験で会計業界へ就職・転職する場合、簿記2級を持っている応募者と簿記2級を持っていない応募者では、選考において大きく影響の違いが生じます。
弊社が運営する士業・管理部門特化の転職サイト【最速転職HUPRO】では、2020年8月時点で、簿記2級が選考の必須条件となっている求人は440件あり、そのうち実務未経験でも、簿記2級を取得していれば応募できる求人が65件あります。
例えば、こちらの税理士補助の求人を見てみると、条件面等は下記の内容になっています。
年収:300〜500万円
学歴:大学卒以上/未経験OK
必要資格:日商簿記2級
必須業務経験:なし
業務内容:
相続税を中心としたコンサルティング業務全般や税理士業務・補助業務
休日・休暇:
<年間休日124日程度>
■完全週休2日制(土・日)
■祝日
■夏季休暇
■年末年始休暇など
条件・手当:
■昇給
■賞与年2回
■社会保険完備など
実務未経験ですが、税理士補助として相続税を中心としたコンサルティング業務に携わることができます。年収も300万〜500万円と税理士補助スタッフでは一般的な年収です。
詳しくは下記の求人を参照してください。
求人情報:【税理士補助】相続・土地評価の専門!年間800件、創立以来27年間で5800件以上の相続関連の実績を持つ税理士事務所
実務未経験であっても、簿記2級を必要条件としている求人では、税理士科目合格者と遜色ない条件で提示されることも多いです。税理士受験生が最初に取る科目が簿記論と財務諸表論であり、税理士試験の登竜門と呼ばれていますが、この税理士試験科目の簿記論・財務諸表論と比較して、簿記2級の方が取得難易度は低いです。
しかし、簿記2級でも税理士補助として、税理士法人・会計事務所で用いられる会計知識を網羅していることが多いです。もちろん業務経験によっても待遇は異なってきますが、簿記2級を取得したことで、税理士科目の簿記論・財務諸表論取得者と同じような求人に応募ができるという点では、とても魅力的な資格と言えるでしょう。
一方、簿記3級ではどうでしょうか?簿記検定試験を開催している日本商工会議所によると、以下のように定義されており、会計の基礎知識が身に付くレベルだと言えます。
業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格。
基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベル。
最速転職HUPROが扱う求人では、日商簿記3級を必須条件とする求人は117件ありますが、その中で未経験者でも応募可能となると、一気に数が減少して、25件となります。
例えば、こちらの税理士補助の求人を見てみると、条件面等は下記の内容になっています。
年収:360〜500万
学歴:不問
必須資格:日商簿記3級
必須業務経験:
いずれか1つに該当する方
・会計事務所での勤務経験がある方
・金融機関(銀行など)で法人営業経験のある方
・事業会社での経理経験者
業務内容:
会計事務所の税務・会計アドバイザーとして、顧問先折衝や監査業務をお任せします。
※まずは事務全般を経験しながら、事務所内の仕事に慣れていただきます。
・会計監査(顧問先の会計データ監査、入力)
・顧問先訪問指導(最初は先輩スタッフに同行します。)
・経営相談(経営コンサルティング)
休日・休暇:
<年間休日120日以上>
■完全週休2日制(土/日/祝)
■夏季休暇
■年末年始休暇
■有給休暇など
条件・手当:
■通勤手当
■家族手当
■健康保険など
税理士補助として事務全般を経験しながら、会計業務に携わることができます。年収は360万〜500万円とこれも税理士補助スタッフでは一般的な年収です。
詳しくは下記の求人を参照してください。
求人情報:【税理士補助】IT技術を積極的活用!ペーパレスを実現し、作業効率と生産性を上げた会計事務所
簿記3級を取得していれば応募ができる求人の場合、上記の事務所のように必須条件において、会計に関する業務経験を求められる求人が多いです。
簿記2級を持っていれば、未経験でも採用するケースがありますが、簿記3級ですと全くの未経験者は難しく、少しでも会計に関わったことがある人を求めています。また業務内容でも簿記3級の求人では事務作業がメイン業務になり、コンサルティング業務や税務会計に携わるのに時間がかかるでしょう。
このように簿記2級を持っていることで選考が有利に進められることがお分かり頂けたと思います。簿記3級を取得した方は簿記2級を目指し、まだ簿記2級を取得していない方は、簿記3級に挑戦し、有利に就職・転職活動を進めていきましょう。
「資格を取っても無駄」「資格より実務経験が大事!」
資格を取得しようと思うと、このようなネガティブな意見を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?しかしながら、会計業界へ転職する場合は話が違います。経理職・財務職、税理士・会計士のように会計を主な仕事とする職業は専門職であり、仕事を頼むクライアントは彼らが持つ専門的な知識を求めています。
簿記2級はクライアントに専門的な知識を持っているという安心感を提供し、仕事の機会を与えてくれます。簿記2級が就職・転職に有利になることは間違いありません。就職・転職で自己研鑽を終えずに、簿記2級取得後は自分のキャリアを考えて、必要に応じて簿記1級や税理士試験、会計士試験を目指して専門性を高めていってください。