会計と税務って何が違うのかよくわからないという人は非常に多いです。しかし、会計と税務は似て非なるものです。この記事では、税務と会計の違いについて詳しく説明していきます。
会計とは、一定期間の利益を計算するための一連の手続きのことを言います。この手続を通じて、貸借対照表と損益計算書という財務諸表を作成することで、利益と財政状況を示します。
財務諸表が正しく作成されることによって、投資家が会社の状況を把握して、今後投資をするかどうかについての意思決定ができるようになります。
また正しい利益計上で、会社が納める法人税、事業税などの税額が決定されることになります。そのため、日本においては、会社が計算した利益を調整することによって、正しい税額になるようにしています。この調整という手続きが税務と呼ばれるものです。以下では、税務について詳しく説明していきましょう。
税務とは、一定期間の課税所得を計算するための一連の手続きのことを言います。先に説明したように、会計では、収益から費用を引くことで利益を計算しますが、税務では、益金から損金を引くことによって課税所得を計算します。
しかし、企業の経理部において、会計と税務で利益と課税所得を別々に計算することは非常に手間がかかるものです。そのため、日本においては、会計で計算した利益に調整項目を差し引きすることによって、課税所得を計算するという確定決算主義が採用されています。
その結果として、税務では、課税所得を計算するために、まずは利益を計算して、それに対して調整項目を差し引きすることで課税所得を計算するという手続きがとられています。
会計における利益と課税所得が一致しない原因は、計算方法に差異があるからです。たとえば、会計上は認められている減価償却期間が、税務上は認められていない減価償却期間というものがあります。
100万円の売上がある会社が減価償却費として50万円を計上したとしても、税務上は40万円までしか減価償却費が認められないということがあります。この場合、税金は課税所得である課税所得60万円(益金(100万円)- 損金(40万円))に対してかかります。
しかし、会計上は利益が50万円(収益100万円−損金50万円)という計算結果となるので、差異が生じてしまうわけです。そこで本来課税所得が60万円であるので、会計上は費用を計上しすぎているとして、税効果会計を適用し、法人税等調整を計上することによって、本来払うべき税金の額を計算します。
会計と税務の目的をおさらいします。
株主、投資家などあらゆるステークホルダーのために、会社の利益を正しく表示すること。
国家運営のための、税金額を計算すること。
日本では、これら2つを別々に体系化すると企業にとって負担となるので、これら2つの目的を同時に達成するために、確定決算主義を採用して、会計上の利益に対して、調整項目を差し引きすることよって、課税所得を計算し、その結果に基づいて税金の額を決定しています。
会計と税務は全く違うものです。会計では、簿記の知識が必須となりますが、税金に関する知識はほとんど必要ありません。しかし、税務では会計の知識も税金の知識も必要です。実際には、日本において、会社のなかで会計と税務はほとんど区別されていません。
その理由は、会計で計算した利益に基づいて、税金の額を計算しているからです。このように税金の額を計算することによって、企業の経理を担当する人々が、同じような計算を2回もせずに済むというメリットがあります。
このように、会計と税務は全く違うものですが、会社のなかではほとんど同じものとして扱われているので、きちんと違いを理解して、会計処理をできるようにしておくことが重要です。