世界的なIT技術の発達により、監査業務もIT技術が取り入れられ始めました。監査法人で働くにあたり最低限これくらいのIT知識はあった方が良い事項をまとめました。監査法人だけでなく社会人に必須レベルの知識も含まれており、身に付けておいて損はないものになりますので、ぜひご参考にしてみてください。
監査法人では以前は紙により監査調書を作っていた時代もありましたが、現在はほとんどの監査調書はIT化されています。ITの方が効率性や偽造防止、保管の観点から優れており、監査法人で働く場合は必然的にITを駆使して監査調書を作らなくてはなりません。監査法人において一番使うマイクロソフトオフィスは断然「エクセル」です。簡単な入力作業もありますが、四則演算計算、vlookupなどの関数使用、データのフィルタリングや整備など基本的なことができるようになっていると、初めて監査現場に入った時に必ず役に立ちます。ワードやパワーポイントは初めのうちはそこまで使用頻度は高くないので、徐々に慣れていくというスタンスで問題ないと思います。また、大手企業がクライアントの場合、データ数が多くエクセルでは入りきらない場合があり、その場合は「アクセス」を使います。大手クライアントに配属される予定の方は、エクセルに加えて「アクセス」の基本的な使い方を学んでいくと良いでしょう。
様々なITを使ったコミュニケーションツールが世に出てきており、クライアントとのコミュニケーション手法も電話や対面から、ITを使ったコミュニケーションツールへと様変わりしてきました。ビデオ会議であればSkype、Zoom、チャットツールであればChatwork、Slackなどが挙げられますが、特にIT業界がクライアントだった場合には使用するケースがありますので、一度ご自身で使ってみるのがお勧めです。ただし、もちろん、監査法人やクライアントによっては情報管理のため使えないケースも多くありますので、社内規則を確認するのが先になります。
監査調書はITシステム化されており、大手監査法人であれば例外なく監査法人専用のクラウドサービスを使って日々の監査業務を行っています。監査調書をアップロード、過去の監査調書を確認、上司のレビュー機能、監査手続が記載されているなど、監査業務に必要な全ての事項が網羅されており、このシステムを使いこなせないと監査業務はできないと言っても過言ではありません。監査法人ごとに使っているシステムは異なっていますが、入社時などに丁寧な研修があることが通常ですので過度な心配は不要です。また、監査法人から違う監査法人に転職される場合、また新たなシステムを勉強し直しますが、大手監査法人はどこも機能的には標準的なものであることが多く、一度学習してしまえばゼロからスタートというわけではありません。
経理システム、勘定系システムは監査業務を行うにあたり、切っても切れないシステムです。全ての財務情報は経理システムに集められ集計され、この数字から監査法人が監査すべき財務情報が作られています。使っているシステムはクライアントの規模により大小様々ですが、勘定奉行、弥生会計、クラウド会計であればMFクラウド会計、Freeeなどが挙げられます。大企業であればERPとしてSAPやOracle、自社開発システムを使っているケースも多いです。監査をする際に必要な情報を取得する場合は、この経理システムから取得する場合がほとんどですので、新しいクライアントに来た際は、経理システムは何を使っているのか、どのように財務情報は作られているのか、どのような情報を取得できるのかを注意深く確認していくと、今後の監査業務を効率的に行っていくために大切なことになります。
経理システムの次に大事なシステムは、経理システムに接続される人事システム、固定資産システム、給与計算システム、営業管理システム、入出金管理システムなど様々なものが挙げられます。監査業務を行ううえで、これら業務システムから出力したデータを確認するケースが多く、クライアントが使っている業務システムについて最低限の理解をしている必要があります。財務諸表監査だけでなく、J-SOX監査でも業務システムは頻出であり、フローチャートにもよく記載される業務システムは必ず把握しておきましょう。経理システムとともに業務システムを抑えてしまえば、監査に必要なデータがどこから出力されるのか瞬時に判断することができ、職場でも頼りになる存在になれます。監査法人で働くために必要なIT知識をきちんと身に付け、ぜひ監査法人で高いパフォーマンスを発揮してください。
いかかでしたでしょうか。ITは今爆発的に様々な業界に浸透していき、そのツールも規模や業種によって異なり、それらに対して行う監査も複雑になっていくことが考えられます。まず社会人のベースとなるエクセルなどオフィスツールのある程度の知識は必要不可欠です。またすべてを熟知するまではいかずとも、こういった種類のものが存在するということを知っているだけで、理解がしやすいでしょう。今後の新たなIT要素は増えていくことが予想されるため、常に最新の情報にアンテナを張っていくのは重要になるのではないでしょうか。
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