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会社法監査とは一体何なのでしょうか?

公認会計士 前澤直樹
会社法監査とは一体何なのでしょうか?

会社法監査とは、会社法第436条2項1号に規定されている「計算書類及びその附属明細書」が適正に作成されているかどうかについて、会計監査人たる公認会計士または監査法人が行う監査のことを指します。今回はこの会社法監査について解説していきます。

会社法監査の概要

会社法監査とは、会社法第436条2項1号に規定されている「計算書類及びその附属明細書」が適正に作成されているかどうかについて、会計監査人たる公認会計士または監査法人が行う監査のことを指します。これはすなわち会計監査のことを指しています。

計算書類とは、会社の経営状況や財務状況を示す資料です。それに合わせて、事業報告書とともに定時株主総会で株主に提出書類となっています。

計算書類が適正に作成されていない場合、会社の経営状況や財務状況を正しく判断することができず、株主や債権者などの利益を著しく害する可能性があります。そのため、会社法監査ではこれらのリスクを回避するために、株主や債権者などの利害関係者の保護を目的に計算書類の監査を義務付けています。ただし、全ての会社が対象となっているわけではなく、一定規模の会社などが対象となっています。

計算書類の監査を義務つけることで、計算書類の内容の適正性および信頼性は第三者の視点から検証され担保されることになります。

会社法監査の対象

会社法監査は上記の目的を達成するために実施されるため、全ての株式会社が対象になるわけではありません。利害関係者に大きな影響力を有する大会社(会社法上の大会社は資本金5億円以上、もしくは、負債額が200億円以上の会社を指します(会社法328条))を対象として、会計監査人を設置することが義務付けられており、その会計監査人による監査が義務に当たります。

会社法監査の対象、また、会社法監査を実施する会計監査人の選任手続き、罰則などの詳細な内容については「会社法監査の対象となる会社は?」をご参照ください。

会社法監査の対象書類

会社法監査においては、計算書類が監査の対象となります。ここでいう計算書類とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4つとなります。この4つの書類について会計監査人の監査が必要となっています。

この会社法監査の対象となる書類などの詳細な内容についても、「会社法監査の対象となる会社はについて詳しく説明します!」をご参照ください。
会社法監査の対象となる会社について詳しく説明します!

会社法監査の対象書類

監査役監査との違いとは?

監査役の職務については、会社法381条1項に記載されています。監査役は、取締役の職務の執行を監査することとされています。つまり、監査役は取締役の職務を監査する業務監査をすることになっています。

また、監査役の権限として会社法381条2項に、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができるとされています。

上記を踏まえると、取締役の職務の執行を監査する業務監査と計算書類等の監査を行う会計監査の両方の権限を有しています。

ここで会社法監査と監査役監査との違いは、監査役監査には取締役の職務を監査する業務監査があるというところです。また、会計監査はともにあるのですが、会社法監査は第三者の観点での監査、いわゆる外部監査ですが、一方で監査役監査は会社法監査と比較すると社内の監査に近いため、そこも会社法監査と監査役監査の違いとなります。

金融商品取引法監査との違いとは?

金融商品取引法監査とは、金融商品取引法第193条の2に基づき、公認会計士あるいは監査法人により実施される監査業務のことを指します。
金融商品取引法監査は会社法監査と同様に外部監査へ分類されます。それぞれ公認会計士や監査法人により監査が実施されます。

一方で、会社法監査と金融商品取引法監査では、それぞれ監査の目的が異なるため、対象となる会社の範囲及び書類が異なります。

金融商品取引法監査は、投資家保護のために実施されるものであり、有価証券報告書(届出書)の提出会社、つまりは上場会社や店頭登録株発行会社などを対象としたものとなっております。そして監査の対象は有価証券報告書の経理の状況に掲げられる財務諸表となります。

また、金融商品取引法監査では内部統制監査も対象となっており、内部統制の監査も実施することになります。

ここまでみてきた通り、外部監査という観点では金融商品取引法監査と会社法監査と同じものですが、それぞれの目的により対象となる会社、書類などが異なるのです。

会社法監査のスケジュール

会社法監査のスケジュールですが、以下のような流れで進みます。

①決算日に関係書類の作成
②監査
③取締役会での承認(取締役会設置会社)
④定時株主総会での承認

上記のスケジュールの詳細な内容は「会計法監査報告書の提出期限をわかりやすく解説!監査のスケジュールは?」をご参照ください。
会計法監査報告書の提出期限をわかりやすく解説!監査のスケジュールは?

まとめ

ここまで会社法監査について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
会社法監査が設置された趣旨をもとに、対象となる会社、必要な手続きなどが構築されており、他の監査とも異なる内容が設計されているため、まずは大会社を対象としている会社法の監査の趣旨を理解して内容をみていけば理解しやすいのではないでしょうか。

この記事を書いたライター

公認会計士試験合格後、監査法人トーマツに就職。約6年間金融商品取引法監査、US監査などを経験。グループ会社であるDTFAに転籍し約4年間従事。デューデリジェンス、バリュエーションなどM&A系の仕事を経験。その後、事業会社の経営企画に従事。
カテゴリ:コラム・学び

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