会社法監査ですが、対象となる会社はどのような会社なのでしょうか。そして、その対象となる会社はどのような書類を作成して、監査を受ける必要があるのでしょうか。今回は会社法監査の対象となる会社、監査の対象となる書類、それに伴う罰則などについて解説していきます。
会社法第328条により、大会社(公開会社でないもの及び委員会設置会社を除く)は監査役会及び会計監査人を設置しなければならないとされています。
ここでいう、大会社とは、会社法第2条第6号で定義されています。次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社を指します。
では、最終事業年度とはどの時点のことを指すのでしょうか。
これは会社法第2条第24号に定義されており、各事業年度に係る第435条第2項に規定する計算書類につき第438条第2項の承認を受けた場合における当該各事業年度のうち最も遅いものを指しています。第438条第2項の承認とは、事業年度の計算書類に係る定時株主総会における承認のことを指しています。
要約すると、定時株主総会において、資本金5億円以上、あるいは負債総額200億円以上となった貸借対照表が承認又は報告された時点で、大会社に該当することになります。
よって、承認又は報告された時点において資本金5億円以上、あるいは負債総額200億円以上の条件に該当しなければ大会社でありません。
つまり、期中に資本金5億円以上、あるいは負債総額が200億円以上だったとしても、決算期末日時点で超えてなければ大会社に該当しないのです。
この大会社に該当すれば、一般的に事業規模が大きく、株主や債権者、取引先などの利害関係者が多くなるため、会計監査人の設置義務が生じ、会社法監査の義務が生じるのです。
なお、会計監査人は株主総会の普通決議で選任、解任がされます(会社法329条第1項、会社法第339条第1項)。また、定時株主総会において別段の決議がされなかった場合は、会計監査人は再任されたものとみなされます(会社法第338条第2項)。
では、大会社にあたり、会計監査人を設置しなければならないとされたとき、どの書類が対象となるのでしょうか。
会社法監査では計算書類が対象とされており、計算書類とは会社法第435条第2項及び第4項に規定されており、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4つを指しており、これらの書類が会社法監査の対象となります。
また、有価証券報告書を提出する大会社においては、連結計算書類(連結貸借対照表、連結損益計算書)の作成義務があるため、そちらについても監査の対象となっています。
なお、監査の際には、会計方針や表示方式などの変更点があればその変更点についても、内容を確認し、正確に注記等がなされているかについても確認されます。
保証債務や担保設定など注記が必要なものについても、その内容が適切に、正確になされているか確認されます。
では会社法上、大会社に該当するにもかかわらず、会計監査人を設置せず、放置していた場合はどのような罰則があるのでしょうか。
上記でみてきた通り、会社法上、大会社は会計監査人を必ず設置しなければなりません。にもかかわらず、会計監査人を設置しなかった場合には、100万円以下の過料が科される可能性があります。(会社法第976条第22項)
これだけをみると100万円程度の話であれば設置しなくてもと思う可能性もありますが、会社法上の大会社には内部統制の基本方針を決定する義務があり、当該内容を事業報告へ記載しなければなりません。そうなると、事業報告の基本方針の不記載あるいは虚偽記載に該当する可能性も出てきます。
会社法上、大会社は計算書類の適正性を担保するため、内部統制を構築する義務も背負っているにもかかわらず、内部統制を構築しなければ、取締役の任務懈怠などの可能性も出てくるため、上記の罰則以外にも派生する可能性があります。
ということで、大会社に該当すれば会計監査人を設置し、計算書類等の適正性が保てるよう、そして、取締役等の任務懈怠にならないよう手続きはちゃんと進めましょう。
ここまで会社法監査の対象となる会社、対象となる書類、またそれに紐づく罰則について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
どのタイミングで大会社に該当するのか、該当したらどのような手続きが必要なのかなどを確認しながら適切に会社法監査を進めていきましょう。