今回は会社監査報告書の提出期限を考えていきます。まずは、会計監査報告書の提出期限を考える上で重要となる会社法監査のスケジュールを解説していきます。会社法において決算のスケジュールが規定されていますので流れをみていきましょう。
監査報告書とは、財務諸表等の計算書類が、公正に表示しているかどうかについて監査人の監査意見を述べた報告書となります。
当事者が作成したものに、第3者である監査人の意見を述べることで投資家などが正しく会社の状態を知ることができる書類になります。
まずは会社法の決算スケジュールの全体像をみていきましょう。
全体の流れは以下の通りとなります。
※会計監査人及び監査役会設置会社を前提にしています。
会社法において、①及び④については具体的な期限の定めはないので、決算スケジュールの策定にあたっては、②、③及び⑤の期間の定めに基づいて考えていく必要があります。
まずは、会計監査人に対しての監査報告がどのタイミングで必要かを見ていきましょう。
会計監査人は、以下の日までに特定監査役及び特定取締役に対して監査報告の内容を通知しなければなりません。
会社法計算規則130条第1項第1号に規定があり、以下のいずれか遅い日とされています。
ここでの「特定取締役」「特定監査役」というのは、計算関係書類の監査報告の通知を受けるものと定めた場合の取締役や監査役のことをいいます。定めていない場合は、特定取締役は監査を受けるべき計算関係書類の作成に関する職務を行ったもの、特定監査役はすべての監査役を言います。
監査結果報告の内容の通知を受けた日(上記のイ)、ロ)、ハ))に、会計監査人の監査を受けたものとされます。なお、通知すべき日までに通知がなされない場合には、監査を受けたものとみなされ、次の手続きに進むことができるとされています。(会社法計算規則130条第2項、第3項)
先述の特定監査役は、以下の日までに特定取締役及び会計監査人に対し、監査役会の監査報告の内容を通知しなければなりません。
会社法計算規則132条第1項第1号により、以下のうち、いずれか遅い日までに計算書類とその附属明細書について報告するとされています。
イ)会計監査報告を受領した日から1週間を経過した日
ロ)特定取締役、特定監査役の間で合意により定めた日があるときは、その日
会計監査人による監査と同様で監査結果報告の内容の通知を受けた日に、監査役の監査を受けたものとされ、通知すべき日までに通知がなされない場合には、監査を受けたものとみなされます。(会社法計算規則132条第2項、第3項)
監査役会の役割は、各監査役が作成した監査報告に基づき、監査役会の監査報告を作成することとされており、各監査役の監査報告と異なる場合には、各監査役は自己の監査報告の内容を付記することができるとされています。(会社法計算規則128条第1項、第2項)
株主総会の招集通知は、基準日における株主に対して株主総会における議決権行使の準備をする機会を与えるため、計算書類及び事業報告に監査役及び会計監査人の監査報告書を添付して、以下の期限までに発送する必要があります。(会社法437条)
書面投票制度や電磁的方法による投票制度を採用する株式会社は株主総会参考資料を招集通知と合わせて発送します。(会社法301条第1項、第2項)また、当該会社は株主総会の日の2週間前までに発送する必要があります。
計算書類は、定時株主総会において承認を受ける必要があります。(会社法438条第2項)ただし、会計監査人設置会社で、以下の要件を満たす場合は、株主総会の承認は不要で、報告事項となります。(会社法439条、会社法計算規則135条)
なお、会社法では、基準日の株主の権利は、基準日から3カ月以内のみで行使できるとされており、定時株主総会は、事業年度終了後3カ月以内に開催されています。
以上、会社法おける決算スケジュールをみてきました。
会計監査人の監査報告は監査役会に報告する必要があるため、それまでに監査報告を作成する必要があります。また、株主総会の開催までの全体的な手続きを考慮すると、株主総会の開催の1カ月前ぐらいには会計監査人の監査報告書が必要となります。株主総会が決算日から3カ月後までに開催されることを考えると大体決算日から2カ月で会計監査人の監査報告書が必要となります。