日商簿記検定2級には、試験科目として商業簿記科目と工業簿記科目があります。このうちの商業簿記は3級の試験科目にもありますが、3級の試験範囲に上乗せをするようなかたちで、試験範囲が拡大をされて出題をされます。
今回は簿記2級の商業簿記科目の試験範囲について3級と比較をしながら解説していきます。
簿記3級は、会計知識を提示するにあたり最低限必要な資格試験といえます。2級を受験するにあたり、簿記3級の合格は受験要件にはありませんが、簿記3級同等の知識が無いと2級の合格は難しいといえます。
簿記3級では基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うための知識が求められています。
簿記2級では簿記3級の知識に加えて、高度な商業簿記や工業簿記を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できる等の、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うための知識が求められています。
簿記3級の合格率は日商簿記検定の場合、簿記3級で30~40%台、2級で20~40%台といわれています。
知識の難易度と共に合格率も下がる簿記2級の試験において、3級と比較をして加わる大枠の出題範囲は、本支店会計、連結会計です。
本支店会計とは、会社において本店と支店がある場合に適用をする会計処理の方法です。
本店と支店、又は支店同士の取引について、一つの会社では発生しない勘定科目である本店勘定及び支店勘定を用いて会計処理を行います。
本店では本店の独立した財務諸表を作成し、また支店でも支店の独立した財務諸表を作成し、決算時に支店の利益を本店に振り替えることで合併財務諸表を作成することを目的としています。
簿記2級の試験問題は5つの項目に分かれ、
第1問〜第3問:商業簿記科目
第4問・第5問:工業簿記科目
であることが殆どであり、各問20点満点です。合格をするためには70点以上の点数を獲得することが必要です。
商業簿記科目の内訳は、
第1問:仕訳を記入する問題
第2問:帳簿組織の問題
第3問:試算表や財務諸表の作成の問題
となります。
本支店会計は第1問から第3問のいずれの箇所でも出題をされる可能性がありますが、合併財務諸表を作成させるような第3問の20点分が全て本支店会計の論点ということは、試験の10回に1回あるかどうかという程度の出題頻度です。
出題頻度が少ないから勉強しなくて良い、ということはありませんが、学習においては優先順位の低い論点であるともいえます。
連結会計とは、親会社、子会社等をもつグループ会社がある場合に適用をする会計処理の方法です。
親会社では親会社の独立した財務諸表を作成し、また子会社等でも子会社の独立した財務諸表を作成し、決算時にグループ間で生じた損益等を消去することで、連結財務諸表を作成することを目的としています。
2つ以上の会社が存在することにおける会計処理という点で本支店会計と似ていますが、本支店会計における支店とは本店と同一の事業体とみなされ、連結会計における子会社とは親会社とは別の事業体とみなされる等、会社同士の関係性が異なります。
会社同士の関係性が異なると同時に、当然ながら本支店会計と連結会計では処理すべき会計処理や勘定科目が異なります。
連結会計も第1問から第3問のいずれの箇所でも出題をされる可能性があります。連結財務諸表を作成させるような第3問の20点分が全て連結会計の論点であるということは、本支店会計とは異なり、3回に1回程度の頻度で出題がされています。
つまり簿記2級において初めて試験範囲に加わる論点でありながら、簿記2級の合格においては非常に重要な論点となっています。
大枠としての拡大される出題範囲は本支店会計、連結会計ですが、既に簿記3級で出題範囲とされている大枠の簿記の基本原理、諸取引の処理、決算、株式会社会計の中でも、細かい論点が2級では追加をされて出題されます。
簿記の基本原理では簿記3級の試験範囲には無い純資産と資本の関係等、諸取引の処理では銀行勘定調整表や有価証券、無形固定資産等、決算では財務諸表の区分表示、株主資本等変動計算書等、株式会社会計では資本剰余金、分配可能額の算定等が加わります。
簿記2級において追加される大枠である本支店会計、連結会計のみを簿記3級合格資格者が習得しても合格は難しいです。3級の試験範囲を網羅しながら、これらの拡大される出題範囲を加えて学習をしなくてはなりません。
商業簿記科目の試験範囲について解説しました。試験範囲は変更が生じる場合がありますので、実際の受験の際にはその時点の試験範囲を確認するようにしましょう。
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