近年、英語で取得が可能な資格が注目されるなか、英語力とともに米国の税務知識をアピールできる資格として、米国税理士(EA)の人気が高まりつつあります。
日本ではマイナーな資格ですが、れっきとしたアメリカの国家資格であり、資格を活かして働きたい人にはおすすめの資格といわれていますが、上位資格である米国会計士(USCPA)にて米国税理士(EA)の業務は全ておこなうことができるため、意味がないという声も。
今回は、米国税理士(EA)について、米国会計士(USCPA)との比較を交えながら、その価値について解説します。
米国税理士(Enrolled Agent:EA)とは、アメリカの内国歳入庁(IRS)が認可する国家資格です。
アメリカで最も古い国家資格の1つといわれており、アメリカでの税務をはじめとした国際税務の専門家としての活躍が期待されている資格です。また、アメリカだけでなく、日本・韓国・カナダ・イギリス・インドで受験が可能な資格となっています。
〈参考記事〉
アメリカの法律では、アメリカ人だけでなく永住者(いわゆるグリーンカードを持っている人)は、実際の居住地に関係なく常に米国居住者として認識され、国内外のどこに住んで所得を得たとしても、アメリカに全世界での所得を申告しなくてはなりません。
実際の納税については、居住国での納税と重複しないように調整がおこなわれますが、申告は必須です。
そのため、税務申告を代行する米国税理士(EA)の需要が世界中にあり、国籍を問わずに受験が可能となっています。
日本ではまだあまりなじみのない資格かもしれませんが、世界中のアメリカ人の税務申告をおこなうことが可能という意味では、住むところを選ばずに活用できる資格です。
また、日本においては米国の税務制度に通じているという人材はまだ少ないため、会計事務所や税理士法人、米国会計基準を採用している企業などへの転職の道も開かれています。
米国にも日本と同様、税理士だけでなく会計士資格があります。こちらは米国公認会計士(USCPA)と呼ばれています。
日本では、税理士試験と公認会計士試験はともに国家資格の中でも難易度が高いとして知られていますが、米国公認会計士(USCPA)と米国税理士(EA)については、ともに、英語さえできれば難易度は日本のものと比べると低いといわれている資格です。
国際税務を取り扱うこともある大手会計事務所や税理士法人などでは、公認会計士・税理士と米国公認会計士(USCPA)のダブルライセンスを取得している人もよく見ます。
アメリカでは、源泉徴収の仕組みがなく、企業に勤めている人も毎年申告が必要になるため、税務に関する多くの人材を確保する必要があったのか、日本のように税理士の独占業務というのは存在しません。 税務に関する業務については、弁護士や公認会計士、そのほか登録年金数理士などが携わることができます。
試験の範囲も、米国税理士(EA)は米国公認会計士(USCPA)の一部分(TAXのみ)です。そのため、EAの講座を掲げているところでは、USCPAのTAX講座でEA講座を兼ねているところもあります。
また、USCPAは国際相互承認協定制度(MRA)があり、MRAを結んでいる国では、その国の会計士資格を所有していなくても、その国で会計士業務ができるようになります。一方、米国税理士はMRAがないため、米国税理士のみを持っていてもアメリカ以外の国の税務業務を行うことができません。
日本で受験が可能な両資格の違いを表にまとめてみました。
米国税理士(EA) | 米国公認会計士(USCPA) | |
---|---|---|
アメリカ内国歳入庁への税務申告 | 行うことができる業務 | アメリカの会計基準に沿った会計監査/税務業務も対応可能 |
3科目 | 試験 | 4科目 |
18才以上 | 受験資格 | 大卒以上 |
科目によって異なるが60~80%程度 | 合格率 | 45%程度 |
200~300時間程度 | 勉強時間 | 1000時間程度 |
このようにしてみると、米国公認会計士(USCPA)は、米国税理士(EA)に比べて難易度の点で高く、業務の範囲も広いことがわかります。
もし米国公認会計士(USCPA)を取得できればその方が良いのです。
〈参考記事〉
米国税理士について調べている中で、「意味がない」という意見を目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、そのような意見が出てくる理由を解説します。
米国税理士は意味がないといわれてしまうのは、資格取得者だけ行うことができる独占業務がないという点が挙げられます。
USCPAには監査という独占業務があります。一方、税務に関する業務は米国税理士の独占業務ではなく、USCPAや弁護士も行うことができます。そのため、USCPAと比較して「意味がない」と言われることがあるのです。
〈参考記事〉
また、米国税理士が意味がないといわれる理由として、取得しても日本での就職や転職にすぐに活かせないということがよく挙げられます。
米国税理士は米国の税理士資格であるため、海外で働く際や外資系企業では有利になると想像できるでしょう。しかし、日系の企業などでは意味がないと思われがちです。また、日本の税理士資格の独占業務である税務の代理や書類の作成、税務相談などを行えないため日本での就業に活かせないと考える人が多いと考えられます。
では、実際に米国税理士は意味のない資格なのでしょうか?ここでは、米国税理士を取得するメリットについて4つご紹介します。
米国税理士の資格を取得していると、就職・転職する際に国際的な税務知識だけでなく英語力もアピールすることができます。英語力の高さだけでなく、英語力を活かして資格を取得したという姿勢を高く評価される可能性もあります。税務にかかわる実務的な英語力の高さを証明することもできるので、税務の知識と英語力が必要とされる企業への就職・転職で有利になります。
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日本ではまだまだ税務に関する英語が得意な人材は多くありません。
実際のところ、アメリカでも日本でも、米国税理士(EA)は米国公認会計士(USCPA)に次ぐ地位と見なされていますが、英語で専門業務ができるということで、いわゆるBIG4や国際的な業務をおこなっている企業に向けて、就職・転職への扉を開く可能性が高まります。
例えば、アメリカを拠点とする外資系企業においては、日本で仕事をしているアメリカに国籍を持つ人が多く働くため、アメリカに対して確定申告を行う際に米国税理士が必要となります。日本の企業がアメリカに進出する場合でも米国の税務の知識は必要なので、米国税理士の資格を取得していると重宝される可能性があります。
さらに、アメリカの企業を相手に仕事をしている国際会計事務所・税理士事務所では、米国税理士の資格に対する需要が常にあります。
このように、大手会計事務所や税理士法人、国際的な業務を行う大手企業や外資系企業の日本支社などへの就職や転職を目指す際には米国税理士を強みとして生かせるでしょう。
〈参考記事〉
米国税理士の資格を取得していると、日本国内だけでなく米国で働くこともできます。日本では企業で源泉徴収などの税務処理を行いますが、アメリカでは個人で税務申告を行わなければなりません。米国税理士の独占業務はないものの、日本に比べると税理士への需要が高いので、米国で税理士として働ける可能性もあります。
税理士試験と聞くと、日本の難関試験を思い浮かべてしまう方が多いと思いますが、米国税理士の試験はそこまで難しくありません。というのも、選択問題(四択)のみで、筆記や記述がないのです。また、18歳以上なら特に条件なしで受験が可能で、使われている英文も大学生レベルであれば専門用語を覚えれば読み解けるものです。
上述の通り、米国の資格として真っ先に上がる米国公認会計士(USCPA)に比べても難易度は低く、TAX部分の内容は重複するので、いずれは米国公認会計士(USCPA)を目指そうという人にもおすすめできます。また習得した税務の専門知識を活かすことで、日本の税理士資格の取得も狙いやすくなるでしょう。
このように、米国税理士の取得をきっかけに、さらに高度なライセンスの取得とステップアップを目指せるといえるでしょう。
〈参考記事〉
ここまで、米国税理士は独占業務はなくとも、米国は個人で確定申告を行う必要があり税理士の需要が高いこと、また大手会計事務所や税理士法人、外資系企業などへの就職・転職の際には強みとして活かすことができることを解説してきました。
さらに、米国税理士は、
・米国税理士(EA)を足がかりに米国公認会計士(USCPA)取得を目指す
・アメリカ税務に関わる仕事をしており、実務知識の裏付けのために取得する
といったような、自身のスキルを高めるためのステップや知識の裏付けとして、非常に価値のある資格であるといえるでしょう。
もしアメリカの税務に関して、現在すでに自分の業務として今取り組んでいたり、これからアメリカ税務を業務として取り組みたい時には、米国税理士は実務知識の裏付けとなり、社内外の評価向上につながるでしょう。
最後に、米国税理士を目指す方から多く寄せられる疑問についてこちらでご紹介していきます。
米国税理士になるためには、3科目から構成される試験に合格する必要があります。問題文は全て英語ですが、記述問題ではなく四択の選択問題です。また試験合格後、米国税理士として登録をするための実務経験が必要ないため、すぐに登録して名乗ることができます。
〈参考記事〉
米国税理士は以下のような人におすすめです。
USCPAより少ない勉強時間で取得できるため、USCPAを目指している方の最初のステップとして米国税理士はおすすめです。また、受験資格も18歳以上という年齢制限のみであるため、今すぐ受験したい人にも向いているでしょう。
今後、ビジネス環境がさらに多様化することが予想される中、国際税務を英語で理解することができる米国税理士の需要も増加していくでしょう。税務の領域でグローバルに活躍したい方や、外資系企業などを目指したい人にはおすすめの資格であり、目指す価値のある資格であるといえるでしょう。
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