近年、海外の企業が日本に進出したり、日本企業が外国会社との取引を活発化させたり、海外に子会社を設立したりすることが増えています。いわゆるグローバル化です。
そうした場合、税理士も日本の税制だけでなく海外の税制にも通じる必要が生じます。
しかしニーズがあっても、ビジネスに必要なレベルの英語力を持つ税理士はまだまだ数が少ないのが現状です。本記事では、税理士が英語を身につけた場合の今後のキャリアについて解説します。
日本の会社や個人事業主だけを顧客にとして、いままで活動してきた税理士の方は多いと思います。しかしながら、昨今のAIの技術発展により、申告業務自体が自動化され、税理士は不要になるのでは?という予想もされている記事などを、ニュースなどでご覧になったこともあるのではないでしょうか。
実際、会計ソフトの普及により、記帳代行業務などの定型作業は減ってきています。
さらに、税理士自体は定年退職がない仕事なので、資格保有者はここ20年ほど、毎年増加している状況。令和元年10月末日現在で78,570名が税理士として登録されています。
しかし、税理士の主な顧客である中小企業については、昨今の経済状況によりこの20年間その数はどんどん減少しています。優良企業であっても、少子化の問題で後継者がおらず、やむなく廃業するというケースも少なくありません。日本政府はこの現状をなんとか食い止めようと、事業承継に関する税制の優遇政策などをとってはいますが、1999年には485万あった中小企業は、2016年には359万と大きくその数を減らしています。
出典:経済産業省:2019年版中小企業白書 第1部 平成30年度(2018年度)の中小企業の動向第1節 企業数の変化
つまり、税理士の数は増えているのに、担当する企業の数が減っており、顧問契約を獲得する競争が激しくなっているのです。そうなると、今度は税理士の供給過多による価格の下落が起こりえます。
資格を取ったら一生涯安心という時代ではもうなく、資格取得後もプラスαの強みを付けることが求められているのです。
これからのキャリアとして、大手の監査法人税理士法人の転職を考えている人もいらっしゃるでしょう。
特に大手を目指したい人であれば、これからの時代英語力は必須と言えます。
というのも、大手監査法人や税理士法人が担当するような企業は、国内企業であったとして
も** IFRS(国際会計基準)を導入する企業が急速に増えてきている**からです。
条文の原文を理解できる英語力というのは、実務上でも大きなプラスになります。
また、国内企業を主に担当することになっても、年次が上がるにつれて、全世界の系列事務所が行う国際的なプログラムに参加する機会が増えてきます。キャリアアップという面で、海外赴任のチャンスが巡ってくることもあるでしょう。
こうした様々なステップアップの機会を「英語ができないから……」という理由で逃してしまうのは、非常にもったいないことです。
つまり、今現在必要であるからというよりも、これからのキャリアを中長期的な視野に立って考えた時には、英語力を身につけておくことが様々な局面で有利に働くのです。
英語力を身につけて、税務関係の仕事を出したいということであれば、グローバルな国際資格である米国税理士試験を受験してみるのはいかがでしょうか。
米国税理士の受験は、学歴や国籍の制限もなく18歳以上なら誰でも受験が可能です。ただし、受験の際にはパスポートが必要となります。
アメリカでは日本と異なり、給与収入がある方であっても、全ての人が個人で税金の申告を行う必要があります。そのため税理士の需要は非常に高く、それをサポートするのが米国税理士です。米国税理士は、アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)実施の国家試験に合格し、国家資格を取得した人を指します。
つまりアメリカでは日本よりも税理士のニーズが非常に高い環境と言えます。
アメリカの会計関連の資格ですと、米国公認会計士が知られていますが、これはアメリカの各州が認定する試験のため、合格した州でしかその業務を行えません。それに対して、米国税理士は国が認定する国家資格。つまり、米国税理士に合格すればアメリカ全土で業務を行えるというメリットがあるのです。
なお、米国税理士の資格を取ったからといって、アメリカに移住する必要はありません 。
例えば仕事の関係などで、日本に住むアメリカ人は、アメリカ本国に対し税務申告を行う必要があります。しかし、アメリカに対する税務業務は日本の税理士資格ではできませんので、米国税理士の資格が必要です。
こうした顧客を得ることができれば、日本国内で米国税理士の資格を活かす機会は数多くあります。もちろん、米国税理士資格があれば、専門職としてアメリカ全土で働くことができますので、移住を考えている人にも非常に有効な資格です。
米国税理士の試験は、アメリカに行かなくても東京や大阪などを国内で受験ができます。
英語力としては、試験問題を読みこなすためには TOEIC 600点+出題範囲の専門用語がわかるレベルは最低でも必要です。回答は選択式なので、難易度は日本の税理士試験に比べると低いと言えます 。
米国税理士は、そのニーズの割にはまだまだ資格保有者が少ないので、外資系企業や海外で働きたい人にはとても有利な資格です。
「税理士としてこれからも働いていきたい」そう考えた時に、ニーズが高い税理士になるということは不可欠です。
税理士+αのスキルを身につけるにあたって、これからおすすめなのは英語。
英語力を身につけることで、新たな可能性が開けます。是非これからのキャリアのためにも英語を勉強しておきましょう。