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算定基礎期間とは失業したときに重要な期間。転職しても通算可能

社会保険労務士 田中かな
算定基礎期間とは失業したときに重要な期間。転職しても通算可能

「算定基礎期間」とは、失業したときに雇用保険からもらえる基本手当の所定給付日数を算定するために用いられる期間です。転職した場合、前職の期間を通算できるケースとできないケースがあります。今回は雇用保険における算定基礎期間の概要や、紛らわしい用語との違いについて解説していきます。

算定基礎期間とは

「算定基礎期間」とは、基本手当(いわゆる失業保険)の所定給付日数の上限を決めるための期間をいいます。「雇用保険の被保険者であった期間」や「就職から退職までの期間」と、ほぼ同じ意味です。

基本手当の所定給付日数とは、基本手当が支給される日数(上限)のことです。算定基礎期間の長さによって何日の給付を受けられるのかが決まります。

以下は、基本手当の受給要件を満たす人が、自己都合で退職した場合に受けられる所定給付日数です。※解雇や倒産など会社都合で退職した場合は、年齢と組み合わせた別の基準が用いられます。

-算定基礎期間が20年以上……150日
-算定基礎期間が10年以上20年未満……120日
-算定基礎期間が10年未満……90日

出典:基本手当の所定給付日数|ハローワーク インターネットサービス

算定基礎期間は通算できる

転職などで雇用主が変わった場合でも、算定基礎期間は通算できます。たとえばA社で10年間勤め、期間を空けずにB社でも10年勤めて辞めた場合には、算定基礎期間が20年以上となるため、基本手当は150日を上限に支給されます。

-A社で10年勤務
-B社で10年勤務
-算定基礎期間は通算して20年なので基本手当の所定給付日数は150日

1年超の空白期間があると通算できない

同じケースで、A社を辞めてからB社に入るまでに1年を超えた空白期間がある場合は、算定基礎期間は通算できません。この場合はB社に就職してから離職するまでの10年のみが算定基礎期間としてカウントされます。算定基礎期間は10年以上20年未満となるため、基本手当の所定給付日数は120日です。

-A社で10年勤務
-1年を超える空白期間
-B社で10年勤務
-算定基礎期間はB社で勤務した10年なので基本手当の所定給付日数は120日

基本手当等を受給した場合は通算できない

同様に、A社とB社の間に1年を超す空白期間はないが、A社を辞めた後に基本手当等(再就職手当や特例一時金も含む)を受給していた場合を確認しましょう。この場合、A社の算定基礎期間とB社の算定基礎期間は通算されず、B社の算定基礎期間のみで基本手当の所定給付日数が決定されます

-A社で10年勤務
-基本手当を受給
-B社で10年勤務
-算定基礎期間はB社で勤務した10年なので基本手当の所定給付日数は120日

すでにA社で働いた期間にもとづき基本手当を受け取っているのですから、考えてみれば当たり前のことかもしれません。ただし、A社を辞めた後にハローワークに行き、基本手当を受給できる資格を得たものの、実際には基本手当を受け取らずにB社へ就職した場合には算定基礎期間を通算できます。

1年超の空白期間があると通算できない

育児休業給付を受けた期間は算定基礎期間から除かれる

算定基礎期間は、基本的には雇用保険の被保険者であったとなりますが、育児休業給付を受けた期間については1日単位で算定基礎期間から除かれます

たとえば同じ会社で11年間、正社員として働いていたAさんが自己都合退職で辞めた場合、算定基礎期間が10年以上20年未満なので、基本手当は120日を上限に支給されます。

しかし11年間のうちに2年間は育児休業を取得し、育児休業給付をもらっていた場合、その期間は算定基礎期間から除かれます。したがってAさんの算定基礎期間は10年未満となり、基本手当の上限が90日になります。育児休業給付をもらっていた分は、基本手当をもらえる日数が少なくなるということです。

なお、介護休業給付金については算定基礎期間から除外されません

「被保険者期間」との違い

算定基礎期間と間違えやすいのが、雇用保険の「被保険者期間」です。算定基礎期間(被保険者であった期間)と被保険者期間は、異なる概念です。

被保険者期間は、基本手当などの受給資格を取得できるかどうかを判定するための期間です。基本手当を受給するには、原則として離職前の2年間に、被保険者期間が12ヶ月以上必要です。倒産や解雇などの理由で離職した場合は離職前の1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あれば足ります。

離職日からさかのぼって1ヶ月ごとに区切り、賃金の支払いの対象となった日数が11日以上ある月を被保険者期間1ヶ月として計算します。

※2020年8月1日以降に離職した人は、賃金の支払いの対象となった労働時間数が80時間以上ある月も対象ですが、ここではわかりやすく解説するために加味しないものとします。

出典:失業等給付の受給資格を得るために必要な「被保険者期間」の算定方法が変わります|厚生労働省

たとえば1月1日に就職し、6月30日に退職したBさんの、各月の賃金支払いの対象となった日が以下のケースを見てみましょう。

-1月:22日
-2月:18日
-3月:9日
-4月:8日
-5月:20日
-6月:18日

この場合、算定基礎期間は単純に、就職した1月1日~6月30日までの6ヶ月間です。一方、3月と4月は賃金の支払いの対象となった日が11日未満ですから、被保険者期間には含まれません。上記のケースでは、算定基礎期間6ヶ月のうち、被保険者期間は4ヶ月ということになります。もしもこのケースでBさんが解雇などを理由に離職していた場合、被保険者期間が6ヶ月以上ないため、基本手当はもらえないのです。

「算定対象期間」との違い

算定基礎期間と似た呼び名の期間に「算定対象期間」があります。とても紛らわしいのですが、算定基礎期間と算定対象期間も異なる概念です。

前述のとおり基本手当を受給するには、原則として離職前の2年間に、被保険者期間が12ヶ月以上必要です。この2年間を算定対象期間といいます。

たとえばBさんが2020年4月1日に就職し、2023年3月31日に離職したとします。この場合、Bさんの算定基礎期間と算定対象期間の関係は次のようになります。

-算定基礎期間:2020年4月1日~2023年3月31日
-算定対象期間:2021年4月1日~2023年3月31日

まとめ

算定基礎期間とは、失業したときにハローワークから支給される基本手当を「何日分受け取れるのか」を算定するための期間です。転職した場合でも、基本手当を実際に受け取っていなければ前職の算定基礎期間を通算できます。被保険者期間や算定対象期間など、間違えやすい期間がありますが、それぞれ別の概念であることを覚えておきましょう。

この記事を書いたライター

求人関連企業の経理部門に在籍中、社会保険労務士資格を取得。その後、会計事務所や総合病院での労務担当を経験し、現在はフリーランスのライター・校正者として活動中。ジャンルは労働問題を得意とする。
カテゴリ:コラム・学び

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