人事の仕事は、大きく分けると「戦略」「企画」「運用・管理」「オペレーション」の4分野に分類できます。今回はその中でも「人事企画」業務にフォーカスして、仕事内容と求められる能力について解説してきます。
人事企画とは、経営戦略に基づいた人事戦略を実行するための計画を立てる仕事です。
企業によっては人事戦略の立案からおこなう場合もあり、会社の組織体制や、適正な人員の配置など、会社の屋台骨を作ることから、人事考課の評価方法や採用戦略、研修体制の構築まで、幅広い仕事内容が含まれます。
人事戦略に基づき、構築された組織に、どのように人員を配置するかを計画するのは、人事企画の代表的な仕事の一つです。
会社と部門の売り上げや、そこから得られる利益、必要な業務内容をもとに、人件費と社員数を割り当てます。
(1)に準拠しますが、足りない人材や補充人材をどのように採用するか、新卒採用も含めて計画します。実際の採用活動は、運用担当がおこなう場合もありますし、採用計画も含めて人事の採用担当者が企画する場合もありますが、いずれにしても予算配分も含め、人事企画の承認が必要となるケースが多いです。
就業規則をはじめ、給与や賞与、退職金や各種手当、福利厚生など、待遇にまつわる諸規定を作成するのも人事企画の仕事です。
また、規定に基づく運用のために、システム導入をおこなう場合は、その選定なども対応することがあります。
人事考課において、どのように社員を評価するか基準を作成します。社員のキャリアパス設定と、昇格・降格基準などを含め、できる限り公平感のある基準の作成が求められます。
社員研修や資格試験受講など、社員教育にまつわるプログラムを企画する仕事です。自社にふさわしい人材をどのように育成するか、コンプライアンス教育などの対応も含まれます。
企業戦略に基づいて、社員が働きやすく納得感のある制度を作るのは並大抵のことではありません。近年はそれに加え、「働き方改革関連法」の対応も求められています。
人事部なりに考慮した人員設定、人事異動や配置についても、それぞれの実務を担当する部署からは不満が出るのが当たり前であり、評価制度や教育制度を取っても、誰もが満足するものというのは作りようがありません。
人事企画ではいつも以下のいずれかの問題を抱えています。
・効率的な採用活動がおこなわれていない
・良い人材が採用できていない
・人材教育をより効果の高いものにしたい
・人事評価が適正におこなわれていない
・人事異動が適切におこなわれていない
・人事配置が適材適所ではない
・各部門から人事に関する不平不満がある
・経営方針が各部門にうまく浸透しない
など
「これが完璧」というものが存在しないからこそ、人事企画は常により良い組織とは何かを考え、社員が最高のパフォーマンスを出せるような組織を試行錯誤しているのです。
人事部門を目指す方は、いつかは人事企画をやってみたいと思うことが多いですが、人事企画の仕事をするためには、どのようなことが求められるのでしょうか。
人事企画は、高い専門性が求められる職種です。転職での募集を見ることも珍しくはありませんが、未経験で人事企画を募集することはまずありません。
人事部門での業務経験というのが少なからず求められます。
コミュニケーション能力は、企業で働く上ではどの仕事でも少なからず求められますが、人事企画においては、より高いコミュニケーション能力が必要となります。社内外だけでなく、経営層や自分より職位が上の管理職とのやりとりも多くなるだけでなく、ある意味で、社員の運命を変えてしまうような仕事なので、恨みをかったり、トラブルに巻き込まれることもないとは言えないからです。
そもそも、人事企画に求められているのは、人事による企業の生産性を上げることです。そのためには、たとえば、相性の悪い社員同士を同じ部署に配属させないなど、公平性よりも実利を取った方が良い場合もあります。
もちろん、休職者の情報などを見れば、前後の配属がどうだったかはわかりますが、休職までいかなくても、管理職のパワハラや社員いじめの情報は、表面化していなものも多いのです。
(2)のコミュニケーション能力もそうですが、社内の人間関係を把握するためには、ある程度の情報収集能力が求められます。
人事企画は、企業の規模が大きくなるほど重要性の高まる仕事です。社員のモチベーションを高める企画をおこなうことで、会社全体のパフォーマンスがアップするという大きな成果を得ることができます。
人事部は、今までは、社内のことをよく知る叩き上げの社員が配属されることが多かったのですが、大企業ほど、いままでの慣習に縛られがちということもあり、近年は外部から新しい風を取り入れようと、中途社員を募集しているケースもあります。
最初から人事企画に就くことは難しいと思いますが、人事の実務経験を積むことで、将来的にその仕事に就くことを目標としてみてはいかがでしょうか。
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