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固定残業時間の上限に対する誤解・みなし労働時間制と混同していませんか?

HUPRO 編集部
固定残業時間の上限に対する誤解・みなし労働時間制と混同していませんか?

「固定残業制」はあらかじめ残業時間がある前提で固定の残業代を支払うという制度です。検索すると「みなし残業制」も一緒にヒットするほか、残業時間の上限について「45時間」はいう結果が散見されますが、これは何を基準にしているのでしょうか?
本記事では、固定残業制度とその上限時間、一般に広まっている誤解について解説します。

固定残業制とみなし残業制は全く違う制度

ネットで「固定残業制」を検索すると、「みなし残業制」という言葉が同時に検索されます。
本来は「固定残業代」に基づく「固定残業制」が正しい言葉なのですが、労働基準法に別に定められている「みなし労働時間制」からくる「みなし残業」という言葉が広く一般に使われるようになってしまいました。

この2つは本来全く違う意味の制度ですが、同じように運用されてしまっていることが多く、解説内容も重複してしまっています。

どのように違うかというと、固定残業制とみなし残業制では、あらかじめ設定した残業時間を超えた場合の残業代(時間外手当)の支払についての運用が全く反対なのです。

あらかじめ設定した残業時間を超えた場合の残業代の支払い
・固定残業制:必要
・みなし残業制:不要

例えば、固定残業時間を20時間と定めている会社で25時間の残業をした場合、5時間分の残業代の支払いが生じます。
しかし多くの企業で、そもそもの固定残業時間やその残業代を明記せずに、「みなし残業代を含む」というあいまいな記述で求人を出しているところが散見されているのが現状です。

固定残業時間の考え方

固定残業制度は、その名称にかかわらず、一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金のことです。

固定残業代を定める場合は、あらかじめ何時間分の残業時間になるのかを定め、その分の固定残業代を明記する必要があります。

出典:労働条件相談 ほっとライン|厚生労働省 委託事業

もちろん、その残業代は労働基準法で定められた時間外手当の金額を下回ることはできません。
このあたりの記述を曖昧に書いている企業は、法令を遵守する姿勢が弱いとみられますので、求人票を見る時は注意しましょう。

固定残業制度については、以下の記事で解説しています。併せてぜひご一読ください。
関連記事:固定残業代とは?ホワイト企業を見分けるコツ

固定残業時間と違う!みなし残業時間の考え方

固定残業制と混同されているみなし残業についても触れておきましょう。

みなし残業は、「みなし労働時間制」として労働基準法に定められており、例えば専門職やクリエイティブ職など、労働時間のカウントが困難な業種に用いられることが多いです。

みなし労働というのは、何時間かかっても最初に決めた労働時間だと「みなす」という意味があります。残業時間が超過したとしてもその分の残業代は支払われません。

この部分が都合よく解釈され、固定残業代=みなし残業として何時間でも残業させられるという認識になってしまっています。

固定残業時間の上限はあらかじめ定めた時間

実際の運用において、固定残業制をみなし残業として解釈している企業が多くあることが状況をややこしくしています。

固定残業時間については、例えばその企業が20時間分の固定残業代を定めていれば20時間、30時間の固定残業代を定めていれば30時間というように、あらかじめ決めた時間が上限となります。

あらかじめ決める固定残業時間の上限というのは、時間に対しての残業代が労働基準法に定める最低賃金を上回っていれば特に問題はありません。

固定残業時間の上限が45時間といわれるのは「36(サブロク)協定」よるもの

固定残業時間の上限が45時間という説の論拠は「36(サブロク)協定」です。
残業をさえせる場合は、あらかじめ36協定を締結しておく必要がありますが、2019年4月より、36協定で定められる時間外労働に、罰則付きの上限が設けられました

出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

年間で見た場合、36協定の関係で固定残業時間の上限は45時間までに設定されていないと、労働基準法違反として法的な規制がかかります。

ここから「固定残業時間の上限は45時間」と言われるようになったのでしょう。

固定残業制を取り入れている会社の求人で見るべきポイント

固定残業時間はあらかじめ定めた時間のみ適用となる制度です。
「固定残業代だから残業代は支払わない」という企業の多くは、そもそもの残業時間を設定していない場合があります。

会社側で制度を悪用していないかどうかを確認するために、以下の3点については必ず確認するようにしましょう。

①固定残業制(みなし残業)の場合、その時間が設定されているか
②基本給とは別にその金額が明示されているか
③残業代は時間で割った場合に法で定める基準を満たしているか
(通常の賃金の、2割5分増以上×時間数)

もともとの固定残業制が導入された理由の一つとしては、従業員一人ずつの残業時間から残業代を計算し、給与に反映させる事務作業の手間を省くためという理由もありました。

しかし、固定残業制とみなし残業制が混同されてしまっているために、本来であれば定められた時間を上回った場合は支払う義務のある残業代が支払われないというトラブルが生じています。

ここ数年の働き方改革により、残業時間と残業代の法律は大きく変わっています。
従来の考え方にとらわれず、知識をブラッシュアップしていきましょう。

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この記事を書いたライター

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