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独学で一発合格した税理士試験財務諸表論の勉強法

税理士 井上幹康
独学で一発合格した税理士試験財務諸表論の勉強法

税理士試験の受験生の皆さんこんにちは。税理士の井上幹康です。私は働きながら4回の受験で税理士試験5科目に合格しました。中でも簿記論と財務諸表論は独学で勉強し、財務諸表論は一発合格しています。今回は、そんな私自身の実体験も踏まえて独学で一発合格した財務諸表論の勉強法等について解説していきます。

私の置かれていた環境(前提)

まず、いきなり私の勉強法についてご紹介する前に、私が財務諸表論を独学一発合格した時に置かれていた環境(前提)を以下簡単にご紹介します。というのも、税理士試験受験生は専門学校を活用する方が大多数ですが、私と同じように何らかの事情で簿記論や財務諸表論は独学でやる方も少数ではありますがいらっしゃいます。自身と置かれている環境が全く異なる方の勉強法だとあまり参考にならないばかりか、マネするとかえってよくない場合もあり得ますので、以下私の記事を読む際にもご注意ください。

財務諸表論受験生当時の私の置かれていた環境(前提)

・11月実施の日商簿記1級を独学で合格(74点でギリギリ合格)
・12月から本格的に税理士試験(簿記論・財務諸表論)の勉強を開始
・翌年8月の税理士試験(簿記論・財務諸表論)を受験し財務諸表論のみ合格
・独身一人暮らし(恋人無し)
・社会人受験生(上場企業経理マンとして勤務)

財務諸表論という科目の特徴

まず、財務諸表論という科目は、計算問題50点、理論問題50点で構成されています。計算問題は出題形式(総合問題形式)がある程度固定化されており、繰り返し問題演習を重ねることで安定して40点以上とれるようになります。よって、計算問題は上位層ではあまり点差が付かず、点差が付きやすいのは理論だと思います。また、財務諸表論の理論暗記とは、具体的には、企業会計原則や各会計基準(以下「会計基準」という。)の暗記を意味します。

独学でやった理論暗記

私は日商簿記1級の会計学を勉強していたので会計基準には少し触れていたものの、そこまでガッツリ暗記していなかったため、日商1級合格後はじめに苦労したのが会計基準の暗記でした。

ペースメーカーをもつ

また、独学で理論暗記を進めるには、やはり勉強の進捗を管理するペースメーカー的なものが必要です。私は、毎月定期的に発売されている会計人コース(中央経済社)を購入し、ペースメーカー的に使用していました。

具体的には、今月の会計人コース財務諸表論対策の連載記事で出題されている会計基準を次月までにしっかり覚えるといったように、暗記を進めていました。

会計基準の原文に触れる

さらに、会計基準の暗記は、専門学校が市販している暗記集(会計基準の原文から重要度の高い部分を適宜抽出して効率よく暗記するためのツール)ではなく、会計基準の原文がすべて網羅されている会計法規集(中央経済社)を使用していました。

具体的には、会計人コースの連載記事で出題されている会計基準の原文を確認し、条項番号のところに確認した日付や会計人コースの何月号で出題されているのかなどをメモしたり、勉強した痕跡を残したりしていました。こうすることで、チェックされた部分が増えていけば自身の勉強のモチベーション向上につながりますし、あとでまた会計法規集を見返した際にどこがまだ未学習なのかが浮き彫りになります。

受験生の中には、会計法規集で会計基準の原文なんかいちいち読まないで専門学校の暗記集で試験に出そうな部分だけ効率よく暗記したほうがいいと思う方もいらっしゃると思います。もちろん、試験に合格することだけ考えたらそれもアリかと思います。しかし、税理士試験合格後に税理士として仕事をする際には、入口として、試験勉強で暗記した知識、市販の書籍、ネット情報などは有用ではありますが、必ず最後は税法条文や会計基準といった根拠法令等の原文を確認する必要があります。

これはあくまでも私の考えですが、試験と実務を完全に別々に考えるのではなく、できるだけ試験と実務を関連付けて実務にも生きる試験勉強を心掛けると単調で辛い暗記作業も少しは楽しくなり、勉強を継続する原動力にもなると思います。

過去問は早めに触れる

過去問を解き始める時期としては、一般的には直前期(5月~7月)からという方が多いのではないかと思いますが、私は3月くらい少しずつでも過去問を眺めて解ける部分は解いていました(理論だけでなく計算も)。

過去問は貴重な勉強資源であり、本試験と同じく2時間で解かないともったいないという意見もあると思いますし、その考えに異議はありません。ただし、社会人受験生の場合、勉強に割ける時間が限られているというのは上記でも述べた通りですし、直前期はアレもコレもとやり残したことが多くなりがちで、過去問をじっくり解く時間が取れない方も多いのも事実ではないかと思います。結局あとで過去問を解こうと思って解かずじまいというのが最悪のパターンですので、特に社会人受験生は応用期くらいから少しずつ過去問を解き進めておくことをお勧めします。

独学でやった計算問題対策

次に、計算問題についてですが、私自身は日商1級の商業簿記で勉強した内容がほぼそのまま財務諸表論の計算問題に生かせました。日商1級の商業簿記よりも財務諸表論の計算問題の方がボリュームが多いですが、やるべきことはほぼ同じなのであとは問題演習を繰り返して財務諸表論の計算問題の形式になれるだけでした。

間違いノート、間違いリストを作る

冒頭でも述べたとおり、計算問題は出題形式(総合問題形式)がある程度固定化されており、合格県内にいる上位層ではあまり点差が付かないため、ケアレスミスや取りこぼしが命取りになります。これには適宜簡単な間違えノートや間違えリストを作成する等の対策が効果的でした。

計算問題に時間をかけすぎないように

また、計算問題が得意な方(私も含む)はどうしても計算問題に時間をかけすぎて理論問題を解く時間を削ってしまいがちになります。しかし、2時間という試験時間内で理論と計算の合計点をいかに最大化するかを考えていかないとなりません。

一概に計算70分、理論50分などと決めつけると問題によってはその時間配分が合わない場合もありますが、過去問演習を通じてだいたい計算と理論の時間配分をどれくらいにすると得点が最大化しやすいかという自分自身の統計を把握しておくと良いと思います。

具体的には、同じ問題でも計算と理論の時間配分を少し変えて解くことを繰り返してベストな時間配分を探るとよいでしょう。また、慣れてくれば初見での問題を見渡しただけで、計算と理論の時間配分をある程度フレキシブルに想定できるようになると思います。

独学でも専門学校の全国模試は受けた

直前期(6月~7月)は大原やTACで全国模試が実施されます。私は独学でもこの全国模試は会場で受験しました。

独学だとどうしても閉鎖的な環境で勉強することが多くなりますので、たくさんの受験生に囲まれて受ける本試験の緊張感はかなりのものになります。そこで、仮想本試験をとして周りにたくさんの受験生がいる中で会場受験できる全国模試は貴重な機会なので1回でも多く経験しておくべきだと思います。

試験委員対策はこれといってやらなかった

税理士試験は定期的に試験委員の先生が変わるので、特に新任の先生の研究分野や著書などをリサーチして試験に出やすい論点を厚く対策しておくのが有効とされています。

専門学校を使っていれば、こうした試験委員対策は専門学校がやってくれるのですが、私は独学でしたので財務諸表論の試験委員対策はこれといって自分でやっていませんでした。

実際に試験委員対策を特にやっていない私でも普通に合格していますので、試験委員対策が合格に必須というわけではないですが、例えば、独学で勉強していたが思うように勉強が進んでいないけれども試験は山を張ってでもあきらめずに受験したいという方は、直前期だけ専門学校の模試パック等の単発講座を受講して専門学校の講師に試験委員対策について質問するとよいと思います。

おわりに

財務諸表論は、税理士試験の中でも合格率の高い科目です。ですので、財務諸表論が最初に受かった科目という方は多いと思います。税法科目も基本的には財務諸表論と同じく計算50点、理論50点の配分なので、財務諸表論の勉強で身に着けた時間配分の見極め方や理論暗記の方法は税法科目の勉強にも生かせる部分があります。まずは財務諸表論をしっかり合格し、その後の税法科目へとつなげていきましょう。
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この記事を書いたライター

大学在学中に気象予報士試験に独学一発合格。社会人として働きながら4年で税理士試験官報合格。開業税理士として税務に従事しながら不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験や不動産鑑定士試験受験生向けの相談サービスや会計学ゼミも開催。
カテゴリ:資格試験

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