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会計士のIFRS知識と転職の関係

公認会計士 大国光大
会計士のIFRS知識と転職の関係

公認会計士が転職する際は少しでも自分の専門分野とリンクしている方が良いと考えると思います。専門分野の一つとして挙げられるのがIFRS(国際財務報告基準)です。
今回は、このIFRSの知識と転職の関係について現役公認会計士が解説します。

IFRSとは

IFRSとは、International Financial Reporting Standardsの略で、日本語では国際財務報告基準や、国際会計基準と訳されます。読み方は「アイエフアールエス」や「イファース」とされることが多いです。
従来、日本国内で上場している企業は日本の会計基準での決算または米国会計基準での決算しか認められていませんでした。
しかし、企業がグローバル化するにつれて海外の投資家も増えてきたこともあり、国際的に認められている会計基準であるIFRSも任意で適用することができるようになりました。

転職でIFRS知識が求められる企業

IFRSは一般的にグローバル企業で採用されている為、売上高も何千億から何兆円という企業でニーズがあります。しかし、最近ではIPOの際にIFRS適用をしていたり、売上も100億くらいでIFRSを適用していたりと、中小の上場企業でも積極的に採用しています。

企業を買収すると、買収価額と相手企業の純資産の差額をのれんとして資産に計上する会計処理が行われます。日本基準ではそののれんを20年以内の定額法で徐々に費用処理していきます。一方でIFRSでは基本的に償却は行われないため、のれんの償却費分だけ費用が減少することになります。

このように、のれんの償却費のためにIFRS導入をしている企業も多々あることから、M&Aを積極的に行っている企業でIFRSの採用率が増えていると考えても良いでしょう。

転職で求められるIFRS知識

では、転職で求められるIFRS知識は具体的にはどのようなものでしょうか。
全てのIFRS知識を揃える必要はありませんが、どの企業も論点になりやすい分野については覚えておくとよいでしょう。

①のれんの減損テスト

先ほどお話したのれんについて、IFRSは原則非償却となりますが、減損テストというものは毎年行わなければなりません。減損テストでは舞期末そののれんが簿価以上のキャッシュフローを生み出すかどうかを判定し、生み出さないと判定されたら即座に簿価を切り捨てるものです。
事前に、減損で使用する割引率をどうするか、企業ごとに指標をどう変えるか等をしっかりと勉強しておくべきでしょう。

②リース会計

IFRSと日本基準の大きな違いはリース会計にもあります。
例えば、土地と建物を丸ごと賃貸している場合、日本基準では建物をファイナンスリースとして資産計上して、土地をオペレーティングリースとして費用処理することが多いです。
一方IFRSではオペレーティングリースも原則資産計上となるため、土地建物どちらも資産計上となります。この時土地の取得原価はいくらになるか、耐用年数はどうするかなどが論点となりやすいです。
この点は勉強で身に着けるのが難しい分野ですが、実務がまだ定着していない分野ですので、自身で方針を決めていけるところでしょう。

③収益認識

現在日本でも収益認識基準があちらこちらで話題になっていますが、IFRSでは既に新しい収益認識基準が採用されています。出荷基準で良いのかどうか、本人取引であるか代理取引であるか等の様々な論点があります。
収益認識については日本で適用される予定の基準とかなり似ている為、そのような解説本を一度読むと全体像がつかめると思います。

④開示事項

IFRSでは財務諸表が日本基準よりもすっきりしており、表示方法が少々違います。よって、その組替調整という作業が必要になります。
BS、PLがすっきりしている一方で、注記の量はとても多いです。よって、日本基準では収集しなくても良かった事項をIFRSでは収集しなければなりません。
この点は、本を読むことよりもIFRS適用企業の決算書を何社か見比べてみるとだいたいのイメージがつくと思います。

IFRS知識は転職に必須?

今までIFRSの簡単な論点を書きましたが、それでも「何言ってるのかわからない」というくらい抵抗感がある会計士の方もいらっしゃるかもしれません。
では、IFRS経験者でないとIFRS採用企業への転職は厳しいのでしょうか。

結論から言えば経験があるほうがもちろん良いですが、なくても十分に対応は可能です。というのも、そもそもIFRS経験のある会計士のほうが未だ少数ですので経験者ばかり採用するのは難しいと言えます。また、IFRSの知識は2冊程度本を読めば大よそ理解はできるものとなっています。実際、IFRSを適用している企業はIFRS未経験かつ公認会計士ではない経理担当者がそれぞれ一から調べて作り上げる、という光景も珍しくありません。

IFRSの経験が無くても、転職活動中、もっといえば入社してからでも十分間に合います。ただし、入社してすぐ決算などで時間があまりない場合は今のうちにIFRSについて勉強をしておくべきでしょう。

まとめ

IFRS適用企業は増えていることもあり、IFRS知識のある会計士のニーズは高まっています。しかし、IFRSに直接的に触れたことが無くても自身で勉強することで知識があると認められれば、積極的に採用されることでしょう。最初はとっつきにくい基準ですが、慣れると結構楽しいものですよ。

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この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:転職・業界動向

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