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IFRS検定の難易度は?どんな職場で有効利用できるの?

公認会計士 大国光大
IFRS検定の難易度は?どんな職場で有効利用できるの?

IFRS(国際会計基準)という言葉は会計に携わっていたら一度は聞いたことがあるでしょう。国際会計基準と名の付くように、現在国際的にスタンダードとなってきている会計基準です。ヨーロッパで生まれたIFRSは各国の会計基準を引っ張る存在であり、日本の会計基準も徐々にIFRSに近づいてきています。
一昔前は米国会計基準が世界的なスタンダードになる可能性があったにも関わらず現在はIFRSがスタンダードになりつつあります。このようにIFRSはグローバル化している現状はとても重要な基準であることがわかると思います。
今回は、IFRS試験について難易度やどのような職場で有効活用できるのかを現役公認会計士がお話します。

IFRS検定の内容は?

IFRS検定は、年3回の2月、6月、11月に行われます。受験資格は特にないため誰でも申し込みをすれば受験できます。受験会場は日本であれば東京または大阪となりますので地方在住の方は注意が必要です。

内容としては、IAS(国際会計基準)及びIFRSの基準の中から60問出題され、マークシートによって回答していき、正答率60%以上で合格となります。公表されている各基準から理論的な問題や計算問題が織り交ぜられています。特定の論点ばかり出題されるわけではなく、横断的な知識を求めてくる傾向にあるようです。

IFRS検定の難易度は?

IFRS検定は問題を持ち帰ることができないため正式な過去問はありませんが、受験者の体験談や各種予備校の話を総合すると、計算問題は簿記2級レベルにプラスアルファした内容が出てきます。ただしそのプラスアルファが退職給付や税効果会計等見慣れない論点が出てくる可能性があるため注意が必要です。

理論問題はその基準で求めている用語の定義等が問われます。フレームワークと呼ばれるIFRSの概念等、日本基準を知っていてもIFRSについて触れたことのない人にとっては理解しづらい内容も出てきます。

ここで、合格率を見てみましょう。令和元年6月の試験では合格率73.9%となっていますが、一つ前の平成31年2月の試験では合格率42.9%と、30%以上の差があります。

これは受験者の相対的な評価ではなく、正答率60%を合格とするように、絶対評価によって合否判定されているからです。よって、難易度は受ける日によっても変わってくるため注意が必要です。

これらを総合的に考えれば簿記2級程度の知識は必須と言え、それに加えてIFRSを幅広い知識を広く浅く知る必要があります。正直、真面目に勉強すれば合格率はとても高くなりますが、会計を知っているからとIFRS全般についてあまり勉強しないと合格は難しいと言えるでしょう。IFRS固有の言い回し等は勉強しないと身につきません。

IFRS検定合格したらどんな職場で活かせるか

IFRS検定に合格したということは、IFRSに関連した仕事を考えると思います。ということは、必然的にIFRS適用会社での仕事が主となります。しかしIFRS適用会社は日本では超大企業か一部の大企業でしか取り入れられておらず、選択肢はとても少ないものと思います。

これ以外にも、これからIFRS適用をしようとしている会社もあります。IFRSを適用している会社とこれからIFRSを適用しようとしている会社は証券取引所のホームページにて適宜公開されているので、こまめにチェックしてみましょう。

さて、IFRSを適用している企業が見つかったら次は職種です。一番わかりやすいのは経理でしょう。IFRSを適用している企業のほとんどがまず日本基準で財務諸表を作り、IFRSの財務諸表となるように必要な調整を行います。その調整はIFRSに沿っているかどうかを検討したうえで行いますのでIFRS検定の知識が活かせます。

ただし、あまりにも大きすぎる企業となると各論点は各部署で行っており、かなり深いレベルでの議論が行われてしまった後ということもあり、幅広さよりも深さが求められます。深さについては各基準を原文で読み込み、現場で応用することで習得していきます。

経理以外では、監査法人での仕事が存在します。監査法人は公認会計士の資格が必須ですので、これにプラスアルファしてIFRS検定合格ということになります。IFRSの知識は現状公認会計士でも一部の人しかないのが実情で、IFRS検定に合格していることがわかればIFRS部署への異動のアピールとなります。
IFRSは原則主義と呼ばれるように基準の理解度に加えてそれを応用する力が試されるため、その応用する力はその部署で培うということになるでしょう。

IFRS検定は他の経験や資格と併せて活用

IFRS検定は、IFRSの基礎を知っているということをアピールするには良い資格だと思います。現に、公認会計士として第一線で働いていてもIFRSに全く携わっていないのであれば試験合格は難しいと言えますし、IFRSに対応できません。

一方で、IFRS検定のみ合格していても会計の実務がわからないとすると活かす場面が少なくなってしまいます。
このように、IFRS検定は他の経験や簿記の上位資格等と併せて所有することが第一となります。

また、転職の際にはこれからIFRSを導入しようとしている会社であればどの担当者も最初は基準を読みながら業務を担当することになるため、IFRS検定に合格しつつ他社の経理実務を経験していればアドバンテージがあるとして採用が有利に進むことでしょう。

IFRS検定の概要についてはこちらの記事でもご紹介しているので、よかったらご覧ください。
参考記事:IFRS検定ってなに?試験内容は?独学も合格は可能?

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:資格試験

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