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労働協約と労使協定の違いとは?

HUPRO 編集部
労働協約と労使協定の違いとは?

企業と労働者に対しては、いろいろなルールが整備されています。労働基準法や就業規則、労働協約や労使協定など、各種の規制が及びます。その中でも、今回はよく混同されがちな労働協約と労使協定の違いについて説明します。以下、ご参考ください。

労働協約と労使協定の内容、違いについて

労働協約と労使協定の違いについて説明する前に、まずはそれぞれの内容について説明します。

労働協約の内容について

労働協約とは、労働組合・使用者間で締結される契約です。賃金や労働時間、休日、休暇などの労働条件や、労働組合と使用者の関係に関する事項をその内容とします。企業における労働組合の団体交渉などの結果、労使双方で合意に至るもので、労働協約が実際に機能するためには、契約内容を書面に記し、労使双方の署名又は記名押印が必要とされています。

労働組合が契約当事者になるものなので、労働協約の効果が及ぶのは、労働組合に加入している従業員だけです。例えば、ユニオンショップの形式で労働組合が運営されている場合には、企業における全従業員が当該労働組合に加入していることから、労働協約もまた、全従業員に対して効果を及ぼします。これに対して、オープンショップの形式で労働組合が運営されている場合には、当該労働組合に加盟しているのは加入希望をしている従業員だけです。このとき、労働協約の適用があるのは、オープンショップ型の労働組合に加入している従業員だけです。

ただし、労働協約が適用される従業員が、事業所の3/4を超える場合には、すべての労働者に対して適用されるのでご注意ください。

労使協定の内容について

労使協定とは、使用者及び労働者の過半数を代表する者との間で締結される、法令及び就業規則に対する特則です。企業において労働組合が組織されており、過半数の従業員がこれに加入しているのであれば、労働組合が労使協定締結のために行動することが認められます。他方、労働組合構成員が従業員の過半数に達しない場合や、そもそも労働組合が存在しない場合には、労使協定締結のために、労働者の過半数を代表する者を選出する必要があります。このようなプロセスを経て定められた労使協定は、全従業員に適用されます。

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労働基準法等の労働関係法令は、国が全国の事業所すべてに等しく適用を求める、いわば「労働条件などに関する最低条件」です。これをそのまま適用してしまうと企業活動が妨げられることもあるでしょう。つまり、労使協定とは、より実務に即した形で企業内におけるルールを整備するために、労使双方の合意を前提とする限りにおいて、法令上の例外を許容する趣旨で整備されたものです。

労使協定も、労働協約と同様、その内容を書面に記し、労使双方の署名又は記名押印が必要です。さらに、労使協定で合意される内容によっては、労働基準監督署にその旨の届出をする必要がある場合があります。例えば、時間外労働や休日労働に関する労使協定は、労働基準監督署に届出を出さなければいけません。仮に、労働者の過半数が労使協定の恣意的な制定に加担した場合に、当該企業において働く労働者が、不当な労働時間を強要されるリスクが生じるからです。労働時間制に関する労使協定も同様です。

労使協定の内容について

労働協約と労使協定の違いについて

労働協約・労使協定も、いずれも労使双方で同意するという点において違いはありません。ただし、それぞれにおいて約することができる内容と、適用上の優先順位に違いがあります。理解のために優劣を図式化すると、原則として以下のような形で記すことができます。

労使協定>各種法令>労働協約>就業規則>労働契約

もちろん、これはあくまでも大まかなイメージです。以下で説明するように、いくつか注意点、例外があるのでご注意ください。

まず、労使協定は労働基準法などによって定められている内容を修正し、企業内のみに通用する例外的な内容を労使双方の合意とすることができるのは上述の通りです。この意味において、各種法令より上位に位置付けられる場合がありうるという捉え方もできるでしょう。
他方、すべての内容について、労使双方で好き勝手に合意できるという類のものではありません。強行法規としての性質を有する法令条項を排するような合意は認められませんし、あくまでも、労働基準法などによって例外を認める趣旨が肯定される場合に限って、労使協定において例外的合意ができる、という意味に留まります。

次に、同じく労使双方の合意によって締結される労働協約ですが、労働協約はあくまでも労働基準法の規定する枠内でのみ許される労使間における合意です。例えば、労働基準法では、1日における労働時間は8時間以内と定められていますが、労働協約で可能な合意内容は、これを超えるものであってはいけません。つまり、労働時間を7時間とするような労働協約は認められますが、労働時間を9時間とするような労働協約は認められません。労働基準法の定めを超える部分について無効となります。

さらに、一般的には、企業内における「就業規則」の力はかなり強いものだというイメージを抱く方が多いかと思いますが、実際のところ、就業規則は、労使協定にも労働協約にも劣後します。なぜなら、就業規則とは、あくまでも事業者側が一方的に規定する社内ルールに過ぎないからです。労使協定も労働協約も、いずれも労使双方の合意によって成立するものなので、合意が優先するのは当然の理屈でしょう。

労働協約と労使協定の有効期間について

労働協約の有効期限は、締結の日から3年以内に設定しなければいけません。これを超える期間を定めた場合には、3年の有効期限を定めたものとみなされます。

労使協定の有効期限は、明確に法律で定められているわけではありません。ただし、通達によって、ある程度の推奨期限の目安は定められており、かつ、多くの企業がこれに従う形をとっています。

例えば、1年単位の変形労働時間制に関する労使協定や、時間外及び休日労働に関する労使協定(いわゆる36協定)については、目安の有効期限が1年とされています。また、1ヶ月単位の変形労働時間制に関する労使協定や専門業務型、裁量労働制に関する労使協定は、目安の有効期限は3年です。あくまでも、各企業における判断、労働者側の代表との交渉に委ねられます。

36協定について

ここで、いわゆる36協定(サブロク協定)について説明します。近年、罰則規定等に関する改正が行われたために、労使双方にとって重要なトピックです。

36協定とは、労使協定の一種です。労働時間・労働日数に関する合意に関するものです。

労働基準法第32条第1項では、原則として労働時間を1日8時間・週40時間が上限と定めており、同第36条各項において、労使協定による例外を認める趣旨が定められています。労働基準法第36条において労働時間に関する労使協定を結ぶことが認められていることから、「サブロク協定」と称されるものです。
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36協定を締結すれば、労働基準法において原則として認められていない時間外労働や休日労働について労使協定の範囲内において許容されます。

ただし、36協定の内容にも限界があります。そして、2020年4月の労働基準法改正により、以下を充たす内容の36協定には、事業者側に罰則が与えられることになりました。

・時間外労働の上限(「限度時間」)は、臨時的、特別な事情のない限り、月45時間・年360時間。
・いかなる理由があっても、限度時間は、年720時間・複数月平均80時間以内(休日労働を含む)・月100時間未満(休日労働を含む)。
・限度時間が月45時間を超えることができるのは、年間6か月まで。

出典:36協定で定める時間外労働及び休日労働 について留意すべき事項に関する指針|厚生労働省

まとめ

労働協約及び労使協定は、労働者の権利を守るために合意されるものです。いかなる理由があったとしても、「労使協定や労働協約で定められていること」が労働者の権利を阻害する方向で利用されることは許されてはいけません。例えば、36協定は、過去において労働者を拘束するための手法として活用された経緯がありますが、今現在において、このようなことは当然認められません。

働き方改革や、昨今の企業の雇用形態の多様化、そしてテレワークの推進によって、労働者を規律するルールの整備がより進められています。労働協約や労使協定も、労働者が働きやすい環境であるかを測るための重要な指針です。現在就業している事業所や今後転職を希望する企業において、いかなる制度設計がされているか、ぜひご確認ください。

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