企業で働くためには、労働基準法をはじめとした法律に加え、様々な仕事の決まり事を守る必要があります。当たり前のようにしている残業についても、実は労使協定にも戸津委でおこなわれているのです。今回は、労使協定について、就業規則や労働協約との違いを交えて説明します。
「労使協定」とは労働組合・労働者の過半数を代表するもの(※)と、使用者との間で交わされる協定のことをいいます。
労働者の働き方は、労働基準法をはじめとした法律で定められていますが、実務がそれに見合わない場合、労使協定で法定義務の免除や免罰をすることができるのです。
※労働者の過半数を代表するものについて
労働組合がない場合には、事業場の過半数代表者となる人を選出する必要がありますが、これは「労働基準法第41条第2号」に規定する管理監督者でないことが要件とされています。
つまり、管理職や工場長など、その部門や職場において経営者サイドの人は避けなければなりません。
ただし、あくまで労働基準法における協定のため、労働者側が同意すればどんな内容の協定でもOKというわけにはいきません。その内容は、労働基準法においての14の項目にのみ認められているので注意が必要です。
労使協定を締結する場合、使用者は労働組合、もしくは事業所ごとに労働者の過半数を代表する者と、書面による協定を結ぶことが義務づけられています。
その書式は決まっていて、自由に内容を変えることはできません。
具体的な内容については、厚生労働省Webサイトから確認することができます。
締結した労使協定は労働基準監督署への届け出が必要ですが、労使協定については、締結してもそれだけでは労働契約上の権利義務は生じません。
労使協定の効力を発揮させるためには、労使協定締結とあわせて労働協約・就業規則などでそれぞれの定めが必要となります。労働協約・就業規則についてはそれぞれ後ほど説明します。
労使協定は、使用者が事業所ごとに労働者の過半数を代表する者と、書面による協定・・・・・・と聞くと、なんだか遠い話のように感じてしまいますが、実は私たちが就職してから毎年、ほぼ大半の人が締結している労使協定があります。
それが、時間外労働と休日出勤についての「36(サブロク)協定」です。
これは、「時間外及び休日の労働」を定めた「労働基準法の36条」について、労働の限度時間や休日を、労使協定に基づいて延長させたり、休日労働させる事ができるようにするものです。
私たちが当たり前のようにしている残業ですが、労使協定である36協定を結んでいない場合、使用者は労働者を残業させることができません。
労使協定は事業場ごとに締結する必要があるため、36協定の締結は毎年事業場ごとにおこなっていることが多いです。
その際に、過半数代表者も選出がおこなわれているはずですが、誰が過半数代表者かご存じしょうか?労働基準監督署の検査時には必ず聞かれることなので、ぜひ確認しておきましょう。
労使協定は、会社(事業所)内での労働者の規則や、労働環境に関わるとても大事な協定なのです。
36協定については以下の記事でも解説しています。併せてぜひご一読ください。
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労使協定によく似た言葉に「就業規則」「労働協約」がありますが、これらはそれぞれ異なるものです。
その違いを順に見ていきましょう。
就業規則は、使用者が従業員の労働条件や服務上の規律などを定めたもので、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、作成と労働基準監督署への届出義務があります。
作成・内容の変更にあたっては労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聞く必要があり、労働基準法の定める最低基準に達しない内容は無効です。
労使協定を締結した内容については、就業規則への反映が必要となります。
「労働協約」とは、団体協約ともいい、労働組合または労働者団体と、使用者またはその団体との間で交渉をおこない、「就業規則」の内容とは違った労働条件を決めることができます。
具体的には以下の内容を定めます。
・規範的部分:賃金、労働時間、休日等の労働条件・待遇についての基準など
・債務的部分:団体交渉のルール、組合活動に関することなど使用者との関係を定めた部分
例えば、就業規則では9時から18時まで、休憩除く8時間労働と定められていても、労働協約によって、17時までの休憩1時間を含む8時間労働と労働協約で定められていたとします。
その場合、労働組合に加入している組合員は、就業規則よりも労働協約の労働時間が優先されるのです。
なお、労働組合が結成されていない企業では、労働協約を締結することはできません。労働協約は労働組合員のみのものなので、同じ事業場でも労働組合員の非組合員においては有効にはなりません。
労働協約の書面には、当事者の署名または記名押印が必要で、有効期間は3年までと定められています。有効期間を定めない場合、90日前までに労使どちらかが署名又は記名押印した文書により相手に予告をした場合解約が可能です。
労働者の働き方を決める、労使協定・就業規則・労働協約。それぞれの違いと、効力についてはぜひ覚えておきましょう。