企業を経営するためにはいろいろな費用が必要になりますが、必要経費という必ず支出するものがあります。必要経費としては、社員の給与、事務所の賃借料、通信費の電話代、ファックス代などがあります。必要経費は、企業を経営するための事業経費であるとイメージするとわかりやすいでしょう。企業の事業経費については、損益計算書の「販売費及び一般管理費」に詳しく記載されています。この販売費及び一般管理費を見ると、企業の事業経費としてどの程度の金額がどのようなものに支出しているかを把握することができます。
今回は、工事でよく耳にする一般管理費とは?具体的な一般管理費とは?について解説していきます。
一般管理費というのは、設備や建物などの減価償却費、給与、通信費などの経費になります。
建設業者や建設工事の一般管理費についても、意味は同じです。
ここでは、工事でよく耳にする一般管理費についてご紹介します。
公共事業の工事を建設業者が受注するためには、入札に参加する必要があります。
入札というのは、工事を受注したいいくつかの建設業者が発注者に希望する工事額を提示して、最も安い工事額を提案した建設業者が工事を受注するものです。
税金で公共事業の費用は賄うため、発注者の自治体などが工事を最も安い工事額を提示した建設業者に発注すると、効果的に税金を使うことができます。
一般管理費は、この工事額を構成する一部の経費になります。
工事費の構成としては、次のようになっています。
工事費は、工事価格と消費税相当額をプラスしたものです。
工事価格は、工事原価と一般管理費などをプラスしたものです。
一般管理費などというのは、先にご紹介した設備や建物の減価償却費、給与、通信費などの経費で、「元請企業の本支店経費等」と建設業界においてはいわれています。なお、一般管理費等率というのは、工事原価に対する一般管理費などの割合になります。先にご紹介したように、工事費は工事原価と一般管理費などと消費税相当額をプラスしたものになります。
そして、入札のときに使う価格が工事費になります。
建設業者としては、利益が出るのは工事費の金額をアップすることですが、アップすれば他の業者に負けてしまいます。
そのため、必ず受注したい工事に関しては、利益を無視してでも安い工事費を提示して入札に勝ちたいという気持ちになります。
しかし、工事費を安くするのは、工事原価と一般管理費などと消費税相当額をプラスしたものをダウンすることになります。
建設業者の判断のみでは、この中で工事原価と消費税相当額はダウンすることができません。
しかし、建設業者の判断のみで一般管理費などはダウンすることができるので、工事費をダウンすることができます。
作業員などの給与も、一般管理費などには含まれています。
そのため、入札に勝つために工事費をダウンするためには、作業員の給与などをダウンして一般管理費などをダウンする必要があります。
しかし、このようなことは、建設業者の作業員などの労働条件を非常に悪くさせるようになってしまいます。
そのため、国土交通省は、工事費を建設業者が計算するときに、決まりとして「一般管理費等率を一定割合以上にしなければならない」というものを設けました。
つまり、入札で勝つために極端に作業者の給与を少なくするのは許さないとしました。
国土交通省は、一般管理費等率を2018年度にアップしました。
適正な利益を工事を受注する建設業者に確保させることが、この狙いです。
建設業者が適正な利益を確保することができると、作業者の給与がアップすることが予想され、これが実現すると人材が建設業界に集まりやすくなります。
具体的な一般管理費としては、次のようなものがあります。
給与・・・従業員などに支払う給料
ボーナス・・・従業員などに支払う賞与
法定福利費・・・企業が負担する厚生年金や健康保険料など
福利厚生費・・・従業員の冠婚葬祭の慶弔費、従業員の旅行費
広告宣伝費・・・企業や商品の宣伝費用など
接待交際費・・・取引先との接待費
旅費交通費・・・出張するときの交通費など
支払手数料・・・金融機関を使ったときの振込手数料など
賃借料・・・事務所の賃借料など
通信費・・・切手代、ネット通信費、ファックス代など
水道光熱費・・・電気代、水道代など
保険料・・・損害保険料、火災保険料など
減価償却費・・・資産の価値が減少した分
租税公課・・・自動車税や固定資産税など
消耗品費・・・事務用品のボールペン・コピー用紙の費用など
ここでは、工事でよく耳にする一般管理費、具体的な一般管理費についてご紹介しました。一般管理費とは、設備や建物などの減価償却費、給与、通信費などの経費になります。建設業者が公共工事を受注するときは、一般管理費について十分に把握しておく必要があります。