「簿記は難しい」と言われます。確かに、簿記2級以上になれば複雑な問題の理解も求められるようになり、簡単な内容とはいえません。けれどだからこそ、簿記3級や簿記2級、簿記1級の資格を取得できれば転職にもキャリアアップにも有利になるのです。今回は、どうして簿記は難しいのか、その理由について解説していきます。
実際に簿記は難しいものなのかどうか、簿記の合格最低点や合格率をみてみましょう。
簿記3級の場合、合格最低点は100点満点のうち70点です。さまざまな資格試験がありますが、合格最低点が70%以上である試験は、それほど多くはありません。一般的には60%前後であることがほとんどです。そのため、試験内容が難しい場合であっても、問題の70%以上に合格しなければいけないというのは、簡単なことではありません。
簿記2級の場合は、2科目の合計が100点で、合格最低点は100点満点のうち70点です。簿記3級と同様に、試験内容の難易度に関係なく、正解率70%を超えなければ合格することができません。そして、簿記2級の合格率は、過去10年ほどを平均すると30%ほどです。ただし、合格率が高い時は47.6%、低い時は5.7%と、かなりの幅があることが分かります。
簿記1級の場合は相対評価によって合否が判断されているので、合格最低点というものはありません。ただ、合格率は過去をさかのぼってみても10%ほどをキープしています。まさに難関資格といえるでしょう。
簿記の試験に合格するのが難しいと言われる理由は大きく分けて2つあります。
①技能試験で実力定着に時間がかかる ②合格率の変動の大きさでモチベーション維持が難しい
まず、簿記は技能についての試験であるために、実力がつくまでに時間が必要だという点があげられます。学校の定期テストなどは一夜漬けでもなんとか試験でそれなりの点をとることができていたかもしれませんが、簿記で問われるのは、実践的な問題です。そのため、無理に丸暗記をしてどうにかなるものではなく、ここが「簿記は難しい」に繋がっていると考えられます。
また、簿記3級、簿記2級においては絶対評価において合否が判断されているため、合格率の変動が激しく、モチベーションを保つことが難しいという点が挙げられます。確かに、合格率が低い事実を知れば、よほど強い意志がないと「もう難しいから、無理!」となってしまうものです。
簿記を勉強しているなかで、簿記が難しいと考えてしまう人の多くは、以下のような傾向があります。あなたも当てはまっていませんか。
いわゆる完璧主義者の人です。あるページを理解できなければ、次のページに進めないと考え、余計に簿記を難しいものとして捉えてしまっているのです。簿記というものは非常に奥が深く、簿記1級を勉強してやっと「簿記3級で勉強したことは、こういうことだったんだ」「簿記2級のあの内容は、そういう意味だったのか!」と理解が深まるものなのです。ですから、分からない部分があっても、とりあえず次のページへ進みましょう。70%の正解率で合格できるということを意識して、完璧を求めないことが大切です。
会社から強制的に簿記を取得するようにいわれた人によく見られる傾向です。しかし、簿記では数学に関する高い能力は問われません。簿記で勉強をするのは、「簿記」という技術です。数字に弱いと言い訳をしてばかりいないで、少し肩の力を抜いて取り組んでみてください。
簿記は、テキストや問題集に載っている仕訳を書き写しているだけでも理解度が深まります。ただテキストを見るだけの人や、せっかくの問題集もさっさと答えを見てしまう人は、効率の悪い勉強方法をしています。まさに「習うより慣れろ」なのです。手を動かし、仕訳を10回書き写してみてください、そうすれば理解できる問題も多いはずです。
簿記が難しいと感じる原因のひとつに、専門用語が多いという点があります。まず問題集を解く前に、専門用語に慣れる練習をしてみましょう。専門用語ばかりを書き出し、横に意味を書いて、自分なりの辞書を作っても理解が深まります。専門用語に慣れてしまえば、問題集の問題もずっと簡単に解釈できるようになります。
簿記2級までは絶対評価なので、試験内容が難しくても正解率は死守しなければいけません。ところが、大きな法改正があった後に行われた試験では、過去問題集では対応できない問題が出題されるため、正解率がぐっと低くなります。これが、開催される回により難易度が変わる要因にもなっているのです。
簿記は難しいというのは、合格率から見ても明らかです。ただ、勉強不足や思い込みで難しいと感じている人も多いでしょう。専門用語に慣れて、とにかく書く、そして勉強を進めていけば、すんなり理解できたりするものです。すべての問題に正解する必要はないのですから、完璧主義にならずに取り組んでみましょう。
簿記を独学で勉強するには自分に合ったテキストを選ぶことから始まります。その選び方についてこちらの記事にまとめてありますので、ぜひご一読下さい。
・簿記の参考書を購入する際に気をつけたい選び方とは?