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IPO準備企業の経理は激務?具体的な業務や役割、市場価値について解説

HUPRO 編集部
IPO準備企業の経理は激務?具体的な業務や役割、市場価値について解説

IPO準備企業の経理は激務であると言われていますが、実際のところはどうでしょうか。具体的な業務や役割につい徹底解説しています。また、IPOの経理経験者の市場価値についても紹介しています。

IPOの経理とは

IPOとは、証券取引所が運営をしている株式市場に会社が上場し、自社の株式を不特定多数の人に向けて売り出すことをいいます。また、この上場をする際には、定められている要件を満たしている会社かどうかを確かめるため、証券取引所により審査を受けなければいけません。そして、この審査を通過するようにと書類を準備することをIPO準備といいます。IPO準備やIPOに携わりながら経理を担当することにより、経営者の視点に立って働くことができたり、組織形態を学ぶこともできます。

IPO準備における経理の役割

IPO準備における経理の役割は企業の財務状況を投資家や監査法人にミスなく正確に提供することです。
IPOを実現するためには、まず証券取引所の審査に通過する必要があります。そのために、経理が財務諸表の整備を行い、過去の財務データを適切に管理する必要があります。また、監査法人や証券会社との連携を保ちながら、内部統制を整える責任を負います。

IPO準備における経理が激務と言われる理由

IPOを目指すベンチャー企業の経理職は忙しい傾向にあります。この理由としてはIPO準備に伴う経理部門の仕事が非常に多いという側面があります。そもそもベンチャー企業は人員が不足している傾向にあるため、比較的1人にかかる負担が高いです。そのなかで、会計処理や経理業務フローの変更から実務まで含めて対応する必要のある経理部門は激務になりがちと言えるでしょう。

IPO準備で経理が行う具体的な業務

財務諸表の作成

IPO準備企業の経理部門は、通常の中小企業に求められる企業会計とは異なり、一般に公正妥当と認められる会計基準に則った財務諸表を作成することが求められます。
IPO準備において財務諸表の作成は最も重要な業務の1つです。
財務諸表は、決算時の財政状況や1年間の経営成績を示す書類であり、投資家に対して企業の財務健全性を示す重要な情報となります。

経理規程の作成

IPOを目指す企業には「内部統制の評価」が義務づけられており、各種規程が適切に整備されていること、そしてそれが規程通りに運用されていることが求められます。
経理部門においては、財務・会計に関連する内部統制の体制整備が必要であり、その一環として経理規程の策定も重要な役割のひとつとなります。

監査法人への対応

IPO準備を進めるにあたっては、直前期の財務諸表について公認会計士の監査を受ける必要があります。

監査に先立ち、「ショートレビュー」と呼ばれる事前のヒアリングが実施され、経理部門はその中で指摘された課題や問題点に対して、適切な改善対応を行うことが求められます。

証券会社による審査への対応 

上場申請を最終的に行う前に、証券会社の審査を通過し、その推薦を受ける必要があります。この審査では、IPO準備企業の事業計画や将来の見通しについて詳細な確認が行われます。経理部門も、この審査にしっかりと対応することが求められます。

証券取引所による審査への対応

証券会社の審査を通過すると、次は証券取引所への上場申請が行われます。しかし、この申請時に審査で指摘事項が発覚した場合、短期間での改善対応が求められます。もしその対応が間に合わない場合、上場が延期される可能性もあります。
そのため、経理には指摘事項に正確かつ迅速に対応するという重要な役割が求められます。

IPOの経理として求められるスキル

IPOの経理に求められるスキルは、主に
「月次決算や財務諸表作成などの日次業務」
「法人税や消費税の算定などの税務関連業務」
「監査法人対応や・四半期報告書作成などの開示関連業務」です。
上場企業・IPOの経理に求められる上記のスキルには、会計・税務などの知識が大前提として必要です。特に決算短信や四半期報告書、有価証券報告書の作成などがあるため、日商簿記2級相当のスキルが必要となります。

会計に関する不明点については、監査法人と相談しながら対応を進めることが可能です。また、経理業務を税理士に外部委託している場合には、内製化を見据えて早めの準備が求められます。内部統制や開示といった、上場準備の過程で初めて経験するような業務については、監査法人やIPOコンサルタント、証券印刷会社などの専門家からサポートを受けることができます。
上場に向けては多様なスキルが求められますが、支援してくれる専門機関も豊富に存在するため、過度に不安を感じる必要はありません。

IPO準備をしている企業で経理として働くメリットとは?

経理としての市場価値が上がる

上場企業を目指しているIPO準備段階の企業で働く経理は、かなり激務を強いられます。しかし、代わりに今後のキャリアに活かすことのできる経験がほんの短期間で得られますし、そのような経験は経理としての市場価値を高めます

様々な業務を経験できる

経理として担当をする業務としては、財務諸表の作成、監査法人への対応、証券会社への審査対応など幅広いものです。さらに、IPO準備中の企業にはベンチャー企業が多く、組織体制もまだまだ不十分であることにより、経理だけではなく、経営企画、法務、人事、総務といったような業務もこなさなければならないケースもあります。たとえマネージャー層の経理であっても、大手企業で勤務するのとは異なり、現場を自ら動かすことが求められるのです。

成長を実感し、自信をつけることができる

IPO準備の段階である企業では、業務上のルールや制度などがはっきりと明文化されていないことが多く、それらを整えながら、同時に経営者や他部門の社員にも共有できるよう橋渡しをする役割も担わなければなりません。そうして、社内全体に、上場企業の基準というものを浸透させていく必要があるのです。このように慣れない業務に携わるプレッシャーや、多忙な毎日による苦労なども多いですが、これらの経験で自分自身の成長を実感することもできます。経理としても、上場に関する一通りの手続きを経験したという自信がつきますし、今後上場をしたいと考えている企業からの需要も高まっていきます。

IPOを経験した経理は、市場価値が高まり重宝される

IPO準備やIPOの段階においての経理の役割は、ただ高度な専門性をもっているというだけではなく、IPO準備ならではの組織における課題を解決したという経験をもっていることが評価されます。そして、このような人材が多くの企業から求められることになります。なかでもIPOを目指すITベンチャー企業において、IPOに関する経理の経験が求められることが多いです。

IPO準備の経理経験者に向いている業界

IPOが増加している傾向により、IPOを予定している事業会社に加え、監査法人、コンサルティングファーム、持株会社、証券会社、IPOアドバイザリー等、さまざまな業界の企業でIPO経験者に対するニーズが高まっています。経理職でIPO経験者は、これまでのキャリアを生かしより働きがいのある企業や上位職を狙うチャンスとも言えるでしょう。
また、経理の部門に所属しており、在籍企業のIPOにともない監査法人の指導のもと数期の会計監査を経験したというような経験も、今後IPOを予定している企業にとっては即戦力として評価される可能性があります。

IPO準備を経験したことのある経理のその後のキャリアとは?

IPO準備を経験したことにより、市場価値が高い人材となり、多くのIPO準備中の企業に求められるでしょう。そして、また、過酷な業務だとわかりながら、大手企業を辞め、年収を下げてでもそのような企業に入る経理も数多くいます。

IPO準備をしている企業に入社するメリットのひとつに、ストックオプションがあります。ただ、上場の準備はしているものの、本当に上場することができる企業は多くはないのが実情です。また、当たり前ですが、会社が上場しなければストックオプションのメリットはありません。それでもIPO準備の企業で働く経理が多いのは、今お話したような経験を積んでいけるというメリットが大きいからでしょう。

IPO準備中の企業への転職の失敗例

ただし、IPO準備中の企業への転職でも失敗するケースはあります。まず、IPOに対しての意識が経営者と他社員の間で明らかに違っていたという場合です。

例えば、会社の社長、経営幹部と面接を通して話をして、経営層の上場を目指す熱意に共感して管理部門の責任者として入社を決意したものの、いざ入社して現場に行ってみると、周りの社員たちは全員、上場準備は余計な作業も増えるし大変だから歓迎しないという雰囲気です。それでも上場を目指して、管理部門を変えていこうと思っても、現場がどうしてもついて行かず、結局社長もIPOを諦めてしまったというケースは多々あります。

そうならないためにも、IPOを目指す企業に入社して自分の経験値を上げたい、市場価値を上げたいと考えている方は、きちんと入社前にその会社のことを調べる必要があります。
IPO準備などの情報は一般にはあまり外に出していないことも多いので、その際はぜひ転職エージェントを活用してみてください。

まとめ

IPOとは、企業が株式を上場し、一般投資家から資金を集めるプロセスです。この準備段階では、経理が中心的な役割を担い、財務諸表の整備や内部統制の構築、監査法人や証券会社への対応を行います。ベンチャー企業では人手が少ないため、経理は激務になりがちですが、その分、会計・税務・開示業務など幅広いスキルと経験を短期間で得ることができます。IPO経験は市場価値が高く、将来のキャリアにも大きな強みとなります。ただし、入社の際にはその企業のことをよく調べ、入社するかどうかを決定する必要があります。IPO準備中だった企業が上場を頓挫するというケースも多いからです。企業の詳細を知るには、転職エージェントを活用するという方法もあります。

この記事を書いたライター

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