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簿記1級の採点方法はよく理解しておくべき

HUPRO 編集部
簿記1級の採点方法はよく理解しておくべき

簿記1級は合格率が低く、この合格率を見ただけで受験することを戸惑ってしまった人もいるのではないでしょうか。けれど、簿記1級の採点方法を理解しておくことで、合格へ近づくという事実を知っている人はあまりいません。今回は、簿記1級の採点方法と、それをよく理解すべき理由を解説していきます。

簿記2級の合格率と簿記1級の合格率から分かること

まず、簿記2級の合格率からみてみましょう。2018年2月は29.6%、2018年6月は15.6%、2018年11月は14.7%、2019年2月は12.7%、2019年6月は25.4%となっています。次に、簿記1級の合格率をみていきましょう。2017年6月は8.8%、2017年11月は5.9%、208年6月は13.4%、2018年11月は9%、2019年6月は8.5%です。

商工会議所が公表しているこれらのデータから読み取れることは、2つあります。

①簿記2級と簿記1級の難易度には大きな差があるということ
②簿記1級の合格率がほぼ10%に安定していること

(全体的にみて、2017年11月の合格率は異例といえます)

このデータを改めてみると、難易度の違いについては簡単に理解できるでしょう。しかし、簿記1級の合格率が、簿記2級の合格率と比べても明らかに安定していることに、少し違和感を覚える人もいるのではないでしょうか。実は、ここにこそ、簿記1級を合格するための秘訣が隠されているのです。

簿記2級までは絶対評価、簿記1級は相対評価である事実

まず、結論をお伝えしましょう。簿記3級や2級は絶対評価で合否が決まります。そして、簿記1級は相対評価によって決まります。

絶対評価と相対評価とは

相対評価

相対評価とは、学校の通知表のようなもののことをいいます。5段階評価の通知表だった場合、それぞれの成績の分布は、あらかじめ次のように決まっています。「5:10% 4:20% 3:40% 2:20% 1:10%」これが相対評価です。つまり、生徒が100人いたとすると、100人の10%にあたる10人が5という成績をもらえるということになるのです。

絶対評価

一方、絶対評価とは「試験の点数が95点以上の人:5 試験の点数が80点以上の人:4 試験の点数が60点以上の人:3 試験の点数が40点以上の人:2 試験の点数が40点未満の人:1」といったように、点数に対して成績がつくという評価方法です。試験内容はその時により難易度が変わるので、難易度の高い試験だった場合は5をもらえる生徒がいないこともあります。反対に、難易度が低い試験だった場合は、たくさんの生徒が5を貰えることになります。

簿記1級の合格率は10%

以上を踏まえ、簿記1級の相対評価について、もう少し詳しくお話しましょう。簿記1級の合格基準は70%です。そして、4科目それぞれに25点が配分されており、合計で100点となっています。また、毎回の簿記1級の合格率はほぼ10%です。商工会議所から「簿記1級の合格率は10%にします」といったような明言はないものの、過去の合格率のデータから見ると、これは明らかです。その回によって難易度が違えば、それは簿記検定そのものの有用性が損なわれることになり、商工会議所をはじめ作問者が大きな避難を受けることになります。このような状況を避けるためにも、合格率が10%から大きくずれるようなことはないでしょう。したがって、簿記1級の合格率10%という基準は、前もって定められているものだといえます。

配点で調整されている

とはいえ、1~2回ならまだしも、何回も簿記1級の難易度を調整し、合格率を10%にすることは至難の業だといえます。そのため、商工会議所は、受験者の答案を採点し、その後に問題ごとの配点を変え、合格率が10%ほどになるように調整をしているのです。例えば、「商業簿記」という科目においては25点の配点があり、解答欄は25個あったとしましょう。その詳細は以下の通りです。

「問題1.解答欄3個 問題2.解答欄15個 問題3.解答欄7個」

ぱっと頭に思いつくのは、配点が25点で解答欄が25個だから、1問1点だという予測ですが、実は間違っています。

実際の簿記1級における配点は、例えば以下のようになっています。先ほどとは問題数が異なりますが

「問題1.問題1個につき配点3点 問題2.問題4個にそれぞれ1点と問題3個にそれぞれ2点 問題3.問題6個にそれぞれ2点 合計25点」

といったような採点方法です。つまり、1問1点ではなく、問題によって配点は違い、配点のない問題もあるのです。誰も正解できないような難問を用意しておき、その難問には配点をせず0点とし、正答率が高いとされる問題には高い配点をおくことで、操作しているのです。そして、この操作によって基準点となっている70点を超えた人が受験生の10%となるように、うまく調整されていることになります。

相対評価を知ったうえでできる対策

簿記1級が相対評価であることが分かれば、解答の際に気をつけるべきポイントが見えてきます。誰にも解くことができないような難問の配点は低く、誰でも解けるような問題の配点は高いのですから、試験を受ける際は、簡単な問題から取りかかり、難しい問題は後回しにして解答していくことで、合格率を高めることができます。試験にでているからといって難しい問題に時間をかけ、結局解くこともできなかったという状況は、配点の低い問題に時間を費やして配点の高い問題を解かなかったのと同じといえます。

まとめ

簿記1級は相対評価によって合否が決められています。これを知っているかどうかによって、合否が左右されるといってもいいほどの大きなポイントですが、知っている人は少ないでしょう。また、どれが難問であり、どれが自分の勉強不足で解けない問題なのか見極める能力も必要になります。しっかりとした勉強は継続し、この難題を見極める力は養いつつ、勉強中も難問は避けるということは常に意識しておくといいでしょう。

この記事を書いたライター

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カテゴリ:資格試験

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