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ジョブローテーションとは?目的やメリット、注意点をわかりやすく解説!

HUPRO 編集部
ジョブローテーションとは?目的やメリット、注意点をわかりやすく解説!

企業において社員の教育をすることはとても重要です。社員の能力開発をどのように行うのかは、多くの企業を悩ませてきた問題といえます。そして、実際にたくさんの企業が採用してきた制度がジョブローテーションです。こちらには、さまざまなメリットとデメリットがあります。本当に会社にとって有用な制度なのかよく考えてみることは大切です。そこで、この制度の目的やメリット・デメリット、注意点などについて解説します。定期的に社員を職場異動させることの意味や問題点について理解しましょう。

ジョブローテーションとはどういう制度なのか?

社員の育成を目的とした、戦略的な制度です。様々な部署、役割を経験させることで、社員の能力開発や適正を図る意味で実施されています。

新入社員が対象になる場合もあれば、幹部候補社員に対して実施するケースもみられます。

ジョブローテーションの期間や頻度

明確には企業毎に変わるので、一概には言えませんが対象者によって変更しているケースは多いです。
例えば、新入社員を対象として行う場合は、3ヶ月から半年程度の短い期間で部署を異動させる場合もあります。一方、幹部候補に対しては、3年から5年という長いスパンで異動させることがよくあります。

入社した時点である程度所属する部署や専門分野が決められている会社の場合は、最初の数ヶ月程度だけ研修という形で各部署の仕事を体験するといったケースもあります。

ジョブローテーションの目的

1.社員の適性を見極めること

日本では新卒一括採用の、終身雇用を前提に多くの企業では採用が行われます。
そして多くが、大学までの学習と就職後の仕事の関連がありません。そのため多くの企業はジョブローテーションを通じて本人の適正を見極めます

実際に働いてもらわないと適正を判断しにくいというケースは少なくありません。社員の適正を知るために、定期的な異動をさせて、幅広い仕事を経験させることで社員の適正把握を戦略的に行なっています。

2.組織の活性化

組織は同じメンバーだけで業務を行うと、効率性が悪くなるという現象が起きました。マンネリ化が生じてしまい、生産性も上がらずモチベーションの低下にもつながります。定期的に異動させることで現場や組織の活性化を図っていました。

ジョブローテーションが行われる一連の流れ

当たり前のことですが、ジョブローテーションはやみくもに実施されるわけではなく、組織が健全に成長すべく一定のプロセスを経て決定されます。

企業の文化や状況に応じてバラツキはありますが、基本的な考え方は以下3つに集約される印象です。

1.本人の希望を受け取るプロセスが存在する

ジョブローテーションは本人のキャリアプランに大きな影響を及ぼします。

本人の希望やキャリアプランを聞くプロセスが通常存在します。
たとえば、「いつ頃異動したいか」、「どのような業務に興味があるか」、「(希望の業務に携わるべく)どのようなスキルを有しているか」、「介護や育児はあるか」等々が上司や人事との面談を通じて行われます。

2.会社としての標準的なキャリアプランは有している

上記のように本人の希望は聞くとは言え、特にこだわりがなかったり、そもそもキャリアプランを描くには材料が少ないこともあります。

そのような場合に備え、会社としても標準的なプランを用意しています。
例えば経理財務人材であれば、一般会計の部署で経理のイロハを学んで、数年後に決算の部署に行き決算締めまでの流れを理解してもらい、数年おきに事業部や本社を転々としてもらうといったような感じです。

3.大きく動く時期は決まっている

基本的にジョブローテーションは昇進や昇格と含めて検討されます。
例えば年始めの1月1日や事業年度始まりの4月1日にガラッと変わることが多いです。

ジョブローテーションのメリットとデメリット

ジョブローテーションにはメリットとデメリット両方あります。
それぞれ企業側の視点・従業員側の視点で整理しておきましょう。

ジョブローテーションの企業側のメリット

企業側メリット①.社員の適正を見極められる

企業が成長していくためには、適当な人材を適切な場に配置する必要があります。ジョブローテーションを導入することによって、社員は社内のさまざまな部署を経験することになります。その中で、社員に合った持ち場を割り振ることができます。

企業側メリット②.人材の確保がしやすい

入社時に、自分が何の仕事をしたいのかが明確に定まっている人はそこまで多くはないのではないでしょうか。様々な部署を経験できるというのは、やりたいことを見つけたい人にとって魅力的に映ります。その結果、人材の離職率が減る効果を期待できます。

企業側メリット③.業務を標準化できる

部署で働く従業員が同一のまま変化がない場合は、業務が属人的になりやすいです。しかし人材を流動的に配置することで、その都度業務の改善に新しい風を送り込むことができます。

また新しい人材が行き交う部署では、人材育成を常に見直していることや、経験のない人がすぐに戦力となれるように標準化を実施します。

企業側メリット④.幹部候補の育成がしやすい

幹部候補の社員には、幅広い部署への理解や現場での経験が求められます。複数の部署で経験を積むことで幹部候補としての適性があるのかを見極めることもできます。

ジョブローテーションの企業側のデメリット

企業側デメリット①.モチベーションを低下させる可能性がある

社員に適正があって大活躍したとしても、時期が来ると異動させる必要があるのは欠点です。結果として、社員のモチベーションが低下することもあります。

企業側デメリット②.人材の育成コストが増加する

従業員の教育を同じ部署で長期間おこなう場合と比べると、ジョブローテーションの場合は人材の育成コストが高くなります。また、ジョブローテーションは終身雇用を前提とした仕組みなので、離職者がいればジョブローテーションによる育成コストの損失は通常の場合より大きくなります。

ジョブローテーションによって従業員の異動を検討する場合には、さまざまな問題をチェックしておくことが必要です。異動することで部門間の人材のバラツキは発生しないか、誰をどの部門に異動させるのか、異動する従業員の選定は公正におこなわれているか、といった問題がジョブローテーションをおこなう際に発生します。

ジョブローテーションの従業員側のメリット

従業員側メリット①.社内の風通しが良くなる

ジョブローテーションを行なって配置転換することで、人材に流動性が生まれて新たなアイデアが生まれやすくなります。また、集まるメンバーもジョブローテーションを経験していれば、より多様な視点から議論を活性化させることができます。

従業員側メリット②.社員間の交流が活発化する

ジョブローテーションを行うことによって、単独部署で働いている時には出会えなかったメンバーに出会えます。その結果、より広い人間関係を築くきっかけとなり、結果として部署間での連携がスムーズになることも考えられます。

従業員側メリット③.ゼネラリストになりやすい

ジョブローテーションでは複数の部門で仕事をおこなうので、さまざまな知識を身に付け経験を積むことができ、ゼネラリストとして活躍したい人にとっては最適な環境と言えるでしょう。

従業員側メリッ④.自分の適性を見つけキャリアパスを描ける

さまざまな部署で仕事をおこなう過程で、自分に合う仕事は何か、最終的にどのようなポジションを目指すのかといったキャリアパスを描くことができるようになります。

ひとつの部門で働いていても、その仕事が自分に向いているのかは理解しにくいものです。自分のキャリアの方向性を決定するためには、ジョブローテーションで幅広い経験を積むことは大事になります。

ジョブローテーションの従業員側のデメリット

従業員側のデメリット①.中途半端なキャリアになってしまう

ジョブローテーションをする中で、数年ごとに大きく変わるお仕事を、その都度新しく覚えて慣れて…というのは大変ですよね。

営業→経理→新規事業開発、と数年ごとに仕事が変化すると、社歴が10年目だとしても新規事業開発は2年目ということも珍しくありません。

ジョブローテーションのない会社で新卒1年目から10年間新規事業開発に携わってきた人と比べると、実に8年の差があります。ジョブローテーションを導入することで、ジェネラリストは育ちやすくなり、スペシャリストは育ち辛い環境を作ることにつながります。

従業員側のデメリット②.スペシャリストになりにくい

ジョブローテーションは幅広い業務に対する知識と経験を身に付けられますが、特定の部門に特化した専門的な知識や経験、実績を身に付けることはできません。

ジェネラリストではなくスペシャリスト(専門性)を身につけたいと考える人にとっては、デメリットといえるでしょう。

従業員側のデメリット③.希望していない仕事もする必要がある

ジョブローテーションは、計画的に人材を育成することが目的です。希望する業務以外の仕事を任せられることもあります。今行っている仕事が得意な分野であっても、一定期間で別の仕事をおこなう必要があるので、モチベーションの維持が重要になります。

最悪の場合、希望する仕事ができないことで退職してしまうということも起こりうるでしょう。ジョブローテーションは会社にとってリスクもあることを忘れてはいけません。

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ジョブローテーションに向いていない企業

ジョブローテーションには、向いている企業もあれば、向いていない企業もあります。

ここでは、向いていない企業について解説をしていきましょう。

向いていない企業①:専門性が高い職種

専門性が高く、スキルや知識の習得に時間がかかる職種の場合は、短い期間で移動してしまうと、今までの経験が無駄になってしまうことがあります。

専門的な知識が必要な職種は、ジョブローテーションに向かないでしょう。

向いていない企業②:従業員が少ない

従業員が少ない小規模な会社では、ジョブローテーションを導入すると業務が滞るリスクがあります。

穴埋めとして業務に入っても、人がいない限り1人に負担がかかってしまうからです。さらに効率が悪くなることも考えられます。
そのため、従業員数が少ない企業は導入しない方が良さそうです。

向いていない企業③:長い期間にわたるプロジェクトが多い

長期的なプロジェクトが多い企業の場合は、ジョブローテーションを導入すると、プロジェクトの最中に担当者が変更してしまうこともあり得ます。

担当者が変わってしまうと、社内だけでなく相手先の企業にもコミュニケーション等の点で不都合が生じることも多いでしょう。

特に大がかりなプロジェクトの場合は、従業員のモチベーションや取引先との信頼関係が重要視されるため、向いていないと言えるでしょう。

制度の導入で注意する点

1.意図性をはっきりさせる

目的や意図がはっきりしていることがジョブローテーションを導入する上で重要です。目的もないままに導入すれば、従業員が不満を抱いて逆効果となる可能性もあります。

制度を導入することで、企業にどのような利益がもたらされるのか、どんな問題を解決できるのか、そして従業員にとってどんなメリットを与えられるのかの意図性を明確にしましょう。

そして認識を従業員とすり合わせができると効果は最大になります。

2.制度設計を固める

社員に職場のローテーションをさせると、給与や人事評価などに影響します。そのため、関連する分野も含めてしっかりと制度設計をすることが求められます。どの従業員を対象とするのか、どのくらいの期間で異動させるのか、何を身につけさせたいのかなどを踏まえた上で制度設計をしましょう。

3.各部署に周知して納得してもらう

受け入れ先の部署も人材が出る部署にも納得してもらうことが大切です。各部署にもそれぞれ育成計画やタスクプランがあります。急な人材の異動は、部署にコストを発生させる可能性もありますので、各部署への理解には十分力を入れておく必要があります。

ジョブローテーションを実際に導入している有名企業の例を下記の記事でまとめました。
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まとめ

ジョブローテーションは企業にとっても、社員にとっても納得感があり有益なのものであるべきです。そのためメリットデメリットを正しく理解して、お互いの損失を被ることないような運営が大切になってきます。

また最近では、ジョブローテーションを廃止するという企業も見られています。気になる方は下記の記事をご覧ください。
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