公認会計士は難関資格ではあるものの、高収入、独立開業もできるという夢のような資格であると言えます。ですが、実際どのように開業するのかや気を付けた方が良いことに関してなかなか知る機会が少ないのも現状です。そこで、本記事では公認会計士の独立について、その後の年収事情も含めて解説していきます。
公認会計士の特徴として、資格自体の価値が高いため、独立開業して成功する人も多くいらっしゃいます。独立を目指す理由には、自由度の高い働き方やより広い業務領域でのスキルアップがありますが、なかでもひときわ大きい理由が高額な収入です。
独立がどれくらい稼げるかでいうと、一般的に開業1年目は年収300万程度、開業2年目以降は年収1,000万が多いといわれています。案件の獲得数や単価などにより、実力次第で収入が大きく変わってくるのも特徴です。企業の役員や社外取締役などを兼ねるなど、幅広く業務を行う場合は年収の上限は実質ないと言っても過言ではありません。中には5000万円以上稼がれる方もいらっしゃいます。
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独立後には、基本的には一人で多くの業務領域を見ることになるため、様々なタイプの働き方や案件獲得の方法が考えられます。今回は、独立後の動き方として主に3つについて説明します。
あらかじめ監査法人に登録をしておいて、仕事の要請と自分の予定があったタイミングで業務を行っていく業務形態です。特徴としては、顧客獲得が比較的楽で、クライアントの獲得に苦労した時に重宝します。しかし、会計士は監査法人で勤めているときは税務業務を行うことは基本的にない為、独学で学びながら仕事をするか、独立前に税理士法人等に一度転職してスキルを学んでから独立することもあります。
給与については時給換算すると時給6,000円ほどになり、とても好条件のお仕事といえます。
コンサル業務と一概に言っても、経営コンサルや財務・会計コンサルなど様々な種類があり、求められるスキルは異なります。なかでもM&Aや組織再編に関わるコンサルティングはデューデリジェンスなどの知識が必要となってきます。これらを専門として監査法人にいた人もいれば、独立して初めて業務として触れる人もいますが、監査の素養があればある程度柔軟に対応できているのが現実です。
報酬としては、IPOをしている会社のJSOXコンサルでは、1回に2,000万円、IPOの上場監査の報酬は800万円~2,000万円です。IPO時の税務顧問として関わるのであれば、月額15万円、IPOの全面支援で80万円ほどの報酬が目安となります。
業務内容としては、税理士登録をしたうえで税務業務を行うという内容です。
具体的には、法人税申告、税務の月次チェック、消費税申告、企業結合、M&A、グループ法人税制、税務アドバイス、移転価格税制、国際税務といったものがあります。
収入という面では、一定数のクライアントがいれば、顧問料が安定したものになります。会社の規模に応じて以下のような報酬が得られます。
年商1,000~5,000万規模の会社 | 約1~2万円 |
年商1億以上の規模の会社 | 約3~4万円 |
年商3億~5億規模の会社 | 約4~5万円 |
年商5億規模の会社 | 約5万円 |
監査法人での監査業務では監視や批判的視点の側面が強くなってしまいがちですが、独立後はクライアントに寄り添って仕事を行う立場なので、より密なコミュニケーションを通じてやりがいを感じやすくなります。
普段は見られない企業内部のお金の流れや、企業にいち公認会計士として勤めていると担当できない専門外の領域も見ることができます。
前述のように、1,000万~3000万円の年収が見込まれ、5000万円を超える場合もあります。また、法人として業務を行うため合法的な節税も可能です。
公認会計士は、税理士になる際には税理士試験を免除され、簡単に登録することができます。公認会計士や税理士には独占業務があるため、競合が少ない業務をすることができます。
そのため、他の業種にくらべて独立後の経営の難易度が低くなる傾向にあります。
獲得できる案件次第で報酬が決まり、それが収入に直結するため、収入は獲得できた案件に依存します。高年収が目指せる一方で、最初のうちは稼げないなど、リスクは負わなければなりません。
大規模な案件は大手の監査法人が請け負ってしまうため、個人事務所の獲得できる案件の大きさには限界があります。
経営者としての悩みを持つ仲間は少ないため、精神的に孤立してしまう可能性があります。同じ境遇の同志を見つけて、悩みを相談できるコミュニティを広げることが大切になってきます。
独立前の公認会計士としてのキャリアは、人によって大きく変わることがないため、失敗の事例には傾向があります。今回は、その中でも特に顕著な3つの事例をご紹介します。このような失敗になります。
・集客力や営業力の不足による顧客獲得の失敗
・税務業務の経験不足による案件獲得ができないという失敗
・コンサルティング能力の不足による失敗
内容としては、主に公認会計士の業務領域外での苦戦が失敗につながっていることがわかります。そのため、自分のスキルを適切に把握し、不足している部分を補う努力が重要になります。
たとえ失敗しても、公認会計士資格をもって実務経験のある場合ですと、監査法人や会計事務所に需要があるため、再就職できる可能性が高いです。
また、上場・未上場を問わずベンチャー企業等でのCFO候補や経理部門への就職も選択肢として考えられます。公認会計士の資格の権威と実務の経験は、独立失敗後も変わらず評価されるので、就職先に困ることはないでしょう。
独立に向いている公認会計士にはどういった特徴があるのでしょうか?主なものを見ていきましょう。
独立するということは、事務所の代表になることを指します。公認会計士の1名以外従業員がいないこともありますが、多くが他にもメンバーを抱えていることがほとんどです。そうなれば、メンバーをまとめたり、事務所の方向性を示したりする必要があります。マネジメント経験があればそれに越したことはありませんが、無い場合でも学生時代などにそういった経験があれば向いていると言えるでしょう。
クライアントがいなければ経営は成り立ちませんので、クライアントをどう集めるか、またその集め方が上手いかは独立の向き不向きに大きな影響があります。その指標になるのがコミュニケーション力です。これはビジネスコミュニケーションも含まれます。
集客をするにあたり、まずは自分の周りの人のコネクションをあてにすることが多く、コミュニケーション力の高さによりその繋がりが大きいと、楽に集められるでしょう。また、自身で営業をかけていく際も信頼して案件を依頼してもらえるようなコミュニケーションができるとよいでしょう。
独立開業をするのは、監査法人などに勤務するのに比べると、収入の安定性においてハイリスクハイターンです。一方で、クライアントを集めたり事務所の環境を整えたりと、会計士のやることはたくさんあり、労力を使います。特に開業間もない時期は事務所設立に関する契約などに忙殺されつつも、クライアントがいないため収入は0というケースもあるので、そういった苦しい期間を乗り越える強いメンタルを持っていることは、非常に大切です。
監査法人や公認会計士事務所は日本各地に多数存在し、クライアントを増やすためには、その事務所の特徴を出し、選んでもらう必要があります。もちろん低コストを売りにするなどでアピールは可能ですが、監査業務の中でも強みとなる業務を身につけておけば差別化ができるので、安定した経営ができるようになるのは間違いありません。常に新しい知識を取り入れるべく、勉強を続けていける人は独立に向いていると言えるでしょう。
独立に成功した方々が口をそろえていうのが、独立しようと思い立ったときです。独立に際して深く迷ってしまうのなら独立しない方がいいということです。
様々な不確定要素があるなかでも、独立してやりきるという気概が強ければ、独立の決心がついてそのあともうまくいくでしょう。
ちなみに目安としては、5年以上実務経験を積み、30代半ばくらいから独立するのが平均的なパターンになりますが、意外と独立のタイミングの幅は広いです。
独立後も経営に成功しているお二人の経歴です。
・大手監査法人で3年の実務経験を積んだのち、ベンチャー企業のCFOや中堅監査法人を経て、30代で独立。
・公認会計士試験合格後、監査法人にて10年の実務経験を積み、事業会社の常駐を経て40歳にて独立。
独立後の業務につながる経験のできる就職先をまとめました。
監査法人設立や非常勤、IPOコンサル時に必要なスキルが身につけられます。
お客さんや同僚と交流を深めることで、人脈形成し、独立後の案件獲得のチャネルを作ることができます。
企業の内部の雰囲気や力関係の把握が、税務業務を行う際に役に立つ側面もあります。
独立にはある程度のスキルと経験、人間関係が必要です。具体的には、以下の4つに集約されます。
案件の獲得には、紹介でいただけることもありますが、直接の営業活動がカギになります。案件をとれるかどうかが独立後の収入に直結するので、営業力はまず第一に必要なものです。
営業力に付随して、自分の能力や事務所のアピールの仕方を工夫する力やアピール材料であるHPの作成能力が必要になります。
一方で前述の能力を自分でつけずとも、アウトソーシングで専門の方にお願いすることも可能です。自分の時間を効率的に使うためにも、外注する分野を見極め適切に切り出す能力も必要になります。
独立した公認会計士として活動するにあたって、講演をお願いされることもあると思います。そのようなチャンスでしっかり自分自身や事務所をPRする力は、案件獲得の面でも大切になってきます。
まず、最も大事なことは公認会計士として何かしらの分野に精通していることです。何かが得意ということであればそれを全面的に出して受注できますが、得意分野が無いと他の公認会計士との差別化に失敗します。
公認会計士が独立する際ほとんどの人が税理士登録を行います。開業している税理士とも戦わなければならないのですが、違いがないとすると値下げ等で勝負しなければならず自身の首を絞めることになります。よって、独立するまでに何を経験してきたかが大事となります。
監査法人時代や転職後の会計事務所やコンサルティングファームにて、クライアントとコネクションをつくっておくことで、案件の紹介を受けられる可能性が高まります。仕事を任せるうえでもっとも大切な信頼関係の構築は、独立後の命運を握っているといっても過言ではありません。
監査法人では引き受けない案件が紹介してもらえることがあります。
また、自分の疎い分野等の相談が来た際は、その分野に詳しい知り合い紹介したり、経験のある人を探してきたりしてお願いして一緒にやるという選択ができます。
最後に、事務手続きの面での準備についてお話します。大きく3つあります。
収入が減ると審査が通りにくくなるため、離職前に済ませておくのが安心です。
数か月かかる可能性があるため、独立の見込みが立ち次第、申請するようにしましょう。
各種広報活動を行う際に、自宅の住所でしたら信用や権威といった面で傷がつきます。はやめに拠点を構えて事務所の住所を用いるようにしましょう。
いずれにしても早めの準備が大切になります。
公認会計士の独立には、幅広いスキルや案件獲得のための人脈が必要である一方で、高額な報酬が得られるチャンスでもあります。独立の覚悟を決めて、自分に足りてない能力は何かを考え補う努力をし続ければ、それに見合うリターンがあることは間違いありません。
独立をお考えの方に、本記事がご参考になれば幸いです!!