企業の業績を分析するとき、当然売上が高いか低いかはまず真っ先にみていく指標になるでしょう。ただし、よく売れている・業績が良いかどうかはわかっても、それが続くのか、どうして売上が高いのか低いのかは必ず疑問になると思います。企業や経営の分析をするときにはたくさんの指標があり、それぞれに様々な分析方法があるので、どのように調べていけばいいのかわからなくなってしまった経験はありませんか?そんな方に向けて、今回は売上から派生して、売上高成長率を解説していきます。
経営分析をするときにとても重要なのは、「この会社はどれくらい成長しているのか」ということではないでしょうか。企業は基本的に利益を協力して得る事業体のことですが、ピーター・ドラッカーは現代の経営によると「顧客を創造すること」と言っています。つまり、顧客を創造することとは企業は成長を通して利益を拡大していくものなのです。
利益は基本的に売上に依存しており、売上が伸びることとコストを減らすことで利益を向上させることができます。コストカットも重要ですが、それだけでは頭打ちが来てしまいますから売上は常に向上させていく必要がありますよね。このように売上がどのように成長しているかを見ていくことで、会社が成長しているかを計ることができます。
売上高成長率とは、売上高伸び率とも言われ財務諸表を分析することで求めることができる指標です。企業の前期の売上高に対して当期の売上高がどれほど伸びているかを表す財務指標で、経営をする上で極めて基本的であり重要な指標です。当然、売上高成長率が高ければ企業の未来は明るく倒産・縮小リスクは低いと考えることができますし、売上高成長率が低ければその会社の状況は悪く倒産・縮小リスクが高いと考えられるのです。
また、売上高成長率をきちんと把握することによって、今会社がどのような状況であるのかがわかるため、それに応じた適切な一手がうてます。売上高成長率は基本的な指標なので、他の指標と組み合わせたり、この指標を使ってさらに別の指標を求めたりします。いずれにしても、会社経営の基礎の基礎、企業の成長を計る重要な指標というわけです。
売上高成長率の計算式は以下の通りです。
売上高成長率(%)=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100
前期の売上に着目し、それに対してどれだけ今期が伸びたかを計算します。基本的に売上高成長率は前期比を指すのですが、分析する中で「いついつの時期と比較して伸びているのか知りたい!」なんてこともあるのではないでしょうか。その場合は「前期売上高」の部分を「いついつの時期の売上高」としてあげれば、その時期に対してどれだけ伸びているかの割合がわかります。
正直なところ、売上高成長率に目安はありません。その理由は、分析する企業によりけりというのが本当のところで、どのような成長戦略を描いているのか、市場はどうなっているのか、強みや販売戦略、投資期なのか回収期なのか、本当にケースバイケースなのです。
また、前期と当期だけ算出というわけにはいかず、売上高成長率が増加していてもその前の期間と比較してどうなのか、増収幅は増えているのか減っているのかなども検討する必要となります。
では実際に売上高成長率の使い方や分析方法を見ていきましょう。
売上高成長率は一般的に過去5年程度の数値を見ていくと良いとされています。
前述の通り、企業の時間軸の中で成長がどのように動いているのかを見ていかないと、その指標からなにかのサインを読み取ることはできません。
また、売上高成長率はかならず利益成長率と一緒に見ていきましょう。
売上が増加しているのに利益が減少しているのであれば、それはコストがかさんでいる証拠です。
その逆であれば、事業の選択と集中という戦略の成功を意味しています。
このように企業の成長戦略のなかで、時間軸を意識すること、利益率とセットで見ることを意識することに気をつけて分析していけば、分析方法は間違えではありません。
基本的には売上高成長率が高いと増収を意味しており会社は成長していると考えられますが、その数値が物価の上昇率を下回っている場合や、その会社が戦っているマーケット自体の成長率を下回っている場合には、いくら会社が成長していても実質のところは企業の成長は低下していることになるので注意が必要です。
また、成長という観点ではありませんが、計算式でも見たとおり売上高だけを指標としているため、コストも同時に増加しているということも考えられます。
当然利益ではなく売上の増加なので、コストも同時に増えるのでガバナンス統制が取れているかなど、組織運営上問題点がないかの確認も必要です。
常にこの業界が高いといった明確な特徴はなく、例えば2018年ではIT系や先端ビジネスなどの売上高成長率が高いといった傾向もあるようですが、それも対象とする企業をどこまで範囲に入れるかによって異なります。経済状況や国際状況などによって成長率など大きく異なるため、業界毎に参考値を求めるのはあまり現実的ではありません。
以上、売上高成長率について、計算方法や分析方法を中心に解説しました。
転職先で考えている会社があれば、その会社のIR情報などから財務諸表分析をしてみるのはいかがでしょうか。