規模の大小を問わず、後を絶たない企業会計の不適切処理。2018年の1年だけでも、上場企業で54社の不正会計の開示企業がありました。こうした報道を見ていると、「不適切会計」「不正会計」「粉飾決算」とよく似た文言が並んでいますが、何が違うのでしょうか。本記事では「不適切会計」「不正会計」そして「粉飾決算」の意味とその違いについて、言葉の定義から解説します。
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不適切会計とは、「意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる誤り(監査・保証実務委員会研究報告第25号)」。を差します。
つまり、不適切会計とは、故意に数字を操作した虚偽の報告はもちろん、経理・会計担当者の知識不足による会計処理の誤りや、ケアレスミス等の人為的なミスによって引き起こされることもあります。
不正会計とは、財務諸表に「意図的に」虚偽の表示を記載したり、必要とされる開示をあえてしなかったりすることを指します。
先ほどの「不適切会計」の中でも、その数字を意図して作っていることが明確な場合には、この言葉が使用されるのです。
一度不正が行われると、そのつじつま合わせのために不正会計が繰り返されるというケースも珍しくありません。
2015年に発覚した東芝の不正会計事件のように、巨額の損失を隠ぺいしていたことが発覚すると、社会的に大きなインパクトを与え、企業の信頼は失墜します。
不正会計では、社内の事情を知るものが意図的に会計情報を偽装するため、社内のチェック機能が働きにくいのが特徴です。特に経営陣の主導で不正会計が行われてしまうと、公認会計士による監査や、税理士によるチェックでもその不正を見抜くことが難しくなってしまいます。
この時も監査法人ではなく、証券取引等監視委員会の調査にて発見されています。
粉飾というのは、見た目をりっぱに飾り立てる事という意味です。そこから転じて、会社を良く見せようと、資産が増加して経費が減少するように決算書を作成し、実際には赤字なのに黒字に見せかけるような会計処理のことを「粉飾決算」と呼んでいます。
粉飾決算の方法は色々ありますが、その手法としては大きく分けると2つあります。
また、法人税の支払いや株主配当を少なくするしたり、いわゆる裏金を作ったりするために、財務状況を実際より悪く見せる手法もあり、こちらは「逆粉飾決算」と呼ばれています。
こうして順を追って行けばわかりますが、数字が誤った財務諸表があった場合、以下のように言葉を定義しているケースが多いようです。
つまり、不正会計や粉飾決算というのは、改ざんや隠ぺいを「明らかに意図して」行ったということが確実にわかる場合に使い、粉飾決算は、不正会計の中でも財務状況を良く見せている場合に使われることがわかります。
不適切会計は、上場企業の市場別で見た場合には、東京一部上場企業に実は一番多く発生しています。国内外に子会社や関連会社を多く持つような大企業ほど、企業会計が複雑化することからチェック機能が行き届かないため起こりやすいのです。
なかでも問題なのが不正会計や粉飾決算です。営業ノルマの未達を隠すための架空の売上計上や、売掛金の前倒し、さらには役員・従業員の横領隠しなどが起こる理由も「会社を守るため」といったような保身や出世、上長への忖度などもないまぜになり、組織一丸となって行われているような場合もあります。自身が所属している企業を(誤った方法でも)守ることが、コンプライアンスよりも優先されてしまうのです。
そして、不適切会計については、年々増加傾向にあります。そのうち、不正会計や粉飾決算は約60%、そして複雑化する高度な企業会計に対応できずに会計処理を誤るケースも40%にも上る(2019年1月 東京商工リサーチ調べ)のです。
ここには、会計処理の高度化に対応できる人材不足といった問題も見え隠れします。
金融機関や投資家は、決算書に代表される財務諸表を見て投資判断を行うので、決算書類の誤りがあると、投身判断を大きく間違いかねません。上場企業であれば、証券取引所から特設注意市場銘柄への移管や上場廃止といった措置もとられますし、悪質なものについては、会社法に基づく民事罰だけでなく、刑事罰が科される場合があります。
コーポレートガバナンスやコンプライアンスへの意識向上だけでは防ぐことが難しい不適切会計。経理・会計責任者だけの問題でなく、企業組織のあり方を包括的に考えるべき問題だといえます。
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