経理・財務人材育成事業の一環として経済産業省の委託を受け、日本CFO協会が実施するFASS検定。経済のグローバル化に伴い、今後ますますファイナンス系の知識を持つ人材は求められる傾向にあります。
近年注目されてきているFASS検定ですが実際はどのような試験なのでしょうか?本記事ではそんなFASS検定について、資格の概要や試験内容、推奨されている背景などを中心に、実際に転職やキャリアで役立つかなどを詳しくお伝えします。
「FASS」とは、「Finance&Accounting Skill Standard」のそれぞれの頭文字から取った略称で、一般的に「ファス」と呼ばれています。日本語では経理・財務スキル検定とも呼ばれています。この検定は2005年11月にスタートした検定で、対象は経理・財務部門の実務業務をしている方や、これから従事しようと目指している方です。
簿記検定のような資格試験とは異なり、実務家のための実務スキル検定であるのが「FASS」の特徴です。資産・決算・税務・資金の4分野+オプション分野から構成され、それぞれの分野ごとにスコアによってAからEまでの5段階に評価されます。合格・不合格があるわけではなく、自分の現在のスキルの立ち位置がスコアによってわかるという、イメージとしてはTOIECのような試験です。
現在どれだけ実務スキルが身についているかを、分野ごとにスコアで確認することができますので、自分の強みと弱みをはっきりと可視化することができます。
FASS検定は、経理・財務分野における実務知識やスキルレベルを客観的に測定する手段として知られている試験で、経済産業省が勧める経理・財務人材育成事業の一つとなっています。この事業では、「経理・財務サービス・スキルスタンダード」の普及促進策の担い手として、経理・財務⼈材の育成に取り組んでいます。
なぜ実務スキルを客観的に評価するのに優れていると言えるのかというと、実際に「実務スキルの証明としての資格がほしい」といった企業側からの要望に応えるかたちで作られた資格が、このFASS検定だからです。
また、FASS検定は、先進企業50社の経理・財務幹部によって開発された試験のため、経理・財務の現場で求められる実務力を数字で見える化することができます。FASS検定の名前をあまり聞いたことがないという方も多いかも知れませんが、すでに54,000人以上が受験しています。
FASS検定は、経済産業省の事業の一環として日本CFO協会が、2005年度下期より毎年2回、定期的に実施・運営しています。2005年度から始まった試験であり比較的新しい試験です。
FASS検定は、二期制の受験方式となっており、1年のうちで以下の期間内であればいつでも試験を受けることが可能です。仕事の都合がつけやすいので忙しい社会人にはとてもありがたい受験方式です。
上期:5月1日~7月31日、下期:11月1日~1月31日
※同一受験期間内で再受験はできません
試験は全国にある試験センターで、コンピューターを使っての受験となります。
(試験会場はこちらより)
FASS検定の試験は90分です。資産・決算・税務・資金の4分野合計で100問(四肢択一)の試験です。総合点(満点:800点)から5段階のレベルでスキル評価し、分野ごとの達成度合いも表示されます。
また、FASS試験終了後にオプションとして収益認識基準30分・20問の試験を任意で受験可能です。オプション科目は、その達成度合いから、3段階のレベルでの評価を表示されます。
この試験結果は、試験終了にその場ですぐわかるので、結果が出るまでやきもきすることなく、すぐに自分の実務の習得に努められるというスピーディーさも魅力です。
FASS検定に受験資格はなく、誰でも受験することが可能です。
また受験料については日本CFO協会の会員かどうかで金額が変わってきます。
一般の人の受験料は11,000円なのに対して、会員の人は8,800円となっています。
さて、FASS検定の評価はA~Eまでの5段階あるとお伝えしました。実務スキルを積んでいないと正解できないような問題構成になっているので、そのスコアは実務年数と高い相関があります。
実務スキルを問われる試験なので、知識だけ覚えていればスコアが取れるというわけではありません。もちろん簿記2級程度の知識はベースとして必要ですが、実務で使っているのかというのが重要なカギになります。
FASS検定の試験対象は、「経理・財務サービススキルスタンダード」における“定型業務”です。対象となる業務範囲が広く、また実務に則した試験なので現場の業務経験で得たスキルを適切に把握することができる試験です。また、試験は、「資産・決算・税務・資金」の4つの分野で構成されており、経理・財務パーソンが日々取り組んでいる標準的な業務が試験の範囲となります。
また、上記4分野に回答した後、任意で「オプション科目」に回答することも可能です。「FASS」試験本体は、下記の4分野の出題範囲から合計で100問(四肢択一)、「オプション科目」として収益認識基準の20問(四肢択一)が出題されます。
経理財務スキル検定と同じような資格として日商簿記検定があります。確かに日商簿記検定を取得していることでも、一定のスキルを証明できるのですが、日商簿記検定では「資金」や「税務」といった内容が含まれていません。そのうえ、これらの内容は、経理や財務の実務には欠かすことのできない内容です。そのため、経理財務スキル検定の方が実務スキルを評価できる資格だといえます。
FASS検定は、現状の実務スキルの診断や今後の社内教育における有効な試験として、多くの企業が活用しています。
特に大手企業では認知度が高く、重要視されているほか、自身の強みや弱みを把握することによって、転職の際に実務における経験・知識のアピールに使うことができますし、受け入れる企業もどの分野が強いのか弱いのかを解ったうえで受け入れられるというメリットがあります。
また、社内での異動や担当希望の際にも、実力チェックもできますし、今後のキャリアアップの方向性を決めるのに使うことも可能でしょう。
実務経験が重要なカギとなるFASS検定ですが、では座学はなしで良いかというと、スコアアップを狙うのであればやるべきです。
まずは日本CFO協会発行のガイドブックを使って学習するのが一番です。実際に問題を解きながら、知識のおさらいと、足りない部分を埋めていきます。
また、日本CFO協会では、FASS検定に向けて短期集中型の研修を実施しているので、この講義を受講するのもおすすめです。テキストによる自習に加え、講師に直接質問ができるので、試験に向けての準備として最適といえるでしょう。
従来の「簿記検定」では測れなかった「実務スキル」の評価基準を望む企業側のニーズに合わせて導入されたFASS検定・今後も導入企業は増えていくでしょう。
FASS検定でAランク取得を狙う方は多いと思いますが、勉強方法についてはこちらの記事で詳しく紹介していますので、あわせて是非ご一読ください。
繰り返しお伝えしてきたように、FASS検定は経理・財務のスキルを証明する検定なので、それら業務を企業で担当する経理職、またそれらの業務のサポートをコンサルティングという形で行う会計事務所などで活かせます。
また、直接そのスキルと関連が無い営業職でも、その企業の事業の全体感を把握できるという面でプラス評価になることもあります。
FASS検定への評価として、「取っても意味ない」という意見を聞いたことがあるかもしれません。ご紹介したようなメリットがあるにも関わらず、そのように言われることがあるのはなぜでしょうか?いくつか理由を見ていきます。
経理財務の実務スキルの証明ができる反面、FASS検定自体があまり知られていないという現状があります。知名度が無い限りは、いくらAランクを取ったからと言って就職や転職、職場でのキャリアアップへの武器になり得ません。
同じ経理に活かせる資格の中では、簿記やFPの認知度が圧倒的に高いです。中でも簿記については、日商簿記2級を応募における必須資格にする経理職や会計事務所の求人が多いので、実務よりも自身のキャリアアップに活かしたいという方はFASS検定よりもオススメであると言えます。
FASS検定は実務スキルについての検定なので、実務経験がないとハイスコアを獲得するのは難しいです。一方で実務経験がある方については、その中の多くが日商簿記2級を持っていたり同等の知識を持っていることがほとんどです。
つまり、実務未経験の場合は簿記の取得に進んだ方が経理職などへの転職には活かせますし、実務経験者の場合はわざわざ取得する必要性が薄いということになります。
なので、単純な実務スキルの証明や確認以外の用途で使いづらい経験者向けの検定であることが、受験を懸念する意見が出てくる一因と言えます。
FASS検定を受検するかどうかは、ここまでお読みいただいた内容を踏まえてご自身で判断いただければと思うのですが、受検の有無に関わらず、経理職や会計業界への転職を成功させるために、転職エージェントである「ヒュープロ」のご利用がオススメです。
「ヒュープロ」は士業・管理部門特化の転職エージェントで、経理職や会計事務所への転職をお考えの皆様の、キャリアをサポートしております。選考にあたって書類添削や面接対策の手厚さや、業界特化だからこそ持ち得ている企業情報や市場感の知識の深さには定評があります。
FASS検定では、グローバル時代の経理・財務実務スタッフに最低限必要とされる基本理論の習得レベルを測定します。したがって、経理や財務に携わる人であれば、自分がどの程度スキルを習得できているかを判定に役立てるために、受験しておきたい検定試験です。
また、FASS検定は合否の出る試験ではないので、TOEICなどのようにスコアでスキルを評価され、客観的に自分の実力を把握することができます。そして、FASS試験の勉強を通じて、企業の現場で求められる実務知識と基本理論を幅広く理解することができます。定期的な受験により、日頃のブラッシュアップの成果を反映させやすくなりますので、経理・財務担当者の方はぜひ受けておくべきでしょう。