企業の財務・経理の最高責任者であるCFO。CFO資格認定は、CFOに必要な財務・経理や経営に関する知識やスキルを証明します。スタンダード・プロフェッショナル・グローバル・ジェネラルのレベルがあります。今回はそれぞれの概要や難易度、取得するメリットについて解説します。
CFO資格認定とは、CFOにふさわしい十分な能力が備わっているのを証明する資格です。
CFOは経営陣の一員として責任を果たしつつ、企業のお金に関するすべてを統括する責任者として、透明な財務管理の実現や企業価値の向上を図る重要な役割を担います。
そのため、財務に関する専門的な知識やスキルだけでなく、経営者としてて中長期的な方針を決める能力など、求められる能力も多岐にわたります。
CFO資格認定は、そんなCFOに求められる幅広い知識や能力を客観的に測定できる資格です。
〈参考記事〉
CFO資格は日本CFO協会が認定を行っている民間資格であり、取得のためには個人会員登録が必要です。また、資格保持のためには、協会への継続的な登録も行う必要があります。
CFO資格認定においては、受験するジャンル・難易度によって、以下の4つのグレードがあります。
スタンダードCFO | ・経済産業省の「経理・財務サービス・スキルスタンダード」に準拠した資格 ・FASS検定でレベルAの取得が必要 |
プロフェッショナルCFO | ・経済産業省の「地域金融人材育成システム」に準拠した資格 ・プロフェッショナルCFO資格試験の合格が必要 |
グローバルCFO | ・グローバル企業の財務管理に必要な知識を証明する資格 ・米国CTP、米国CPA、米国CMAの合格が必要 |
ジェネラルCFO | ・MBAのファイナンスのコア知識を証明する資格 ・日本CFO協会が認める大学院過程の修了が必要 |
財務実務の専門性を証明する資格として、スタンダードCFO・プロフェッショナルCFO・グローバルCFOがあるほか、経営管理分野の知識全般を身に付けていることを証明するジェネラルCFOの資格があります。
スタンダードCFOは、経済産業省が定めている「経理・財務サービス・スキルスタンダード」という、優良企業の経理・財務プロセスを可視化・標準化し業務を定義づけたものに完全に準拠した資格です。
CFOに必要な基本的な財務知識や実務能力を証明します。
資格認定を受けるには、経理・財務スキル検定であるFASS検定において、レベルAの取得が必要です。
試験内容 | 資産・決算・税務・資金における4分野 4分野を回答した後に任意で オプション科目「全社統制・IT統制分野」へ回答可能 |
〈参考記事〉
プロフェッショナルCFOは、経済産業省が定めている「地域金融人材育成システム」という、財務・会計・企業経営を体系的に学べるテキストに完全に準拠した資格です。
スタンダードCFOよりも高度な財務知識が求められ、企業の財務部門をリードし、経営企画の策定や企業価値評価などの重要な業務を遂行する能力を証明します。
資格認定を受けるには、プロフェッショナルCFOの資格試験を受験して合格する必要があります。
試験内容 | ・財務理論に関する基本的な知識 ・企業価値評価・経営への応用 ・財務の側面における課題解決に向けた方法及びその応用 |
グローバルCFOは、グローバル企業の財務管理で必要となる知識を証明する資格です。
資格認定を受けるには、以下のうちいずれかの米国の資格試験に合格する必要があります。
〈参考記事〉
ジェネラルCFOとは、MBAにおけるファイナンスコースのコア知識を証明する資格です。
資格認定を受けるには、会計専門職大学院やファイナンス専門大学院といった、日本CFO協会が認定する大学院過程を修了する必要があります。
〈参考記事〉
上記の4つの資格のうち、スタンダードCFO認定資格とプロフェッショナル認定資格については、所定の資格試験を国内で受験することができます。
スタンダードCFO認定資格については、経理・財務スキル検定(FASS検定)を受験してレベルAに合格することが必要であり、一般的にレベルAは簿記3級レベルの難易度といわれています。
プロフェッショナルCFO認定資格については、プロフェッショナルCFO資格試験(企業価値向上のための財務戦略エキスパート試験)に合格することが必要です。
合格率が非公開となっているため正確な数値データを基にした判断は難しいですが、合格率は5割程度と言われます。難易度については、簿記3級よりは難しく、2級よりは低い程度といわれています。
そのため、受験対策をきちんと行う必要があり、全く会計・経理の知識がない場合には半年以上の学習期間は確保することが望ましいでしょう。
一方、グローバルCFOとジェネラルCFOについては、それぞれ米国資格やMBAの取得を証明する証拠書類を日本CFO協会事務局に提出することで資格を取得できます。
グローバルCFOの要件の資格の一つであるCTPについては、2011年以降日本国内で試験を受験できなくなり、国内での資格取得が難しくなりました。代わりに米国CPAやCMAを受験する必要があります。
ジェネラルCFOについては、日本CFO協会が認める国内大学院でMBAを取得すれば、申請することで資格認定されます。しかし、大学院に合格し、さらに長期間の通学が必要と考えると難しいといえるでしょう。
なお、プロフェッショナルCFOの試験については、2024年3月31日をもって休止している点に注意が必要です。2024年時点では再開が未定となっています。
〈参考記事〉
ここからは、ここまで紹介したCFO資格認定を取得するにあたってのメリットについて、以下2点を紹介します。
CFO資格は、財務の専門家としての知識やスキルを証明する強力な手段です。財務理論に関する基礎的な知識から、経営計画や企業価値評価など財務面での課題解決手法までカバーしているため、資格を取得することで実務に即した幅広い知識を証明できます。企業での信頼獲得や評価の向上にもつながるでしょう。
CFO資格を取得することで、転職活動を有利に進めることができます。財務の専門知識とスキルを証明できるため、企業の財務部門への転職を目指す際に高く評価されるでしょう。また、日本CFO協会への個人会員登録が必須となっているため、ネットワーク作りも行うことができる点は転職活動を行う上でも大きなメリットとなるでしょう。
CFO資格を活かしてCFOになるためには、企業の財務・経理部門にてキャリアを形成していくことが重要です。
CFOになるためには、財務や経理の専門的な知識はもちろん、経営陣の一人として経営戦略に対する知見や経営者としての視点も求められます。
しかし、これらの経営に関する知識や能力は、日々の経理・財務業務を繰り返すだけでは身に付けることは難しいです。
そこでCFO資格を取得することで、学習過程の中で経営計画など身に付けにくい知識を体系的に学ぶことができます。
そのため、CFOを目指すのであれば、CFO資格を取得して財務と経営の両方の専門知識を学びながら、経理・財務部門でのキャリアアップを目指すことが効果的なステップといえるでしょう。
〈参考記事〉
CFOになるために必ず資格は必要ではありませんが、所持していると有利になる資格としては公認会計士が挙げられます。
公認会計士は国家資格のひとつであり、会計のプロフェッショナルとして監査業務に従事することが可能です。CFOに求められる財務や経理、監査に関するスキルに関連する資格です。
公認会計士のキャリアステップとして、監査法人などで経験を積んだのちに企業に転職してCFOになるケースが多くあります。
〈参考記事〉
今回は、CFO資格について解説しました。
財務・経理の視点で経営戦略を打ち出すことができるCFOは、企業経営において重要な役割を果たします。CFO資格を取得することで、そんなCFOに求められる専門知識を体系的に身に付けていることを証明できます。
経理・財務知識の証明になることで転職活動で活かすことができるため、キャリアアップを目指したい人は取得に挑戦することをおすすめします。