近年日本でも人気が高まってきている米国公認会計士ことUSCPA。日本にいても受験が可能であり、資格を取得すれば転職やキャリアアップにも活かすことができます。今回は、そんなUSCPAについて、試験や難易度、日本の公認会計士との違いやその魅力・意味について徹底的に解説します!
USCPAとは、「U. S. Certified Public Accountant」の略で、日本語では米国公認会計士と訳される、アメリカの公認会計士の資格です。
米国の資格とはなりますが、世界中の多くの国々と相互認証制度がある世界で最も広く認知されたビジネス資格の1つのため、資格保有者はアメリカ以外の国でも働くことができます。
全米州政府会計委員会(NASBA)により資格試験が実施され、日本をはじめとする世界の多くの国で受験することができます。
USCPAは米国公認会計士というだけあって、日本の公認会計士との違いが気になる方も多いのではないでしょうか?ここでは、2つの資格の違いについて詳しく見ていきましょう。
USCPAと公認会計士の最も大きな違いとしては、資格を取った後に日本で行える業務です。
どちらも会計の資格であるため、監査業務や会計業務を行うことができますが、最終的に監査報告書へサインする業務は公認会計士の独占業務であるため、USCPAを持っているだけだと日本で監査責任者としてサインすることはできません。
また2つの資格の違いとして難易度も挙げられます。
USCPAの合格率は平均して50%以上となっており、2014年のデータによると日本人受験者の合格率は30%前後となっています。それに対して、公認会計士の2023年に行われた試験の合格率は7.6%でした。日本の公認会計士試験は現在受験資格が無いので、USCPAの合格率との比較は一概にはできませんが、合格率でみると日本の公認会計士の方が難易度は高いといえます。
《参照記事》
詳しくは後述しますが、試験の形式にも違いがあります。日本の公認会計士は短答式と論文式で構成されており、その両方に合格しないと公認会計士になることはできません。また、原則いつでも受けることができるUSCPAに対して、日本の公認会計士試験は短答式試験が年二回、論文式試験が年一回(三日間実施)となっています。
《参照記事》
米国の公認会計士資格でありながらも、近年日本でも取得を目指す人が増えているUSCPAですが、取得するメリットはどのようなものがあるのでしょうか?ここではその魅力を詳しくご紹介します。
アメリカの資格といえど、世界的に受験者も多い国際的に認められた資格であるため、日本や米国だけでなく、様々な国からの評価や信頼を得ることができます。近年のグローバル化に伴い、海外進出する日本企業が増えていますが、こうした企業にとって国際基準の会計知識を持つ人材は必要不可欠となっています。USCPAは国際的にも信頼性の高い資格であり、さらに国際会計基準を理解している貴重な人材として需要が高まっているため、結果的に年収も上がりやすくなります。
言うまでもなく、USCPAの試験は英語のみで実施されるため、USCPAに合格するということは会計に関するビジネスレベルの英語力の証明にもつながります。
ビジネスの共通言語である英語ができることで、給与水準が高い外資系企業で働くことができたり、海外とコミュニケーションをとる重要なポストに抜擢されたりとすることで年収アップを実現することができます。
詳しくは後述しますが、日本でも米国や国際会計基準を採用する企業が増えていることもあり、USCPAを取得することで、監査法人や外資系企業など様々な場所で活躍することができます。こうしてキャリアの選択肢を広げることができるため、年収が上がりやすい職場を自ら選択することができるといえます。また日本は世界的にみると賃金が上がりにくい状況にありますが、USCPAは国際的に通用する資格であるため、海外で働くという選択をすることもできます。
USCPAに対して「意味ない」とか「やめとけ」といったネガティブな意見が、いつの頃からかネットでなどでよく見られるようになりました。
そのような声が出てくる理由としては、「海外の資格なので日本の転職などでは活かしづらいというイメージがある」「できる業務の幅が広がらない」「習得した知識を活用できる職場が少ない」といったことが挙げられるでしょう。
では、これらは実情と一致しているのでしょうか?公認会計士の独占業務ができない点や、公認会計士の方が日本では活かせる職場が多いというのは事実ですが、評価されづらいために転職活動やキャリアアップに活かしにくいというのは、必ずしも事実とは言えないでしょう。
USCPAの取得によって身に付けられる知識は、国際会計基準を導入している企業をクライアントに持つ監査法人や海外に子会社を持つ企業などでは高いニーズがあります。また、独占業務こそできないものの、監査業務の大部分は行うことができるため、USCPAを取るために得た知識で業務の幅を広げること自体は可能と言えるでしょう。
《参照記事》
ここからは、実際にUSCPAになるために必要なステップについて解説していきます。
USCPAになるためには、試験に合格してライセンスを申請する必要があります。
USCPAには受験条件があり、州ごとに細かく定められているため、まずは出願する州を選択します。自分が受験条件を満たしやすい州を選択してそれをクリアしたら、必須科目3科目、選択科目1科目の計4科目の試験に合格し、実務経験などのライセンスの申請と取得をすることでUSCPAになることができます。
ここからは簡単にUSCPAの試験について紹介します。
上述の通り、州によって受験条件は異なりますが、一般的に「4年制大学を卒業しているまたは在学中」かつ「会計・ビジネスの単位を一定以上取得している」と定められています。
USCPAの試験は科目合格制になっており、FAR(財務会計)、AUD(監査論及び証明業務)、REG(商法・税法)の3科目と、選択科目のBAR(ビジネス分析)、ISC(情報システム)、TCP(税法遵守)の3科目から1科目を選択し、計4科目が必要となります。
それぞれの科目で75点以上取れれば合格と定められており、科目合格の有効期間は18か月です。科目合格がある場合は18か月以内に4科目合格しておく必要があり、18か月経過後はその科目の合格は取り消されてしまいます。
また、第1四半期〜第4四半期まで1年に4回の試験日程が定められており、自由に受験することができます。
試験科目内容や試験時間については、以下の記事でも詳しく紹介していますので併せてご参照ください。
〈関連記事〉
ここまでUSCPAの魅力や試験についてみてきましたが、USCPAを取得する難しさはどれほどなのでしょうか?USCPAの難易度について、勉強時間、受験条件、合格率、英語力の4点に注目して見ていきます。
英語力や会計知識、実務経験などの前提条件により異なりますが、一般的にUSCPAの合格には約1,000時間必要であるといわれています。公認会計士試験の合格に必要な勉強時間である約2,500~3,500時間よりは少ないですが、会計知識や英語力の有無によって異なるため、一概に勉強時間を比較してUSCPA試験より公認会計士試験の方が難易度が高いとはいえないでしょう。
《参照記事》
上述の通り、USCPA試験は「4年制大学を卒業しているまたは在学中」かつ「会計・ビジネスの単位を一定以上取得している」など、一定の受験資格を満たしていなければ受験することができません。ある程度の知識を有する人しか受験できない点でUSCPA試験は難易度が高いといえます。
USCPAの科目ごとの合格率は40~60%程度といわれています。しかし、日本人受験者だけの合格率はこれよりも低く、さらに上述の通り、ある程度知識を持った人のみが受験できるため、受験者のレベルがそもそも高い点が高い合格率につながっているといえるため、試験の難易度自体は高いといえるでしょう。
〈参照記事〉
USCPA試験を受験するにあたり、前提として英語力が必要となります。その点、公認会計士や簿記試験と比較すると、会計知識だけでなく英語力が問われる点で難易度は上がるといえます。
USCPAの難易度については以下の記事でも詳しく紹介していますので併せてご参照ください。
〈参照記事〉
USCPAは米国という名前がつくため、日本での就職・転職の際に活かす事が出来ないのではないかと思われることが多いですが、実際はどうなのでしょうか?
結論から申し上げますと、日本でもUSCPAの資格を活かして十分活躍することができます。近年のグローバル化で海外進出する企業が増加しているため、国際会計基準を理解している人材として需要が高まってきており、実際に日本で活躍している人が多く存在します。
また転職活動においても、上述の通り、国際的に信頼の高い資格であり英語力の証明である点などをアピールすることで、グローバル展開している企業や外資系企業に転職する際に評価されやすくなるでしょう。
《参照記事》
では、実際にUSCPAを取得するとどんな職場で活躍できるのでしょうか。
代表的な5つは下記の通りです。
特にFAS系コンサルティングファームでは、クロスボーダー案件が増えてきているため、国際的な知識を持っているUSCPA有資格者のニーズが特に高まりつつあります。これらの転職先についての詳細は、以下の記事にも詳しく紹介しておりますので、併せてご参照ください。
《参照記事》
最後に、USCPAを目指す方からよく寄せられる疑問についてQ&A形式でご紹介していきます。
USCPAの年収は就職先によって異なります。日本で働く場合、コンサルティングファームでは500~800万円、監査法人であれば500~700万円といわれており、昇給を通じて年収を高めることができます。海外で働く場合は海外の企業や外資系の銀行などでより高い給与を期待できるでしょう。
USCPAの年収については以下の記事で詳しく解説しているのでぜひご参考にしてみてください。
《参照記事》
USCPA取得に向いているのは下記のような人です。
USCPAは専門性が高く、高年収が見込めるため、自分の努力を正当に評価される実力主義の中で働きたい人、また英語力を活かして海外やグローバル企業で働きたい人におすすめです。また、昔ながらの大企業はまだまだ英語ができる人は非常に少なく、さらに会計の専門知識となると希少な人材なため、大企業を目指したい人にはぜひ目指していただきたい資格です。
結論から申し上げますと、働きながらUSCPAを取得することは可能です。USCPAの試験では科目合格制度が採用されているため、仕事をしながらでも自分のペースで取得を目指すことができます。
しかし、試験の合格だけでなく、受験条件もあり、さらに英語力も必要となります。このように難易度は高いものになりますが、仕事と勉強の両立を考えながら、自分にあったスケジュールで勉強することで合格を目指すことができるといえます。
USCPA試験に合格するための勉強法として、主に受験予備校に通うか独学が挙げられます。受験予備校に通うことで、合格までのプラン決めや進捗の管理などを行うことができますが、働きながら合格を目指す場合には独学で自分のペースで学習を進めることもよいでしょう。会計知識の有無や英語力によって必要な学習はそれぞれ異なるため、自分にあった勉強方法で効率的に学習を進めることが重要です。
《参照記事》
今回はUSCPAについて解説しました。USCPAの資格は、目指す層もさまざまなため、難易度が高い資格ですが、それ以上に働く場所に縛られなかったり、日本の転職市場での需要が非常に高いです。将来実現したいキャリアや携わりたい仕事をもとにキャリアプランを立てながら、USCPAの資格を目指してみるのもいかがでしょうか。