令和6年8月6日~8日に実施された2024年(令和6年度)第74回税理士試験の結果が、発表されました。
合格された皆様、おめでとうございます!そして大変お疲れ様でした。
こちらのコラムでは今回発表されました税理士試験の結果、および今後の税理士試験の動向などをご紹介させていただきます。
令和6年度(第74回)税理士試験の受験者数は今回34,757人で、前回(令和5年度)の32,893人から1,864人増となりました。
昨年は税理士試験の受験資格が緩和されたことにより、受験者数が5年ぶりに3万人を超えましたが、今年もその好影響が継続し昨年以上の受験者数となりました。
第74回税理士試験では官報合格者が578人であり、昨年より22人減でした。また一部科目合格者は5,184人であり、昨年の6,525人から1,341人の大幅減でした。
合格率については16.6%で、こちらも前回の21.7%より5.1ポイントの大きな下落となりました。
出典:令和6年度(第74回)税理士試験結果|国税庁HP
科目 | 令和6年度合格率(%) | 令和5年度合格率(%) | 令和4年度合格率(%) |
---|---|---|---|
簿記論 | 17.4 | 17.4 | 23.0 |
財務諸表論 | 8.0 | 28.1 | 14.8 |
所得税法 | 12.6 | 13.8 | 14.1 |
法人税法 | 16.4 | 14.0 | 12.3 |
相続税法 | 18.7 | 11.6 | 14.2 |
消費税法 | 10.3 | 11.9 | 11.4 |
全体(延人員) | 13.5 | 18.8 | 16.7 |
上表は主な科目ごとの合格率です。前年の合格率と比較して特徴的なのは、財務諸表論の大幅な下落と相続税法の上昇です。
簿記論や財務諸表論については合格率の上下が激しい傾向にあり、昨年は財務諸表論の合格率が高い年だったため、もともと今年の財務諸表論は難しくなると予測されていました。
とはいえ過去10年で10%を割った年はないため、今回はかなり難しい科目だったといえます。次回は再度合格率が高くなる可能性が高いですが、どこまで回復するのかは未知数です。
一方で、毎年合格率の上下を繰り返していた簿記論は昨年とほぼ同じ合格率でした。ただ、2016年~2018年にも上下が少ない期間が続いていたため、再度上昇する可能性も十分ありそうです。
なお学歴別および年齢別の受験者数・合格者数・合格率については以下の通りです。
2022年の試験までは高校生や大学1・2年生の場合は日商簿記1級を所持していなければならない等の受験資格がありましたが、簿記論および財務諸表論は誰でも受験可能、税法科目は法律・経済分野以外を履修した大学生や卒業生でも受験ができるようになりました。
この要件緩和により、2023年は試験受験者数が増加しただけでなく、合格者数や合格率についても増加しました。では、本年の試験ではどのような影響があったのでしょうか?
受験資格緩和の初年度であった昨年は、一昨年に比べて4,040人の増加でした。前回ほどの増加では無かったものの、今年の試験でも受験者数は1,864人の増加となったため、税理士のなり手不足の解消を目指した受験者数の増加という、緩和の目的は果たし続けているといえます。
その一方で合格者数や合格率は、上述の通り昨年に比べて大きく減少しました。詳細なデータが公開されていないため、あくまで仮説にはなりますが、今回のこの減少に受験資格緩和の影響している可能性として、以下の二点が考えられます。
前者を裏づけるものとして、1~2科目めに受験するのが一般的な財務諸表論の合格率の大幅減があります。受験者数は簿記論に次いで多い科目なので、この難化が全体の合格者数や合格率の減少に影響していそうです。
後者は、昨年の試験で簿記論や財務諸表論に合格した方が、税法に関する科目を受験し不合格となっている確率が高かったという可能性です。税法科目の合格率は総合的に大きな変化はないとはいえ、官報合格者数が微減であったことを踏まえると、2~3科目めの合格を目指そうとしていた方の合格率が低かったと予測できます。
学歴別にみると高卒・旧中卒や大学在学中の受験者は、昨年に引き続き増加しています。
また、年齢別にみても25歳以下の受験者が7,781人と昨年の7,023人から758人の増加となっており、若い世代の受験者数が増えていることが分かります。
今後は高齢化が進む税理士業界で科目合格者も含め若手の合格者は今後ますます貴重な存在になってきておりますが、若手税理士の台頭も近い将来みられるかもしれません。ただし、昨年よりは増加の幅は小さくなっているため、数年後には高止まりする可能性もあります。
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受験者への発表方法は、以下の通りです。もし通知書が届かない人は2023年12月9日(月)から2023年12月23日(月)に自身で照会できるようになります。
なお今回の試験から、税理士試験の発表から官報合格の方法が変更となり、氏名が公表されなくなりました。個人情報保護などの観点でこのような変更がなされたと推察されます。
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税理士試験は1年に1回行われていますので、次回の試験は令和7年度(第 75 回)税理士試験となります。次回の試験を受験される方は日程をチェックしておきましょう。
出典:令和7年度(第75回)税理士試験実施スケジュール(予定)│国税庁
「税理士試験を今回初めて受験して見事2科目に合格した」「あと1科目合格に手が届かなかった」など、税理士試験の受験生のなかには色々なステージが混在しています。
また、社会人で働きながら受験勉強の時間を確保されてきた方、専業主婦で家事・育児との両立をしながら受験勉強を進めてきた方など、各受験生が置かれた状況は本当に様々です。
ただ、いずれの段階にも共通して重要なのが、税理士受験生にとって「合格を目指すための勉強時間を確保する」という点かと思います。
たとえば、次のような選択肢があるので、ご自身の状況に適したキャリア選択が求められます。
「今の仕事を辞められない」「勉強時間を集中的に確保したい」という場合には、資格スクールで効率的なカリキュラムをこなす、もしくは完全独学に切り替えるなどが考えられます。
また「仕事でも税務に触れながら税理士試験に挑戦したい」という場合には、会計事務所や税理士法人に転職するのがおすすめです。
特に、すでに3~4科目に合格している受験生の場合には、官報合格後のキャリアや実務経験について具体的に考える時期に差し掛かっています。個人から中堅の会計事務所はもちろん、BIG4などの大手税理士法人でも、科目合格者向けの求人を積極的に出しています。
会計・経理業界は人材不足の業界です。できるだけキャリアの浅い段階から優秀な人材を確保するために、各社・各事務所が「試験休暇制度」「専門学校の学費補助制度」「残業の免除制度」「勤務時間の臨機応変な対応可」などの税理士試験受験生に向けたサポート体制を充実させています。
「会計・経理業界で働きながら税理士試験最終合格を目指したい」という方は、応募条件などを細かくチェックして、気になる会計事務所・税理士法人に応募をしてみてはいかがでしょうか。
2024年(令和6年度)第74回税理士試験を受験された皆様、本当にお疲れ様でした。
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