株式公開支援業務というと、なんだかかっこいい響きですよね。会計系の仕事において根強い人気の業種となっています。
また、この業務ができる人材は重宝されています。しかし、株式公開支援というのは、具体的にどのようなことを行うのでしょうか。
今回は、株式公開支援業務について解説します。
株式公開というのは、企業の株式を広く一般に売買させることを言います。反対に、株式を公開していない会社は非公開会社といって、町に存在するほとんどの企業がこれにあたります。
株式公開を単純に言うと、「上場」ということになります。株式は東京証券取引所をはじめ、様々な取引所で取引されています。この取引されている会社のことを上場企業や、公開会社と呼びます。
また、今まで非上場会社であった会社が、証券会社や証券取引所の審査を経て上場会社になることを株式公開と言います。
では、この株式公開支援ではどのような業務を行うのでしょうか。まずは経理サイドとしての株式公開支援業務を解説します。
通常、株式公開するためには証券会社と証券取引所の審査を受けなければなりませんが、これ以外にも監査法人による監査証明をもらわなければなりません。この監査証明は2年分連続で必要ですが、最初の期の期首から合っていなければなりませんので実質3年分の証明が必要です。
この監査証明を発行してもらうには上場会社としての経理が行われている決算書が作成されていなければなりません。上場会社としての経理は非上場会社とはかなり異なっており、色々な引当金や減損会計、資産除去債務等多岐にわたります。
そこで、1から10までできる経理人員が必要となりますが、急にそのような人材を連れて来られませんし、内部でもそのような人材がいないことが多いです。
そこで、株式公開支援業務として外部のアドバイザーを連れてくることがあるのです。このアドバイザーには公認会計士や株式公開経験者が抜擢されます。アドバイザーと言っても1から教えなければならない分野については代わりに作成してあげて、次から自分で埋めていけるように指導することが一般的です。
次に、証券会社も株式公開支援を行います。具体的には、主幹事証券と言って上場まで責任をもって会社の上場を導く証券会社が本業務を行います。
証券会社には、引受部門というコンサルティング部門と、審査部門と呼ばれる上場の審査を行う部門に分かれます。この株式公開支援業務は引受部門が担います。
引受部門では、会社が上場するのに足りない規定類の作成支援や、上場に必要な労務管理のアドバイス、月次単位での予算実績分析等を行います。ただ、引受部門が全て作成してしまっては上場の意味がない為会社に色々な宿題を出して添削し、次の宿題を出していくというスタンスを取ります。
会社のマンパワーではそれができないと判断した場合は、先ほどのような経理スペシャリストを紹介することで形を作っていきます。
このように、株式公開支援業務は会計に関することと証券取引所の審査に関するアドバイスに分けられます。
それ以外の専門家としての株式公開業務としては、労務コンサルティングが挙げられます。昨今では働き方改革等従業員に過度な残業をさせないようにしており、違法労働に対しては厳しい処分が下されます。上場の際にも未払残業等がある場合はまず間違いなく株式公開は無理です。よって、現実的で即効性のある労務コンサルティングを受ける会社が急増しています。
また、法務関係の支援も重要な業務の一つとなります。上場会社に最も求められるのはコンプライアンス、つまり法令遵守です。
会社が違法行為をしていないことはもちろんのこと、違法行為ができない仕組みや、してしまった場合に即座に判明する仕組みが必要となります。特に反社会勢力と付き合いがあったり付き合いができそうな会社と認定されてしまったりすると即座に上場は遠のきます。
経理の面に戻して、株式公開支援では何が求められるでしょうか。
まず、株式公開すると決算日後45日以内に決算短信を作成し、60日以内に有価証券報告書を提出する義務があります。よって、これらの開示書類を適時に作成できるスキルが求められます。長い文章等は他社事例を参考にしていればなんとかなりますが、上場会社特有の財務諸表の作成は全く経験がないと難しいと言えます。
しかし、長年会計事務所に働いていて会計自体の素養は問題ない場合は、監査法人と話し合いながら自身で勉強すれば身についていきますので、できないからと言って諦める必要はありません。
次に、連結決算はあると有利でしょう。子会社があれば連結財務諸表を作成しなければなりませんが、連結決算のスキルを持つ人材はそれほど多いわけではないので、とても重宝されると言えます。
さらに、申告書作成のスキルがあった方が望ましいです。中小企業では申告書の作成は外部の税理士が行うことが多いですが、上場会社では決算のスピードが求められるため外注に出している時間ももったいないのです。よって、内部で申告書のドラフトまでは作成できる人材が求められると言えます。